表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/52

九話 虹色のアメ玉

 そして魔王城でお菓子がかりとして住む準備ができたのは、ディール様に誘われてから四日後のことだった。


 古民家はゾーイのお家のものだから、なるべくなにも残さないように掃除もすませた。


 姉さんもあたしを気にして手伝ってくれたし、家族の中では一番の理解者なんだ。


「オレさぁ、ついに噂のギュルディーノ魔王様にお会いしたんだ」


 あたしと自分の荷物をお城へと運ぶために、城と実家を行き来していたゾーイが、車を運転しながら真剣な顔をして言った。


 その瞬間、あたしの心臓がとくりとはねた。


 ギュルディーノ様も、奥様を凍結されたことをあたしのせいにするのかしら?


 そう思うと、こころがズキズキと痛くなってくる。


 だけど。それなら三年間も毎日のようにあたしのお菓子をディール様が買いに来てくれるはずはないし。


「まぁ~た難しいことを考えてるだろ? ノゾミはウソがつけないんだから、そんな顔してないで笑ってろ」

「うん。……あのね、ゾーイ。奥様は、あたしのお菓子を食べてすぐにお亡くなりになったんでしょう? だとしたら、やっぱりあたしのせい――」


 ゴン! と強い衝撃が頭に響いた。


 運転中のゾーイが、片手であたしの頭をグウで殴ったのだ。


「バカもやすみやすみ言え。なんでもかんでも自分のせいにするな。奥様は奥様。爺ちゃんのことは爺ちゃん。全部自分で背負い込むなよ」


 あ。


 ぽろぽろと頬を涙が伝う。


 そうか、あたし、ゾーイに否定して欲しかったんだ。


 ずるいな。


「それに、ノゾミのことを恨んでいるのならば、魔王城に来いなんて言わないだろ?」

「……うん」


 まったく、いつまでたってもガキだな、ノゾミは。なんてほほ笑んで。


 だからあたしも覚悟を決め直して。自分で刺繍したハンカチでそっと涙をぬぐった。


「だからなるべく笑ってろ。そうすりゃ、どうしてディール様がノゾミを城に住ませてまで菓子がかりにしたのか、その秘密がわかるさ」


 おいしいものは、こころを溶かす。


 あまいお菓子もまたしかり。


 ポシェットから特製のアメ玉の入った袋を取り出した。


「おっ、久しぶりだな。ノゾミが作った虹色のアメ玉。オレにも一つくれよ?」

「もちろんだよ。はい」


 そうしてなにげにゾーイの口の中にアメ玉を放り込んで。


 だけど、その瞬間にバランスを崩したから、ゾーイの唇にあたしの手がふれてしまったんだ。


「あ、ごめんっ!!」

「オレのことより。ノゾミは大丈夫か?」


 すぐに車を路肩に停めてくれた。


 ……おヒゲなんて、いつから生やしていたんだっけ?


「大丈夫。平気。だから、早く行こう?」

「おう。なら、ゆっくり行くか」


 車を走らせる前に、ゾーイの唇にふれた指で、アメ玉を一つ、自分の口に入れた。


 カラコロカラコロと口の中でアメ玉を転がすゾーイは、相変わらずで。


 まんべんなく、アメ玉を堪能してくれているのがわかるから、うれしい。


「これはあくまで想像でしかないけど」


 あ、そう言えば、魔王様のことをなにか言っていたな。


「魔王様、すっごく近寄りがたい雰囲気だったんだ。あれ、きっと長いこと笑ってないぞ。だから、ディール様はノゾミの菓子で、魔王様を笑顔にさせたいんじゃないかなって思ったんだ」


 なるほど。そういうことなら。


 頑張らなくちゃ!!


 つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ