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二十二話 水、その流れと穢れ

 そもそも、魔王城の水は潤沢に使うことが許されている。


 でも、あたしがひとりで暮らしていた時は違った。


 当時はまだ井戸水が原因となる疫病があるなんて知らなかった私は、井戸水を急に使用禁止にされたことが悔しくてたまらなかった。


 役場や駅や病院や商店に行けば、無料で水をくれたけど、その水が浄化された安全な水だということを知らずにいた。


 それは、この魔王城の中でも限られた人にのみおしえられていた真実だった。


 もし、もっと早く疫病のことを知っていたらどうなっていただろうか?


 現在の魔王であるギュルディーノ様に対する暴動が起こるかもしれない。


 三度三度重い水を運べない人たちは、空間魔法を使うこともできないから、ひそかに井戸水を使っていたりもする。


 また、水道水が浄化されているとしても、その水道水すら枯れることがあるのだから、たまらない。


 この宇宙に生きるかぎり、水はとても大切なもの。


 かぎりある資源、そんな感じだろうか。


 それで、どうして今回はこんなにシリアスなのかと言うと、ドリンクバーの案はあっさり却下されたからだ。


 ゾーイはとても残念そうだったけれど、そこまで贅沢をして水を使えないという、ギュルディーノ様の意見だった。


 そこではじめて、水の大切さに気づけたし、ドリンクバーのアイデアをほかの人たちに話していたら、ぬか喜びをさせてしまったかもしれない、なんて思うとギュルディーノ様の早めの決断がありがたくもあった。


 お菓子もまたおなじこと。


 大切な水を使わせてもらっている以上、気を引きしめて作らなければならない。


 また、ばあやさんもドリンクバーなんて味気ないのではないかしら? なんてこぼしていたから、やっぱりお茶はきちんとこころを込めて淹れないといけないことにあらためて気づかされたのだった。


 あたしは、あたえられた部屋でひとり、水について考える。


 今日はお菓子づくりはやすんでもいいとのお達しが出たからだ。


 あげ餅が思いのほか胃もたれを引き起こしてしまったからだ。


 しかも、そう毎日あまいお菓子を食べていたのでは、やはり衛兵たちの体がなまるとのディール様の提案もあった。


 そしてまた、あたしはギュルディーノ様の奥様であるヒトミ様について想いを馳せる。


 ヒトミ様は、どんな思いで井戸水を使いつづけたのだろうか、と。


 疫病のことも知ってなお、その水を飲んでいた。


 国民の不安をやわらげるためだけに。


 疫病のことをもっと(おおやけ)にしていたら、その水を飲まずにすんだかもしれないのに。


 ヒトミ様は、ひと口メロンパンを食べた直後に息を引き取りそうになった。そして、凍結された。


 その時、ギュルディーノ様は国外の井戸水について調査をしていたため、凍結の儀式に間にあわなかったと聞いた。


 ならばどうすれば、水を綺麗な状態に戻せるのだろう?


 ちなみに、国外の水も少しずつ汚染が広がりはじめてきたという。


 このまま、安全に暮らせる水がなくなっていったら。


 それこそ、ギュルディーノ様の責任が問われることになるかもしれない。


 前魔王の魔法であるのならば、それは避けられないだろう。


 つづく




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