表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゆるふわ怪奇譚  作者: 灰猫と雲
8/31

其の八『心霊スポットの滝』

全てのホラーが怖いと思うなよっ!

神八代祝人は排尿していた。

彼は最近心霊スポットを1人で探索するのがマイブームだった。そして今夜選んだ場所はとある滝だった。

自宅から車で約1時間、そこは有名な心霊スポットで、夏場になると発行する心霊地図のようなものでも必ず掲載されている。その地図に書かれたものを頼りに車を走らせていたのだが軽く迷子になり1時間ほどさまよった。その頃には彼の膀胱はパンパンで、駐車場横にあるトイレに駆け込み、すんでのところでことなきを得た。ただ、滝よりも何よりもこのトイレの方が目撃情報の多いのを彼は知っていた。

バタン、と愛車のドアを閉めスマートフォンを取り出す。いつものページに飛び素早い指さばきで記事を書き始めた。

>

>

>

『心霊スポットの滝』

自殺で有名?な滝に来た。しかし少し迷ってしまいその間オシッコがしたくて漏らしそうになったが、大人なのでその辺で…というわけにもいかず山道を迷うこと1時間、ようやく目的の滝に到着し一目散に駐車場横にあるトイレへ駆け込んだ。

名誉のために書いておくけれど、おしっこだ。

うんこの方ではない。


さて、この滝の目撃情報で多いのは滝ではなくそのトイレだ。

ここの個室の方、いわゆるうんこする方で何年も前に焼身自殺を図った人がいた。以来このトイレに入ると男の霊が見える、といった話が広まった。

トイレの個室は2つあるものの奥の1つは大きなベニヤ板が打ち付けられていて入ることはできなくなっている。壁の一部が焦げているとかそういった様子はない。

俺はパンパンの膀胱を小さい方専用の場所で解放していると、そのベニヤ板が打ち付けられている方から声がするのに気づいた。

「あ…い。…れ…か…た」

その声はしゃがれていて小さくとても聞き取りづらかった。それでもその声は何度も何度も同じセリフを繰り返し言っているようだった。

全神経を耳に集中し、彼の言葉を拾い集める。



そして今車内に戻りこれを書いている。

人が自らの命を絶つというのはある意味尋常ではない精神症状だ、

異常と言って構わないだろう。けれど飛び降りと違って焼身自殺は火を放ってからしばらくは苦痛な時間を過ごさなければならない。脳内では時間がゆっくりと流れ、長い間熱さと痛みに耐えなければ死ぬことは出来ない。

だからなのだろうか?

彼の言葉は常軌を逸した内容ではなく、普通の、俺らと同じような思考を持った人間のそれだった。



「熱い。熱い。やめればよかった」

>

>

>

火をつける前にわかれよな、と神八代祝人は思う。

どんな理由があるにせよ、自分で自分を殺すなんて…と思う。

ただ神八代祝人は少しだけ同情した。死にたくなる気持ちは少しだけ彼にも理解できる。神八代祝人と焼身自殺をした男との違いは、したか・しなかったかだ。そこはちょっとした違いであり、また大きな違いでもある。

中心からたった2°しか違わない直線があるとする。

中心から5mm先ではあまり大きな違いはないだろう。

しかし1m、10m、100mと離れていくうちに両者の差は歴然である。

実際は死んだ者の直線はそれ以上進まない。

生きている者のみが不恰好でも線を引き続ける。

神八代祝人は思う。

不恰好でも生きてたらそれなりの人生にはなるのだと。

その後階段を降りて滝の方に行きました。懐中電灯も持ってないので真っ暗な中1人で行ったのですが、帰ろうとしたらいくつかの懐中電灯の光が見え階段の方から男性と女性の声が聞こえて来ました。懐中電灯の光が俺の顔を照らすと同時に

「ぎゃー!」

という悲鳴をあげたので、慌てて「違う違う」と彼らを追いかけたのですがそれもまずかったようで1人の女の子がその場にヘタレ込み泣き出してしまいました。

その時の女性が今の嫁です。





嘘です。

女の子の手を引いて駐車場まで行くと、大学生達にめっちゃ怒られました笑。

帰りにみんなで吉牛に行ったのは良い思い出です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ