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最後の一頁
この物語から、多くの時が流れた。
私がこの話を書き残そうと思ったのは、 一人の男を見送った日がきっかけだった。
その最期は、戦場を駆けた人間とは思えぬほど静かだったと聞く。
弔いの日。
夫を見送ったコウと、その娘の姿を見ているうちに、ふと、あの日々を思い出した。
不思議なものだ。
とっくに終わった話のはずなのに、あの日だけは、まだどこかで続いているような気がした。
それから考えた。
語れる者がいるうちに、
残せるものは残しておかなければならない、と。
この話は、私が見たものだけではない。
小郡に残った者。
岩倉を生きた者。
旅を共にした者。
それぞれが胸に抱え続けた記憶を、少しずつ繋ぎ合わせたものだ。
とりわけ一人だけ、あの日々を誰よりも鮮明に覚えていた者がいる。
私は、その者の話を何度も聞いた。
忘れぬように。
忘れさせぬように。
もし、この物語が誰かの心に残るなら、
それは私の筆ではなく、あいつらが生きた証のおかげだ。
……さて、煙管の火も尽きた。
また、どこかで。




