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a trick of destiny Ⅲ -運命の悪戯 3-  作者: 樋山 蓮


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1/3

Ⅰ.光の裏で、過去が動く


「カーット!確認しまーす!」


昨日から、教会を貸し切ってMV撮影が行われている。


昨日は個人シーンを撮影して、今日は全員での撮影だ。



「メイク直し入りまーす。」

重装備な衣装と、照らし続ける照明で汗まみれになる。



「Suiさん、すごいっすね。確認も一緒にって。」

「それほど、このプロジェクトに懸けてるんだろ。この前のパーティー見たろ?」

「どうだったんすか、パーティー。」


ツアーで仙台にいたMayくんは、パーティーに参加できなかった。


「いやぁ、50周年企画の第一弾としてゼロレク(Z∅REQUIEM)が発表されてて。他にも新人発掘オーディションプロジェクトとか、レコード会社主催のイベントライブとかも発表されて、最後にSuiさんのソロデビューで、曲も披露して。」

「なるほど。事務所も力を入れてるってことか。」

「名探偵ユ・ナンの主題歌になったって田舎の母ちゃんに言ったら喜んでたよ。」

「Ruiくんってどこ出身なの?」

「俺はね…」



俺たちがそんな話をしている間も、Suiさんは監督と真剣に話していた。


その後も丸一日かけて全員カットの撮影が続いた。


22時、撮影が終わるとSuiさんは

「みんな、ありがとう。お疲れさま。」

と、帰っていった。



「颯爽と帰っていくな…Suiさん。」

「明日、Shooting★Starの方のレコーディングみたいだよ。」

「大変そうだな…。」

「DIM-TAMは?」

「年明けからツアーで、ミニアルバム曲を収録してる最中だよ。」

「ゼロレクが終わるまで長いよな…」

「まあ、このバンドでもっと売れて、自分たちのバンドにもっと勢いつけようぜ。」

「じゃあ、明日も朝早いから帰るか。」



ロケ車に乗り込むと、ポケットに入れてあったスマホの振動に気づいた。


【亜紀】

撮影終わったかな?

ツアーの日程送ってくれてありがとう。

お父さん、また行きたいって!

一緒に行けるようにわたしも予定調整するね。



「剣斗さん、彼女から連絡ですか?」

「ま、まあな。」

「目尻が下がってて分かりやすいっすよ。」

「剣斗は彼女に夢中だからな。」

「剣斗さんが惚れる人って、どんな人なんですか!?」

「普通の子だよ。」

「あの、週刊誌で話題になってた?」

「付き合ってどれくらいなんですか?」

「もう1年半くらいか。」

「柳だって長い彼女がいるじゃんか。」

「まあ、俺は家族ぐるみだからな。」

「許嫁ってやつですか?」

「まあ、そんなかんじ。」


「Ruiくんの彼女は?」

「見たいっすかぁ〜?」

「ゔわ、めっちゃ美人やん!」

「銀座のホステスなんですよ〜。」

「お前、彼女の金目当てだな。」

「まあ、バンドやってると…金かかるからねえ。」

「でも、剣斗さんの彼女健気でいい子そうですね。」

「まだ、大学生なんだけどね。4月から社会人。」

「俺も大学生と付き合いてぇ〜。俺の彼女なんて夜中に帰ってくるからなあ…。」

「ホステスじゃ無理だな。笑」



都内の夜景がロケ車の窓を流れていった。


家に着く頃、亜紀へ返信を送った。


ロケ車を降りた直後、亜紀から電話が来た。


「もしもし?」

「お仕事おつかれさま!」

「ありがとう。さっき家着いたところ。」

「撮影どうだった?」

「めっちゃいい出来だと思う。」

「楽しみだなあ。」

「亜紀は、最近どう?」

「採用のための書類書いたりしてて。」

「もう、そんな時期なんだな。」

「あとは教員免許取るのみだから、必死だよ。」

「そっかあ。無理するなよ。」

「ありがとう。明日からレコーディングでしょ?賢も無理しないでね。」

「うん。年末年始、また亜紀の家で過ごせるように頑張る。その時、結婚の挨拶しようと思う。…いいよな?」

「うん。…少し恥ずかしいけど。」

「じゃあ、また連絡する。」

「うん。」

「おやすみ。」

「おやすみなさい。」


亜紀と結婚する、そう決めてからDIM-TAMの仕事もZ∅REQUIEMの仕事も真剣に向き合ってきた。


亜紀の夢も応援したい。

一緒に夢を叶えたい。

そんな気持ちがずっと頭を巡っている。









「Suiさん、こちらにお願いします!」


今日はついにZ∅REQUIEM(ゼロレクイエム)のお披露目だ。


LUNE Entertainmentの50周年記念のイベントライブは、大物アーティストも出演する大きなイベントだ。



「期間限定とのことですが、CDの売れ行きでは継続することも考えますか?」

「今回、年末のイベントまでみんなの大事なバンドの時間を調整してもらって集結しているので、継続することは考えていません。ただ、スケジュール次第ですが、数年後に再集結などの可能性はあるかもしれません。」

「期待しています!」


「今回のメインとなった『Last Chronicle』の作曲の剣斗さん。」

「はい。」

「『Last Chronicle』は名探偵ユ・ナンの主題歌として流れていますが、ご自身の感想などありますか?」

「主題歌に決まって、とても嬉しい気持ちと、最高の歌詞を書いて下さったSuiさんに感謝しています。」

「DIM-TAMとの両立は大変でしたか?」

「そうですね。ちょうどZ∅REQUIEMのPV撮影の翌日がDIM-TAMのレコーディングだったので、少し忙しかったです。でも、すごくいい経験になりました。」

「なるほど。」


「続いて、柳さん。」

「はい。」

「今回、Suiさんのソロプロジェクトへの楽曲提供をされたとのことですが…」



その時——

女優の星川ゆず、グラビアアイドルの由良ななみ、シンガーソングライターの屋内ゆかり——


三人は、まるで示し合わせたかのように、同じ衣装をまとってインタビュアーの後ろを通り過ぎた。


それは、かつてSuiの妹・エリナが所属していたアイドルグループ、Lumière Doll(ルミエルドール)の“衣装”だった。



星川のまとわりつく目線がむけられた。

わざとこっちをみているようだった。




インタビューを終えて、楽屋に戻る途中ー


「ルミドの再結成、熱いっすね!!」

「いや〜、まさかスタッフとして見れるとは!」


設営スタッフの会話が耳に入る。


「エリナちゃんが亡くなってもう5年が経つんですね…」

「シーッ!」

「なんだよ。」

スタッフ同士で耳打ちしている。


「えぇ!?Shooting★Starの?」

「ああ。秘密だぞ。」


Suiと兄妹だったということは業界の中では知る人ぞ知る事実なのかもしれない。





楽屋に戻ると、Suiさんは耳にイヤホンをつけて目を瞑っていた。









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