勇者パーティー追放ものを書いてみた
「悪いけれどオジサン、僕たちの方針に従えないなら、パーティーを出ていってくれないか!」
勇者が言った。そしてパーティーメンバーの中に、彼の言葉を咎める者はいなかった。
『魔王のダンジョンに挑むのは、まだ時期尚早ですよ』
俺がそう意見した、そのときの出来事だ。
戦士の若者を見た。
「オレたち若いパーティーに、オッサンが混ざっているってのもおかしいもんなぁ」
彼は嘲笑うように言った。魔法使いの若者に目をやる。
「私たちのパーティーは、戦闘に参加できない人を養う余裕は無いんです」
その表情は残酷なまでに冷たい。美少女の戦士の意見も聞く。
「湯上がりにマッサージしてくれるのはいいんだけどさ、触り方がこう……いやらしいんだよねぇ」
しまいには痴漢扱いかよ?
俺を止める者は、誰もいなかった。そして勇者の若者は言う。
「オジサン、おかげで僕たちもここまで成長できました。そろそろオジサンから卒業させてください」
急にしおらしいことを言い出したが、ことの発端はコイツの一言からだ。どうせ魔王退治の報酬を山分けするのに、俺の取り分が惜しくなっただけだろう。
「いや、いいよ。気にしないでくれ。そろそろ若い人たちについていくのがしんどくなってたんだ」
俺は担ごうとしていた彼らの荷物をおろした。
俺の職業は荷物運び。勇者候補の御一行が楽に旅できるよう、荷物をかついでやる役だ。
しかし、魔法の小道具が欲しければ素早く取り出し、突然の奇襲にも慌てることなく防具を用意してやったのだ。その俺を、しかも「魔王への挑戦はまだ早い」と見切れる俺をパーティーから追放してくれるのだ。片腹痛いとはこのことだ。
「それじゃあな、悪いけどこの鉄鍋は俺の私物だ。持って行かせてもらうよ」
そう言い残して、俺は鉄鍋ひとつ担いでパーティーに別れを告げた。
背中に感じる喜びの気配。若い戦士くんなどは、「もっと早くにこうするんだったよな」などと言ってくれる。
俺はギルドへ足を運んだ。新たなパーティーを求め、荷物運びの仕事を得るためだ。
幸いにして、新しいパーティーはすぐに見つかった。
それから三ヶ月。新しいパーティーメンバーたちはオッサンの俺にも軽口をきくようになっていた。それだけお互いに馴染み、仲間意識が芽生えた証拠である。そして俺もそれを許していた。
「そういえばさ、オジサン」
リーダーの勇者候補が話しかけてくる。
「オジサンの居たあのパーティーさ」
もう、遠い昔のような話で聞いていた。
「魔王に挑戦して全滅したらしいですよ」
「へぇ、そりゃあ俺たちも気をつけないとね」
「でもオジサンとしてはラッキーですね。あのままあのパーティーにいたら、今ごろ教会のお世話になってましたよ」
「俺も忠告はしたんだけどな、彼らに……」
「……悲しくないんですか?」
「全然、今の俺にとっては君たちが仲間だからね」
「見捨てないで下さいね、僕たちのこと……」
「こんなしなびたオッサンの忠告でも、無下にしなければね」
俺は警告しておく。
仲間を捨てないことが、死なないことへの第一歩だと。
そしてしたたかに生き抜いてきた者の忠告はよく聞くこと。
最後に、慢心は死を招くと。
勇者候補は清々しく「ハイ」と返事した。すでに死んでしまった勇者の若い頃のように。
主人公が最初から不幸というのはやりにくいですね




