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ゆるふわ怪奇譚  作者: 灰猫と雲
3/31

其の三「耳食う爺さん」

全てのホラーが怖いなんて思うなよっ!



前のエピソード――其之ニ 「手首」

其之三「耳を食う老人」


神八代 祝人は回想していた。体験した心霊話には困らないが、フレンドからのコメントにお題が書かれていた。

「ほっこりする心霊話」

神八代 祝人が体験したものは大体その性格のせいで大体がほっこりしていた。

どの話にしたものか?

と思い出していると、ふと幼い頃の記憶が蘇った。

よし、これにしよう。タイトルは…これしかないな。

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『耳を食う老人』

俺が幼稚園の頃から我が家の前にはいつも杖をついて立っている爺さんがいた。

母が「ヤクルトをあげといで」って言って俺はよくヤクルトをその爺さんにあげていた。

手渡すとニッコリと笑っていた。

何年も顔を見ていたりするのに今思えば一度も声を聞いた事がない。

もしかしたら喋れない爺さんだったのかもしれない。

そんな爺さんを近所のガキどもは「耳を食う爺さん」と呼んでいた。

子どもの耳を食べていたので精神病院に入院していたんだ、と歳上の男の子が言った。

実際何人かは「耳食うど」と言われたらしい。

だからお前も耳食べられたくなかったら仲良くするな、と歳上の男の子達に言われた。

内容はともかくとして、爺さんの声を聞いた事のあるその子がちょっと羨ましかった。

近所のガキどもは爺さんを見ると「耳食うな!病院帰れ!」と石を投げていた。

ガキどもの中で最年少だった俺は止める事もできず、悲しい気持ちでそれを見ているしかできなかった。

ある日、他のガキがいない時に母から渡されたオロナミンCを爺さんにあげながら、

「耳食べたりしないよね?」

って聞いてみた。

爺さんは何も答えず黙ってニッコリ笑うだけだった。

俺はその時どんな顔をしてたのだろうか?

爺さんはオロナミンCを飲む手を止め、オイラの頭を撫でてくれた。

それが答えだって思って嬉しかった。


俺が小学生のころ、その爺さんがパッタリ姿を現さなくなった。

母に聞くと体調が悪く入院したらしい。

もちろん精神病院なんかではなかった。

姿を見ないまま1年くらいたったある日、学校から帰ってくるといつもの所に爺さんが立っていた。

俺はBダッシュで家に入り母に「爺さん退院したんだね。飲み物あげてくる」と言った。

その時の母の表情は覚えていない。

ヤクルトか何かを貰って玄関を開けるともう爺さんはいなかった。

その日以来、爺さんを見ることは本当になくなった。


数年後、母は教えてくれた。

俺が最後に見たあの日、爺さんは確かに退院していた。

死亡退院だった。

俺が学校から帰って来て爺さんをみる少し前に爺さんの亡骸は家に帰ってきて、爺さんの奥さんが生前お世話になりましたと挨拶に来たそうだ。

「きっと最後にアンタに会いに来たんだね」

と母が言った。

俺の幼少期から小学生低学年までずっと同じ場所から俺を見守ってくれていた爺さん。


1度だけでも声、聞きたかったな。

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目の前にオロナミンCがある。

神八代 祝人は無類のオロナミンC好きだった。

あの爺さんの墓前には今でもオロナミンCが供えられているだろうか?

ヤクルトでもかまわない。

もしも会うことがあれば、またどちらかを渡したいと思う神八代 祝人だった。

私が二十歳の時に母が「実はあの時…」と真相を話してくれました。

あの爺さんは本当に耳が聞こえない人でした。なので喋ることもあまりしなかったそうです。

爺さんの奥さんの方がかなり宗教にのめり込んでしまい、財産をほぼ宗教に持っていかれたという話の方が私にはホラーです。

やっぱり生きてる人間の方が怖い。

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