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ゆるふわ怪奇譚  作者: 灰猫と雲
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其の二「手首」

全てのホラーが怖いなんて思うなよっ!

神八代 祝人は歓喜した。

朝、先日書いた日記をみてみるとフレンドからコメントが付いていた。

嬉しかった。とても嬉しかった。

神八代 祝人は比較的単純な人間だった。

そして早く次の日記を書かなければと思った。幸い心霊話のストックなぞいくらでもある。問題はオチが付いていないものの方が多いのと、それを面白く書ける文才があるかどうかだ。

圧倒的に後者に不安があった。

とりあえず神八代 祝人はパソコンに向かって1番古い心霊体験の記憶を呼び起こした。

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『手首』

我が家にはしきたりがあった。それは幼稚園に通いだしたら自分の部屋で1人きりで寝なければならない事だった。俺はお化けが大嫌いな臆病な子どもだったので毎晩怖くて怖くて仕方なかった。

そんな我が家は近所の中学校に負けず劣らずな幽霊屋敷だった。その家を建てる際に両親が占い師のところで土地をみてもらったときに

「あんたココで人死んでるよ?商売やってんならココに建てない方が良いよ」

と言われたのに構わず家を建てちゃった親父はちょっと頭が足りないと思う。

とにかく我が家はラップ音が酷かった。が、幼稚園児の俺はラップ音など知らないから

「家が壊れていく音だ」

と信じておりビクビクしていた。親子二代で頭が足りないのだった。

そんな家屋倒壊の恐怖もそうだがやはり現実的に1番怖いのはお化けだった。俺はようやく夜中におしっこに行く事を覚え始めていた頃だったのだが、その夜中のトイレがまた怖くて仕方なかった。仕方なく俺は隣の部屋で寝る母親を起こし、一緒にトイレに連れてってもらうことが毎晩の習慣となった。

ある夜、いつものように尿意を催して目が覚めると目の前に青白い手首が浮かんでた。その手首は人差し指を1本だけ立ててフワフワと浮かんでいた。爪の色は俺のようなピンク色ではなく、ブス色…とでもいうか、赤黒い…とでもいうか、とにかく今この仕事をしているからわかることだが、チアノーゼを起こしている爪の色をしていた。

なんで手首が?などは思わなかった。そういうものなのだ、と納得した。俺はまだ幼稚園児で知らないことがたくさんある事を自覚していた賢い子だった。だから俺が知らないだけで世の中には夜に目が覚めたら手首が浮いていることもあるのだろう。

目を背けることなくジッと見つめていると、手首はゆっくりと俺の顔から遠ざかり、指の先をあちらこちらへと向きを変え始めた。

その頃ちょうど時計の見方を教わっており、勉強熱心だった俺は手首の指す方向に合わせて

…3時

…12時

…1時

…4時半

と頭の中で考えていた。


気がつくと朝だった。どうやら気絶してしまったらしい。

あの手首はなんだったのだろう。

不思議と怖いとは思わなかったが、俺にとってはあまり良いものではなかったのは確かだった。

その朝、俺はおねしょをしていた。

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投稿のボタンを押し、ふうっと息を吐く。

気が付くと出社時間を過ぎていた。

手首といい人形といい部屋にいる人といい…あの家は本当におかしかった。

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