第二十話『ライゾウのこと』
ライゾウ視点
サクラ姉ちゃんも麻実也兄ちゃんも心配性だ。
なんだかオイラたち、爺とかなんとかいう激戦区送りになるらしいけど、飛行機でもなんでも、オイラにまかせておけばいいのに。
オイラ、惑星アルファ出身じゃない。
麻実也兄ちゃんと同じく、潜水艦桜姫に「艦長になってください」って頼まれた口だ。
オイラ生まれは猟師の家。
オイラの生まれた星じゃあ猟師ってのは、あんまり尊敬されない仕事だった。
生き物を殺す。
肉をさばくのが臭くて汚い。
山の中は危険。
そんな理由で猟師はなり手が少ない。っつーかいない。
だから息子のオイラは父ちゃんにくっついて、猟師の仕事をしていた。
オイラにとっちゃなんてことなかったんだけど、飛ぶ鳥を弓矢で落とすのはすごいことらしかった。
父ちゃんはすっげぇ喜んでくれたけど、所詮は猟師。
寒いところに住まわされて、友だちもいなけりゃ嫁さんももらえない。
誰もイイ仕事だなんて言ってくれない。
そんなオイラだから欲望がすごいらしい。
潜水艦桜姫は、人間の欲望を大砲のエネルギーに換えるっていう。
ぜひともそのエネルギーをってたのまれて。
野郎がお願いに来たんだったら、オイラ追い返してたさ。
だけど桜姫がすっげぇ可愛いお姉ちゃんだったから……。
父ちゃんに相談したら、渋い顔してた。
それで、「お前の好きにしろ」って。
まあ、そんなことだから、オイラにとって飛行機なんか怖くもなんともない。
もう少し桜姫の主砲を自由に扱えたら、どんだけ飛行機が飛んで来ても全部落とす自信はある。
だってそうだろ? 鳥は散り散りに逃げていくけど、飛行機は必ずこっちへ飛んでくるんだ。
しかも律儀に三機で一編隊。
お互いにぶつからないように、一編隊かニ編隊ずつ。
あんなもん屁だよ、屁。
そのためにも、桜姫にちょっとおねだりだ。
「なーー桜姫ーー。オイラにもう少しだけ、自由に主砲扱わせてよ」
「う、そ、それは……できないことはありませんが……少し恥ずかしいです」
なにそれ? どゆこと?
「えぇとですねぇライゾウ艦長。そのためにはライゾウ艦長と桜姫が同調する必要がありまして……」
発令所にあるカプセルベッドを示す。
「ライゾウ艦長には、こちらのカプセルに入っていただくことになるんです」
あるんじゃないか、方法が。
「それは船にとっては……女の子にとっては、始めてのキャア♡ をするのと同じでして……」
あ、それはオイラも照れくさい。
「一生ライゾウ艦長の女の子としてお仕えすることを意味します……」
「オイラがもう少し大人になってからにしようかな?」
「それがよろしいかと……御要望ほどではありませんが、桜姫がライゾウ艦長の思う通りに動けるだけの手段は、他にもありますし」
あ、あるんだ。
ドキドキ初体験以外の方法が。
すると桜姫、箱みたいなゴーグルと管みたいのを持ち出して。
「どうぞごゆるりと艦長席におかけください」
腰かけたオイラに正面からゴーグルをかけてくれて、女の子の甘い匂いにうっとりしてたら、なんか柔らかいものがポヨヨンって身体に当たってるし。
それからウインナーくらいの太さの管をくわえさせられて、「御気分はいかがですか?」なんて訊かれるけど。
「モガモガ」
としか答えられない。
ゴーグルの中には宇宙空間が広がっていて、これが桜姫の見ている風景なんだなって、すぐにわかった。
あぁ、初体験とは違うけど、いまオイラは桜姫と同調してるんだなってのがわかる。
頭の中で考えると、主砲が動いた。
おそらく船体操作もバッチリだろう。
いいね、これ。
頭の中で考えると、桜姫の声で「お気に召しましたか?」と聞こえてくる。
その声のおかげで、さっきの柔らかいものが当たった感触を思い出す。
「もう、ライゾウ艦長のえっち……」
「い、いや、オイラそんなつもりは……ゴメン」
「……うふふ、ライゾウ艦長でしたら許してあげます♡」
あ、なんかいいなぁ。こういうの。
なんだか桜姫と一生一緒ってのも、悪くないかも。
「……そう思ってくださるのでしたら……桜姫はいつでも、ライゾウ艦長をお迎えしますよ♡」
まあ、もう少しだけ待っててな、桜姫。
で、朝の八時。
惑星Gへ向けて出港だ。
整備はバッチリ、補給もピシャリ。
どんな艦隊が相手でも、きっと目にモノ見せてやるぜ!
早速その旨、潜水艦乙姫の麻実也兄ちゃんに宣言だ!
「なー麻実也兄ちゃん」
「どうした、ライゾウ?」
「敵の輸送艦隊って、空母に護衛されてんだよな?」
「たぶんね」
相変わらず麻実也兄ちゃん、声が渋い。
「だったらさー、飛行機は全部オイラが面倒見ようか?」
「いや、決めつけは良くないぞ、ライゾウ」
麻実也兄ちゃん、真面目だなー。
「最初からキメ打ちしてると柔軟な判断ができなくなる。敵をレーダーでみつけても、しばらく暇なんだから作戦はそのとき立てよう」
そりゃま、そうだけどさ。
「だけど、ありがとうな、ライゾウ。本当なら過酷な仕事は司令官が率先して取り組まないとならないのにな……頼もしいぞ、ライゾウ」
なんだい、くすぐったくなるようなこと言うなよ。
飛行機なんて本当に、オイラにかかればヘッポコピーなんだからさ。
つーか、もう少し頼ったりアテにしてもらいてーなー。
相棒なんだからさ。
「なー桜姫、オイラそんなに頼りない相棒なのかな?」
「桜姫にとっては頼もしい艦長ですけど、麻実也少尉は二隻の運命を背負ってますから。重責に苦しんでいるだけだと思いますよ?」
「その重責を軽くしてやるのが、相棒ってもんだろ?」
「麻実也艦長も願うところは大であるが故に、お姉さまの艦長をされてるのです。その願うところというのが、艦隊の責任につながっていると桜姫は考えております」
「じゃあオイラがイイ仕事すればちょっとは兄ちゃんも信頼してくれるかな?」
「それはもう! 誰がなんと言おうと、ライゾウ艦長が最高のバディとなるでしょう!」
「よし、がんばるゾー! 桜姫とも少しだけ同調できてるしな!」
「……それは、恥ずかしいので言わないでください」
宇宙空間の波また波を乗り越えて、激戦区海域へようやく到着。
「桜姫、敵はどこだい?」
「まだお見えになってませんね」
「だったら先に、G惑星に駐屯する敵に、ちょっかいかけてみようよ」
「麻実也司令官に打診しておきますね」
少し待って、潜水艦乙姫から返信。
「よし、やっちまうか、ライゾウ!」
「どっからやる?」
と、すぐさま返信。
「目の前に飛行場があるな」
惑星Gの飛行場だ。すぐさま主砲五門を向けた。
「やっちゃうぜ、麻実也兄ちゃん!」
返信したときには、もう撃っていた。
「ばか、早すぎだライゾウ!」
そう言いながら、乙姫の主砲も火を吹いている。
オイラの撃った弾は飛行機を火だるまに。乙姫の撃った弾はレーダーや通信施設をブッ壊していた。
そうなったらもう、イケイケドンドンだ!
惑星Gの飛行場全体が燃え上がっていた。
すると乙姫は狙いを変えた。
別の場所にある通信施設を発見したらしい。
「桜姫、他に通信施設やレーダー施設はあるかい?」
「ただいま検索中です!」
見つけ次第ブッ壊してやらなきゃな。
仲間の陸軍を相当に痛めつけてくれている連中だ。
絶対にひと泡吹かせてやる。




