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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第10章 オリンポス十二柱神
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風雅VSヘルメス 陽美香VSヘラ

「あれがオリンポス山の中心か」

「もうわかりやすく雷雲がゴロゴロ言ってんじゃん」

 胸がむせ返るような神気を吸いながら、風雅(ふうが)は泣きそうな声で目の前の雷雲が覆う険しい山を見る。

 その中心にいるであろう、神雷(しんらい)ケラウノスを(まと)う神々の王ゼウスを思う。

 オリンポス十二柱神の首魁であり、神々の王であり、地球の全てを覆う雷雲そのもの。

 人間が戦える相手ではない。

「でも陽美香(ひみか)を助けるには行くしかないし、行こう」

「……神殺しの人達って基本思いきりいいよね。もう慣れたけど」

「幼いころから命狙われてる。毎日化け物に襲われる。正気じゃないって言われればそうかもね」


 勇美(いさみ)はふむと口に手を当てる。

「そんな私を理解しないまでも、一緒にいてくれたのが陽美香だ。

 だから絶対守りたい。

 もうひと踏ん張り力を貸してくれ」

「……俺も同じ気持ちだよ」

 言った瞬間、二人は同時に雷雲の方を見る。

「勇美ちゃん行ってくれ! こいつは俺が止める!」

 彼は神々一の瞬足を誇る神。


 その蹴りが井上勇美を襲うが、防いだのは岩倉風雅(いわくらふうが)

 錐もみして吹き飛びながらも風雅は朱雀と融合し、火の鳥の姿となる。

 風雅はさらに札から自身の式神、青龍を繰り出した。

 落下する勇美を青い龍が咥えて飛んでいく。

 火の鳥と融合した少年と、空を大地と同じように駆けることができる有翼のサンダルが激突する。

 そうヘルメスは様々な宝物を扱う神。

 有翼のサンダル、羽のついた兜、そしてアポロンから受け取った黄金の伝令杖(でんれいつえ)ケリュケイオン。

 杖を槍のように振り回し、風雅につきつける。

 高度数百メートルで二人が激突しようとした時、風雅が異変を察知する。


 陽美香を守っていた結界が割れた。


 

 崩壊しかかった石造りの神殿の中。

 陽美香は割れた結界を茫然と見つめた。

 とうとう、破られた。

 目の前には怒りで顔を悪魔のように変化させたヘラがいる。

 拳からは血が滴っているが、気に留めた様子はない。


 そしてさらに悪いことに、石造りの階段の上にある玉座では神王ゼウスが自分を見下ろしていた。

 まさに絶体絶命といった状況であった。

 だが、陽美香の心情は不思議と凪いでいた。

 ただでは死なない。

 

「亀ちゃん。隠れてて」

 陽美香が抱えていた霊亀(れいき)は、亀にあるまじき俊敏さで離れ、瓦礫に身を隠す。

「ぶっ飛ばしてやるわ。ヘラさんよー!」 

 そう言って、陽美香は体から青白い雷を放電させる。

 まさに雷神というべき様相にヘラの顔が怒りに歪む。

「その力を使うな下郎! その力は我が夫のものだぞ!」

 言い詰められ、陽美香は苦笑する。

「生き残るためならなんだって使うわよおばさん! こちとら一端の武術家を気取ってるのでねえ!」


 陽美香とヘラがにらみ合う。

 ヘラとは、神々の王ゼウスの姉であり妃である。

 結婚と貞淑を司る女神であり、戦闘ができるイメージが浸透しているとは言い難い。

 だが、かのトロイア戦争において、その格闘の強さは狩りの女神アルテミスを凌ぐ。


 その神が、赤羽陽美香を殴り殺そうと拳を振るう。

 一撃が音の五倍以上の速さで襲いかかり、衝撃波で神殿がさらに破壊される。

 だが、赤羽陽美香は躱していた。

 まるでダンスを踊るようにかろやかに右足を軸に回り、攻撃を受け流す。

 本能的に攻撃に転じた少女は肘を勢いよく女神のみぞおちにぶち当てる。

 凄まじいいスパークが、肘と体の接した箇所に轟いた。

 骨と肉の軋む音とともにヘラは吹き飛び、玉座で見届けるゼウスの横に着弾する。

 陽美香はいっそ冷えた感情で自分を見る。

 

(ああ、私、人間じゃないんだなあ)


 それでも、陽美香は戻りたかった。

 井上勇美の、岩倉風雅のいる所に。

 ゆえに神々の王であるゼウスを睨む。

「早く私を返して! 私はあんたなんかに興味はないの!」


 ゼウスは、自慢の髭をしごいて陽美香を見つめる。

 その感情は、哀れみであった。

 陽美香は怪訝な顔でゼウスを睨みつける。


「……お前がその力に目覚めなければ、それでもよかったのだがな」

 ゼウスはため息をつきながら陽美香を見つめる。

「お前は私の力を吸収している。それだけなら、私は甘んじてお前のために命を捨てることができた」

 神の王の発言に陽美香は困惑する。

 彼は今、自分のために命を捨てると言ったのだ。


「……何で、そこまでするの?」

「私がお前の父親だからだ。愛した女の娘だからだ。だが、話は簡単ではない」

 ゼウスは陽美香を見つめ、残酷な宣言をする。

「もしこのままお前の力が大きくなり、私の力が弱くなれば大災厄テュポーンが復活する。

 それはこのオリンポスのみならず、世界の破壊を意味するだろう」


 その言葉を陽美香は時間をかけて咀嚼(そしゃく)し、尋ねる。

「じゃあ何? 私が死ななきゃ世界が滅びるっていうの?」

 陽美香は信じないという風に、震えながらも言葉をつむぐ。

 だが、ゼウスは否定しなかった。

「ああ、そうだ。ゆえに皆躍起(やっき)になってお前を探し出した」

「そんなの、ないよ。じゃあ私」

 

 いない方がいいみたいじゃない。


「……それは」

 ゼウスが何かを言おうとした時、女の絶叫が神殿を揺らす。

 それは地盤を震わせながら向かってくる。

「ヒ! サ! ナー!」

 ヘラが、音の壁を突き破りながら突撃してくる。

 

 拳が振るわれ、陽美香の脇腹を突き刺そうとする。

 だが、陽美香は神の如き身体能力で突き手を取ると、そのまま関節を極め肩に比重を加える。

 一切の躊躇(ちゅうちょ)なく外した。

 

 それでもヘラは止まらない。外れた肩で振り回した腕が陽美香にあたる。

 血を噴きながら陽美香は吹き飛び壁に叩きつけられる。

 霊亀の心配するような甲高い鳴き声が神殿内に響き渡る。

 陽美香は血を地面に向かって吐き捨てながら、髪をかき上げヘラを睨む。


「頭のおかしい女は相手しちゃダメね。まあやるけど」

「ヒサナ!」

「人の母親の名前を気安く呼ぶな!」

 武による制圧と拳による暴力。

 凄まじい攻防を憂慮しながら見つめるゼウス。


「やはり、ダメだな。陽美香。お前は強くなりすぎた」

 ゼウスはそう呟くと、右手をかざす。

 それは暴虐を現すような、雷鳴であった。

 空間の爆ぜる音が陽美香の警戒を最大限に引き出す。

 

 アレはまずい。

 

 そうあれこそがケラウノス。

 ゼウスが持つ最強の神雷であり神が作った兵器。

 その威力は例え神の力を受け継ぐ陽美香であっても、いや同型だからこそ嫌でもわかる。

 

 アレを食らえば死ぬ。


 稲妻は最大で光の三分の一程の速さで襲いかかる。

 神の反射神経といえども、躱せるものではない。

 現にそれは陽美香に吸い込まれようとし。


 飛来した紫の炎が防ぎ切った。

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