ヘラの怒り
アフロディテが繰り出した閃光が戦陣を切り裂き、大和と勇美がそれぞれ駆け出す。巨人たちが遅いかかろうとするも、その横合いから何者かが殴ってとめた。止めたのは巨人であった。
「同士討ち?!」
「アフロディテの権能だ!」
勇美の疑問に大和が正解を言い当てる。
巨人の群れの混乱を駆け抜け、その目の前にいる溶岩の巨人デュポーンを、大和の槍が貫き、
また世界が改変し、巨人の群れの世界が現れる。
先程と同じ光景!
巨人の群れの果てには、やはりテュポーンが見える。
「どうなってんの?!」
「そんな、せっかくアフロディテが自爆までして」
勇美が走りながらも、瞳に涙が浮かぶ。
「これがテュポーンの力だあふろでぃて」
「自己主張の強いマスコット出てきた!」
勇美に張り付いて飛んできているのは、五歳児ほどの姿をした金髪の少女。
「テュポーンは体内にあらゆる巨人の可能性を秘めているあふろでぃて! その可能性をもとに何度も復活するあふろでぃて! 大和の持つ死の権能で可能性を狭めていかないと、本体に届かないあふろでぃて!」
「とりあえずその語尾やめてください緊張感削がれるんで」
大和の言葉を聞いているのか聞いていないのか、アフロディテは続ける。
「わたしはさっきの自爆で同士討ち誘発みたいな無茶苦茶、もう出来ないから! あなたたちはテュポーンを倒し続けて! それが何回続くのかは分からないけど!」
テュポーンは大和と勇美に向けて溶岩波を繰り出した。その衝撃を目の前に突然現れた黄金の城が受け止める。
「ヘファイストス!」
「城ごと貫け!」
大和は閻魔を足元に落とし石突きを思いっきり蹴り込んだ。
衝撃がヘファイストスと小さなアフロディテをのけぞらせ吹き飛ばそうとする。それほどの一撃。
吹き飛んだ槍が黄金の城を貫き、一切減速せず心臓を貫いた。大和は気炎を高速噴出され閻魔を回収。だが、世界は二度目の改変を迎える。
「何回やるのこれ?」
「まだ全然だ」
勇美の呟きにヘファイストスは返す。
世界は改変し、今度は。
「うそ!」
大地がなくなり、奈落そのものの暗闇へと堕ちていく四人。その下には燃え盛るテュポーン。それと。
「そういえばテュポーンの子ども、いっぱいいるよな」
空を飛んで飛び上がってきたのは、獅子の頭に蛇の体、鷲の羽を持つ。キマイラだった。
外、陽美香はじっとテュポーンを見る。力は順調に削れて行っているが、その分テュポーンの抵抗も増している。何より、思ったよりテュポーンを防ぐのに力を使ったアレスとアテナがテュポーンの中に入っていない。
すっと陽美香の横から飛び出そうとする影がある。
「ヘラ」
陽美香の言葉に ヘラは不満げに鼻を鳴らす。
「今は落ち着いているからいいけど、キレてしまうと予想外の行動をとってしまう。今、私は私を使い潰す」
「ちょっと勝手に決めないでよ。社長私よ?」
「ゼウス。子どもたちは死なせるなよ」
ヘラは聞く耳持たんという形で大地を踏み締めると、衝撃ともに消えた。
「ぶっ飛べや!!!」
ヘラの拳だけが大きくなった。それはテュポーンの腕にも匹敵する。彼女の本質は、乱暴極まりないほどヒステリックな、不条理の化身。
「ヘラズレイジ!!」
ヘラの拳がテュポーンの鳩尾に吸い込まれる。
その衝撃はオリンポスを揺るがし、天体すら遠のくほどのインパクト。
テュポーンの体に亀裂が走る。
その空いた大穴から、テュポーンを抑えていたアレスとアテナは飛び上がり、人間大の大きさに戻り入っていった。




