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【完結済】異世界生活は難しい。〜勇者一行、現代日本に転移する〜  作者: 松竹紅葉
第1章 勇者一行、召喚される?
22/86

勇者一行、今後のことを決める。

この話で第1章は終了です。

 自分たちを転移させた呪術師(シャーマン)が死んだことで、元の世界に帰る術を失った。絶望するアレックスにツトムは優しく語り掛ける。


「アレックス、落ち着いて。そのことなん……」

「心配すんなよツトム!俺は勇者だぜ?どんな絶望だって乗り越えてみせるさ。」


 ツトムは自分のことを心配してくれている。だが情けない姿を見せるのは、アレックスのプライドが許さなかった。

 

「あ、いやそうじゃなくて……」

「何がなんでも元の世界に帰る方法を見つけ……」

「だから聞けって!」


 ツトムはアレックスの話を遮ると、はっきりと断言する。



 

「元の世界に帰る方法ならあるんだよ!」




 この日、アレックスは何度目か分からない驚きの声を上げた。





「馬鹿だな。もし本当に帰る方法が無ければ、あんな風に呑気に遊んでいるわけがないだろう。」

「アルは人の話聞かないですからね。」

「ダーリンったらおっちょこちょいなんだから。」

「テメェら……。」


 現在、ゲームを中断したシャーロットたちによってアレックスは大人しくなっていた。


「まぁ、あの話の流れだとそう思っちゃうのは無理ないよね!うん。アレックスどんまい!」

「あはは。ありがとな……。」


 杏に励まされたものの、一方的に勘違いして大騒ぎしていたアレックスは居た堪れなくなっている。


「で、話を戻すけど。母さんが言うには、術者が死んだ場合は転移魔法の縛りそのものが無くなるらしいんだ。だから、母さんが今アレックスたちを元の世界に帰す魔法を開発中。」

「お、おお……。」


 基本的に2つの世界を行き来するのは不可能とされている。それでも自力でこの世界にやってきた全知の魔女なら、それを可能にするかもしれない。


「ただ流石に時間は掛かるみたいだ。……というわけでアレックス。」

「ん、何だ?」


 ツトムを含め、今この場に居る全員がニコニコしながらアレックスを見つめる。……嫌な予感しかしない。






「しばらくの間、お前たちには俺たちと一緒に学生生活を送ってもらう。」






 今、ツトムは何と言った?ガクセイ、セイカツ?


 アレックスは頭の中で繰り返す。そして何度も繰り返した末にそれが『学生生活』であると理解し、




「ハァァァァァァァァッ!?」


その日1番大きな声を上げた。






 アレックスたちが学生生活を送ることが決定したその日の夜。


 激戦が繰り広げられた旧校舎は、何事もなかったかのように佇んでいる。魔核竜、もとい炎龍によって崩壊した建物は、全知の魔女の手により元の姿へと戻った。魔障が消え去ったことで最早立ち入り禁止にする必要はないのだが、それを知り得ない学校側は余程のことがない限り此処に立ち入ることはないだろう。



 

しかし、旧校舎の多目的ホール。

そこには2人の影があった。



 

「いやはや、想定以上でした。ガダルド・クラシスの魔障の技術を取り入れただけでこれですよ!」


 嗄れた声の老人が嬉しそうに話す。老人が持つ水晶には、勇者一行と炎龍の戦いが映し出されている。その話振りは目の前の玩具にはしゃぐ子供のようだった。


「……転移してきた魔王の影響もあるんじゃないか?あれこそ魔障の塊のようなものだろう。」


 もう一方の男は対照に冷静だった。その声色は何処か不機嫌そうである。男は魔王の転移させた魔法陣の痕跡を忌々しげに眺めた。


「それで、魔王の行方は?」


 男にとって重要なのは魔王の存在だった。己が目的を果たす為に魔王は必須。故にわざわざ呪術師(シャーマン)の魔法陣に細工までして転移させたのだ。だというのに……


「ええ、未だ例の呪術師(シャーマン)()()()()()()()()ようです。」


 男たちはその呪術師(シャーマン)を見くびっていた。魔王を転移させるほどの才が有ることと、実際に契約できるかはまた別の問題だ。


しかし、奴はそれをやってのけたのだ。

()()()1()5()()()()()が。

 

「居場所は分かっています。殺しますか?」

「……やめておけ、返り討ちに遭うだけだぞ。」


 既に契約が結ばれている以上、魔王があの呪術師(シャーマン)を守るのは目に見えている。


「魔王のことは後回しで良い。それよりも、先に対処しなければならないことがあるだろう。」


男は水晶の中で黄金の光を放つ少女に目を遣る。

佐藤杏。この学園に通う女子生徒だ。

 

「まさか聖女が覚醒するとは……。」

「今後我々の障害となる存在だ。この戦いのように妨害されては敵わん。」


 あの黄金の光は癒しの力であると共に魔物を弱体化させる。古い文献に記されている聖女の力の1つだった。


「そもそも聖女が少な過ぎて記録は殆ど遺されていませんからねぇ。あの力も聖女の一端に過ぎないのでしょう。」

「聖女の力の全貌が分からない以上、下手に手出しをするのは危険だ。暫くは様子を見ることにしよう。間違っても殺すなよ。」

「……仰せのままに。」





 

 男はそのまま多目的ホールを後にする。残された老人は、1人月明かりの下で妖しく笑った。

次回、活動報告で予告した通りツトムの番外編が入ります。

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