贅沢な牽制
大巨人の、陸塊ほどの大きさの突撃が、地響きと共におそいかかる。
まるで小惑星の衝突にも似た一歩一歩に、陽美香は獰猛な笑みを浮かべる。
くいくいと手を動かす。
合図に応えた大地の神ポセイドンが、テュポーンの足元を揺るがし突進力を弱める。
地面が波打ち、割れ、砕かれ、地盤が完全に崩壊した。
陽美香はさらにひらひらと天に手をかざして合図を送る。
太陽の神アポロンと月の女神アルテミスが、星屑のような極光を、一斉に巨人に照射する。
大巨人は防御するように手で顔を覆う。
「まあまあね」
陽美香はニヤリと笑う。防御行動を取ったのだ。
効いてはいる。
「アレス、アテナ、よろしく」
「応よ!」
軍神と戦女神は駆け出した。一歩ずつ、確かな勢いで駆け出す。
その姿が十メートル、数十メートルと巨大化し、それでもテュポーンの膝丈程度ではあったが、突貫した。
二槍と大盾が巨人を押し込めていき、さらに上空の爆撃が降り注ぐ。
大巨人はアレスとアテナを押し返しながらも、うっとうしそうに上空を向き、溶岩の渦が形作った口から、高密度のエネルギーを生み出そうとしている。
物質を生み世界を創生するようなエネルギー。
それをそのままぶつける。
「ヘルメス! ヘファイストス」
「あいあいさー!」
ヘファイストスが槌で地面を叩き黄金の鎖が出来上がる。それを握りしめたヘルメスが空を文字通り踏みしめ、縦横無尽に走り回る。
影のあとにつづく金の鎖が星座のような織物を作る。
そして、黄金の鎖が絞り、大巨人の口を縛り上げる。
暴発する閃光。爆発する頭部。
「蒼天に座す、天国のRays」
風雅が音を奏で、四体の獣を解き放つ。
朱雀、青龍、白虎、玄武。
それらが流星となって降り注ぎ、溶岩の巨人を吹き飛ばす。
弾けた頭部から火山が爆発するような、雄叫びのような音が響く。
GO GO GO GO GO
溶岩の巨人はのけ反りながらも両腕を合わせて振り落とす。
ダブルスレッジハンマー。
それが大地にたたきつけられる前に、滑り込む神王女。
放電し轟いた閃光が、衝撃となって空間を割いた。
絶世の咆哮。
雷鳴万華。
その衝撃は溶岩の巨人の頭部どころか首の中ほどまで吹き飛ばし。
「行け! 大和!」
「行って! イサミン!」
大和と勇美が突貫し、首元からテュポーンの中へと吸い込まれていく。
続いて飛び込む、影と影。
大和と勇美がテュポーンの中に突撃して見たのは、雲霞のような軍勢であった。
灼熱の地獄を埋め尽くす、土塊の巨人達。
地平が見えぬほどの、軍団。
それに相対する二人は、一瞬顔を見合わせ、飛び掛かる。
大和は黒い炎を、勇美は紫の炎を、共に噴出させ空間を叩いて飛び込んでいく。
二人が軍勢に届く前に、一人の女が姿を現す。
「「アフロディーテ!?」」
美の女神は金の鎖を振り上げて、叫んだ。
瞬間、金の鎖は膨張し、不穏な圧縮と湾曲を繰り返し暴走する。
「全部持っていけー!!」
鎖が弾け、極大の衝撃破が巨人達を吹き飛ばした。
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