四十八話 結婚式はあまい薫りで満たされる
モヤが消えて、しばらくすると、カレンさんが目を覚ました。
「わたくし、また魔王に乗り移られていたの?」
ディール様は、青ざめた表情で震えつづけるカレンさんをやさしく抱きしめた。
「ああ。でもきっともう、きみの体の中にも、こころの中にも彼はいないはずだよ。だって、ノゾミのおかげで、挙式前にあちこち汚したり、破壊したりせずにすんだのだから」
ああ。
あたしのお菓子が、人の役に立つなんて。
これって、すごいことだよ。
あたしがずっとあこがれていたことなんだ。
お菓子で誰かを笑顔にしたいって。
それが目標だったの。
だから、やっと夢がかなった。
こんなにすごいことってない。
それからあらためて衣装を正したり、お化粧や髪を整え直した。
うん、みんな素敵。
鏡の中のあたしも、なぜだかとっても綺麗に見える。
「ノゾミ、その。綺麗だぞ。あんたが作るお菓子のどれよりも魅力的だ」
「ゾーイったら。今そんなこと言われたら、泣いちゃうよ?」
だってもう、涙が出ているもの。
あまいお菓子やしょっぱいお煎餅なんかもいいけど。
現実を味付けできるのは、自分だけ。
そして、周りの誰かと協力できたら、今日がもっと素敵になって、明日へとつながってゆく。
それってなによりも素敵すぎるよ。
ゾーイ、あなたはいつも、あたしに特別な言葉をくれる。だから、好き。
ほかの誰よりも、たくさんたくさんゾーイが好き。
カレンさんにだって、負けるもんですか。
だから、ね。
こんなに素敵なお式を挙げてもらえて。
スライムさんたちは全員がやっぱり金髪族さんだった。
あんなにかわいらしかったスラたんや、チビたんたちが、あてがわれた服で着飾って、あたしたちを祝福してくれる。
予想どうり、スラたんは、金髪族のお姫様だったんだって。
だけど、それ以外の記憶がないのだって。
だからしばらくこの国でリハビリがてら、水の浄化を手伝ってくれることになった。
綺麗な水に戻れば、きっとまた、みんなの笑顔を見られる日も近いよね?
だから、あたしはこれからもお菓子を作るよ。
たくさんの人たちの拍手を受けて、誓いの口づけをかわす。
そして、みんなで協力して作ったウェディングのケーキにナイフを通した。
そのケーキは、みんなに配られる。
みんな、今は笑顔だ。
おいしいものを食べると笑顔になるように。
大好きな人といっしょだと、もやもやすることもあるけど、笑顔になれるように。
あたしはこれからもずっと、お菓子を作りつづけることを、ここに誓います。
つづく




