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ゆるふわ怪奇譚  作者: 灰猫と雲
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其の七『お化けの時代考察』

全てのホラーが怖いと思うなよっ!

神八代祝人は嫌悪していた。

たまたま入ったコーヒーショップでカフェラテを注文し喫煙できる席でゆったりとくつろいでいたところ、後から若い男性が少し離れた席に座った。そしておもむろに林檎のマークが描かれたパソコンを出し電源を入れカタカタとキーボードを叩き出した。

家でやれ。

と彼は思った。神八代祝人はパソコンが得意ではない。ブラインドタッチができない。Wordはなんとか使えるもののExcelは意味がわからなかった。加えてあの林檎マークのノートパソコン。聞くとその値段は高いという。お洒落なお店で高いノートパソコンをこれ見よがしにカタカタカタカタ。

家でやれ。

と再び彼は思った。

しかし彼が嫌悪していたのはその若い男ではなかった。

そのそばに纏わり憑いている女の霊だった。

彼女はとても年季の入った霊だった。

神八代祝人はかろうじて林檎のマークが入ったスマートフォンをカバンから取り出し、ブックマークからマイページに入った。ブラインドタッチは出来ないが彼はフリックが早かった。

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『お化けの時代考察』

幽霊に足がないと言われていたのは日本だけだと記憶している。海外の心霊モノでそのような描写があるのを俺は見たことがない。

日本で幽霊に足がないと言われていたのは大昔の日本画家が幽霊の絵を描くときに足を描かなかったかららしい。それが一般的に「幽霊は足がない」と広まったようである。

けど俺は足のない霊は見たことがない。


数年前、先生と一緒にお化けを見たことがある。

俺は髪の短い若い女だと思った。

先生は髪の長い30代真ん中の女性だと言った。

見える2人が同じ者を見ているのに違う容姿、年代で見えていた。これは単に俺の霊視能力がないからと考えていた。

「それもあるけどこの場合は相手がどう見られたいかっていうのも関係してるかもしれない。ババアで死んだのにジイさんとこには出会った頃の若い姿で出て来るっていうのもよくある話だし、お化け側も容姿には気をつかうんだよ」

と先生は教えてくれた。

なるほど、じゃあ幽霊には足がないと信じていた時代のお化けには足がないかもしれない。頭に弓が刺さって死んだ落ち武者は

「これが俺の死因!」

とアピるために弓が刺さったまま出て来るのかもしれない。自由だな、と思う。


少し話は変わるけど、霊柩車や救急車を見たら親指を隠せという話を聞いたことがある。自分の周りに不幸があるから、という理由だったと思う。これも一応理由があるのだと先生から聞いた。

昔の日本は土葬文化で、死んだ自宅から桶のようなものに遺体を入れ担いで墓地まで向かった。その葬列を見たら親指を隠しなさい、と当時の習わしがあったようだ。なぜ親指なのか?と聞くと

「もし死んだとして誰かに取り憑くとしたらどうする?」

背中におぶさりますと俺は答えた。

「それも今の時代の人間の発想だよ。もしかしたら100年後には携帯電話に取り憑くのが主流になるかもしれない。親指を隠せじゃなく携帯をカバンにしまえ、って言われてるかもしれない」

なんの話だ?と思った。

「昔々の人間は取り憑くためにその人間の中に入るための入り口があると信じられていたんだよ。そこに入るとその人間に取り憑くことができる穴」

それが親指の先と爪の間なのだそうだ。だから親指を隠すのだそうだ。


だからなのだろうか?

今俺の目の前にいる若者に、古い霊が一生懸命親指を舐めている。もちろん若者の指は動く。その度に顔を上下左右動かしてなんとか舐めようとしている。さっきまでは親指を握ろうとしていた。しかし握っても取り憑くことができないから今度は舐めてみようという発想になったようだ。

俺は思うのだ。

取り憑く場所だけじゃなく、その方法まで知らなければなんの意味もない、と。

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神八代祝人はそこで投稿ボタンを押した。

一心不乱に頭を動かし取り付こうとする幽霊を眺めながら飲む甘いコーヒーは格別に美味いと感じた。

スタバとかでパソコンいじってる人って、あれ何してるんですかね?

家でやったほうが落ち着いて出来るんじゃないかっていつも思います、っていうのは歳をとった証拠なのでしょうか?

私は手書き派です。

ノートも持っているけどほとんど使ってません。

アナログ万歳。

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