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寿さんの雑記帳  作者: 寿
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異世界のタバコ商人と出会って、無職の身でも一攫千金を果たそう!10

どこか白けたような、祭りの後のような雰囲気のふきだまり町。

おそらく昨夜はみんな盛り上がって、飲めや歌えの大騒ぎだったのだろう。

朝が来てしまえば、そんな騒ぎもどこへやら。


燃えカスのような景色が残っているだけ。

だからこそ、シャルローネを連れ出す気になったのだ。

シャルローネはいつもの肩掛けがま口鞄を提げて、俺の後をついてきた。


「並んで歩こう、はぐれるといけないから」


「そうですね、ケースケさん」


シャルローネと並ぶと、彼女の方が背が高い。

ちょっとしたモデル体型というべきか、あるいはガチ・モデル体型なのか?

そんな彼女が、俺のブルゾンの袖をつまんで、少し不安そうにしているのが何とも可愛らしい。


だけどコンビニなんてのは、ちょっと歩くといくらでもある。

デート気分の二人歩きも、すぐに終わってしまった。

コンビニに入ると朝早い労働者たちが、朝食を買うためにレジに並んでいた。

シャルローネの美貌は、彼らの視線を集める。


「ってシャルローネ、ここではブーツを脱がなくていいから!」


「え、そうなんですか? 私としたことが……」


改めてブーツを履き直し、なにごとも無かったかのように振る舞うシャルローネ。

その手を引いて、調味料コーナーへ向かう。

目的の塩は、たんまりと積まれていた。


「あ、あの……ケースケさん?」


「ん? あ、ごめん……」


慌てて手を離す。

シャルローネは恥ずかしそうにうつ向いてしまった。

もしかして、手を握るという行為に深い意味合いがあったりするのだろうか?


それとも「未経験」であるが故に、恥ずかしがっているだけなのか?

こちらの世界の住人である俺には判断がつかない。

とりあえず買い物かごに五袋。


つまり五キロの塩を入れてレジへ。

代金を支払ってデイパックに詰め込む。

なかなかこう、肩にグッと食い込んでくる重さである。


「あの、ケースケさん? 重たくありませんか?」


「なんのなんの、これくらい」


「いえ、私の鞄は重さを感じないアイテムボックスになってますから。どうぞこちらへ入れてください」


ありゃま、そうなの?

それじゃあ遠慮なく。

って、デイパックがニュルリと吸い込まれた。


実際にアイテムボックスというものを目にすると、なかなか気色悪いものである。

だがシャルローネは馴れているのか、まったく意に介していない様子。

ニッコリ微笑んで、「さあ、あと五キロです♪」と言った。


早朝ということで、スーパーマーケットはまだ開いていない。

ことも無い。

最近では二十四時間営業のスーパーマーケットもあるのだ。

夜の街、ふきだまり町であるからして、そういった店も存在する。

ただ、少し歩かなければならないだけだ。


二人で買い物というと、なにやら恋人気分というか若い夫婦のようで、なんとなくそこは避けてあげたい気持ちであった。

シャルローネにだって好きな男はいるだろうし、経験はしていないものの歴としたカレシがいるかもしれない。

こんなところで俺のような奴と歩いている場合ではないかもしれないのだ。


そうなれば紳士ジェントルマンとしては、あまり二人歩きに付き合わせてはいけないだろう。

無心、無心……。

ときおり吹く悪戯な風が、彼女の香りを運んでくるが、それでも無心であれ、俺!

例えスーパーマーケットで買い物をする姿が、綺麗な幼さ妻のようであっても、それは「俺のモノ」ではないのだぞ!


だが、時折目と目が合って、クスリと微笑むシャルローネを見ると、是が非でも彼女を欲しいと感じてしまう。

シャルローネは俺のこと、どう思っているんだろうか?

そんなことわかりきっているのに、やはり考えてしまう。


そうこうしてシャルローネに見とれていたら、いつの間にか買い物は終わっていた。

とくにイベントらしいイベントも無く、帰路につく。

なんとなくションボリした帰り道。


「そういえばシャルローネ、キミの世界では砂糖は豊富なの?」


「いいえ、やはりお砂糖も貴重品でして、そのうちまた御迷惑をおかけするかもしれません」


「だったらちょっと時間、いいかな?」


「はい……?」


目についたコンビニに飛び込んで、ソフトクリームを二つ買う。

スタンダードなバニラ味だ。

店から出て、一つをシャルローネに渡す。


「ケースケさん、これは……?」


「ソフトクリームという食べ物さ。冷たくて甘いんだ。こうして蓋をとって……」


シャルローネも見よう見まねで蓋をとる。

そして俺はひと口ペロリ。

シャルローネも真似して、小さな舌でペロリ。


そのまぶたが、パカッと開いた。

おそらく感動しているのだろう。

プルプルと震えている。


そして万感の思いを込めて、「美味しいです!」と瞳の中にキラキラと星を輝かせていた。


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