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ゆるふわ怪奇譚  作者: 灰猫と雲
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其の一「校庭」

全てのホラーが怖いなんて思うなよっ!

神八代かみやしろ祝人のりとは困惑していた。きっかけは昼休みに職場の同僚とタバコを吸いながら話した内容だった。

「お化けがみえるとか言う人って、イタいっすよね笑」

女性なんかの前でそんなの言おうものなら男連中からは内心バカにされてますよ。女性も実際のところ引いてますしね笑。なのだそうだ。

神八代 祝人には心当たりがあった。ありすぎて穴があったら自分ごと埋めて欲しいと思うほど思い当たる節がありすぎた。動揺を隠すので必死だった。

じんさんお化けみえないんですか?なんか名前も神社系だし名前もノリトだし。そっち系の家系とかっすか?」

神八代 祝人の父親は電気屋で母親は専業主婦だった。

「ウチは全然そっち系じゃないね。普通の一般家庭でお化けなんてみたこともないよ。怖いからみたくもない」

そうごまかして切り抜けたが、一刻も早く帰りたいと思い仮病で早退を図った。


そうまでして家に帰ってきたのは訳があった。昨日初めてSNSというところに日記を書いてみたのだが、その内容が思いっきり自分の体験したお化けの話だった。神八代 祝人は慌ててSNSに飛び、昨日投稿した日記のページを開いた。内容はこうだ。

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『校庭』

俺の通っていた中学はその地域で有名な心霊現象の多い学校だった。二次大戦中に陸軍病院があった跡地に建てられ、校庭は墓地だったそうだ。嘘だと思い調べたら実際に写真付きで資料に載っており、少し引いた。なので七不思議どころの話では済まず、むしろあの話はトレンドだから七不思議入り、この話は古いからレギュラー落ち、なんてことがザラにあった。

そんな中学に俺が通う前、まだ小学生だった時の話だ。

俺には姉がおり、その腐った姉が高校一年生の時ケーキ屋でバイトを始めた。夜10時に終わるのだが、帰宅路は非常に物騒だったため父親か母親が迎えに行っていた。

ある金曜日の夜のこと。次の日は学校も休みで俺はいつもより遅くまで起きていることが許された。21:30を過ぎた頃、母親から

「あんたも一緒に迎えに行くかい?」

と誘われた。当時小学生だった俺はそんなミッドナイトに外を歩ける事に興奮し二つ返事で行くことを了承した。

バイト先のケーキ屋は俺の家から徒歩1分にある件の中学校の校庭の横を通る。家を出てすぐに校庭横の通りに差し掛かった。家から歩くと手前に野球のグラウンド、それを越すとサッカー城、次いでプールに剣道場と柔道場がある。その野球のグラウンドのあたりで不思議なことが起こった。小学生の俺と同じか俺より少し下くらいの子の笑い声が聞こえたのである。声の方に視線を向けるが校庭の照明は消えていて闇が広がるばかりである。この時俺は「不思議だな」と思った。その直後、再びさっきとは違う女児の声がした。2人で楽しそうに遊んでいる声だった。やはり俺は不思議に思った。そして少し怖くなった。

「こんな時間に何でこんなところにいるんだろう?」

目を凝らしてみようとするもやはり人影はなかった。だが、女児2人に紛れ父親らしき人の

「こら、やめなさい」

という声が聞こえたので

「ああ、父親もいるのか。だから遊んでるんだな」

と疑問が解け、怖さも解消した。俺は母親とテクテク歩きケーキ屋に到着。姉、母、そして俺の3人できた道を戻り、また中学校のグラウンドに差し掛かった。もう誰の声も聞こえなかった。そりゃそうだ。時刻は22:00を過ぎている。こんな時間に遊ぶ人はいない…?いない?

そう、こんな時間に遊ぶ子どもと父親なんているはずないのだ。

それでも最近の若い親ならばありえるかもしれない。

けど、だとしてもあり得ない。暗すぎるのだ。

周りに街灯はなく、声がした方のグラウンドは本当に何も見えない。そばにいて遊ぶ相手の姿すら認識できない。だから遊べないのだ、ここでは。

そして、さっきはあまり疑問に思わなかったけれど明らかにおかしい事がある。

遊ぶ事ができないほど暗くても、グラウンドに人がいれば人影くらいは見える。けど見えなかった。何も。なんにも見えなかったのだ。ただ楽しそうな声が聞こえただけだ。


その年の春その中学を卒業した姉に聞くと

「そんな話は聞いた事ない」

という答えだった。


俺が入学した年に先輩から聞いた七不思議プラスαにはこんなタイトルの話があった。


「妹殺しの姉」


父が妹ばかりを可愛がるのに嫉妬した姉が自殺に見せかけようとして妹を殺す。所詮小学生の知恵なのでバレそうになり、自分も川に飛び込み自殺する。その後母親も自殺、父も妹と同じ中学校のグラウンドの脇に咲く桜の木で首を吊り死亡。以来夜の10:00頃になると姉妹と父親の声が聞こえる。

「やめてお姉ちゃん!」

「あははははは笑」

「こら、やめなさい!」

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神八代 祝人はその日記をさもさも小説ですよ的な内容に仕上げ、再び「投稿」のボタンを押す。

やれやれ、危なかった。せっかく出来たネット上のフレンドから引かれてしまうところだった。

神八代 祝人は安堵した。しかし直後にその日記の閲覧数を見るととても悲しい気分になった。


閲覧数 0


見られなくて良かったという気持ちと誰も見てくれないという悲しみで、少しだけ気持ちの整理に時間がかかった。

近所だからわかるんだけど、実際はそんな殺人事件も自殺も一切なかったんだよねぇ…。そんなもんだよね、怪談とか七不思議って。

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