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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第8章 殺人貴公子
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紫炎は狂風にも揺らがず

 福岡県警前は報道陣とそれを阻む警察でごった返していた。

 大和(やまと)達は雄大(たかひろ)の先導で県警内部に入っていく。

 五人は事情のわかる警察官に連れられ署長室へ赴く。

 そこにはまるで何かにとりつかれたようにやつれた壮年の、署長と思しき男性が座っていた。

 大和達はピンと来る。

(この人、やってるわ──)と。

 雄大は頭をかきつつ、その署長に近づく。

「あの、政府からのものですが」

 そう言われ、署長が凄まじい勢いで立ち上がり近づく。

「き、君が井上雄大か! 良く来てくれた! 私を守ってくれ!」

 署長は泣きそうな顔で雄大の足元にすがりつく。

「雄大さん、その言い方だと有名なんですね」

 ギターケースを背負った明るい髪の少年、風雅(ふうが)は感心したように雄大の広い背中を見つめる。

「まあ、武装した半グレ程度ではものともしない程度には強いな」

 大和が牛鬼の件を思い出しながら言う。

 そして、署長を睨みつけ、言った。


「あなたが、蓮野達を売ったんですか?」

 大和の平易な声に、署長は肩を跳ねさせ、わたわたと後ずさる。

「な、なにを言ってる! 私はただ、ただ……」

「ああ、いいですよ別に、よくわかりましたから」

 彼自身は言っては見たものの、さして興味もなさそうだ。

 勇美(いさみ)は嘆息し、辺りを見渡す。

「一応近くには、異能者の気配はないけど。どうするの、雄兄」

「ま、どうせ政府から制裁があるだろ。一応守るでいいんじゃねえのか?

 アンタも、とっとと下の報道陣に私がやりましたって言えばいいんじゃないんですか?」

「な、何故私がそんなことをしなければならん! ち、違うんだ、本当に!」

「何が違うのおじさん」

「私はただ、悪魔がこの街をいずれ焼き払うと思って、街のためだったんだ!」

「で、いくら貰ったの?」


 陽美香(ひみか)の問いかけに、男の体がビクリと震える。

 数秒後、観念したようにうなだれる。

 風雅は興味を失ったようにギターをチューニングしている。

 勇美は男の肩を叩いて出口に促す。

「行こうかおじさん。悪いことしたらごめんなさいって言うんだよ」

 勇美の言葉にしばらくうなだれた後、おとなしく歩き始めた。


 男を連れて、報道陣の前に連れて行く途中。

 廊下で異能者の気配を感じ、皆を制する勇美。

 数キロ先だが、来る。

 近づく速さから、おそらく車に乗っている。

 勇美は紫炎を巻き上げ、攻撃する。

 だが、()()()()()

「瞬間移動か」

 まるで、いや実際、空間から一瞬いなくなったように見えた。

 大和と勇美は全員を守るように集団の前後に移動する。

「風雅、おっさんを守れ」

 大和がギターを抱え、札を口に咥える少年に話しかける。

 風雅は了解し、署長の肩を抱えた。

 

 瞬間、拳銃を持った華崎隆盛が空間の歪みとともに現れ、凄まじい勢い勇美の方に駆けてくる。

「こっちだ!」

 勇美が紫炎を練り上げ、前に放とうとする。

「いや、違う!」

 大和は察知した。狙いが一直線すぎる。

 隆盛と同様空間の歪みに光が屈折した状態で瞬間移動したのは蓮野小太郎。

 彼が目の前の大和に分銅を投げつける。

 みぞおちの辺りに投げ込まれたそれを、伸縮警棒で叩き撃ち落とす。

 廊下に響く金属音に、勇美の精神が一瞬揺らいだ。

 

 その一瞬を見逃さず、隆盛はたちまち瞬間移動。

 後ろから風雅を背中から羽交い絞めしたと思うと、またしても歪みとともに消え去る。

 さらに陽美香の服を掴み、転移。

 雄大に背中から近づいたところで、刑事は超反応で後ろ回し蹴りをする。


 そのまま空手による連撃が隆盛の体を貫こうとする。

「は! 予想通りとんでもねえな!」

 だが、隆盛は巧なフットワークで雄大の攻撃を躱す。

「身体能力も上がっているのか! 異能者ってのは厄介だ」

「雄兄!」

 勇美が紫炎を纏い正拳突きをする。

 だが、後ろから何者かの気配を感じ、勇美は後ろを向く。

 そこには華崎繚蘭がライフルを向けて立っていた。

 悲しそうな顔で勇美を見つめる繚蘭。

「動かないで」

「勇美どけ」

「隙あり」

 隆盛が手で雄大の肩を叩き、テレポートさせる。

 

 廊下には、切り結ぶ大和と小太郎。

 勇美と彼女を挟んで立ち、ライフルとピストルを向ける華崎兄妹。

 もはや失禁せんばかりに怯える署長の姿しかなかった。

「ああ、助けて、助けて」

「大丈夫だ」

 勇美は決意するように紫炎を巻き上げる。

「誰も死なせない」


 少女の決意表明に、待ったをかけたのは、攻撃の手を止めた小太郎だ。

「待ってくれ、何もおたくらを殺しにきたわけじゃないんだ。

 君らの仲間も福岡市内のウマい定食屋に放り込んであるだけだ」

 長髪に長身の少年は、お茶目にウインクする。

 その場違いな愛嬌ある仕草に、とりあえず話を聞こうと目を見る勇美と、油断なく警棒を構える大和。

「なあ、“キルマスター”水上龍誠(みながみたつまさ)の弟子、釧灘大和。

 日本最強の才覚を持つ神殺し、井上勇美。


 俺達の仲間にならないか?」


 

 小太郎の問いかけに、戸惑ったような瞳をする勇美。

「君らも思わないか? 世の中、バカな奴らばかりだ。

 悪魔のささやきに乗って、すぐに人を襲う、傷つける。自分の欲望のために薬を撒いて女を犯して銃を撃つ。

 くだらねえ存在ばかりだった」

 小太郎は何かを堪えるように、その堪えを吐き出すように毒づいた。

「こんなもん守るために、政府の犬みてえに駆けずり回って何になる? だから、一緒に行こうぜ」

「……一緒に行ってなにやるのさ」

 勇美が両手を頭の高さまで上げながら続きを促す。

 拳銃は流石にまずい。


「俺達は悪魔と繋がってる連中のリストを見つけた。親切な白衣のおっさんから入手したものだが、信用できる!

 これに乗ってる奴らを片っ端から捕まえまくって、世の中を悪魔の手に渡そうとするヤツらを皆殺しにするんだ」

 小太郎は心底楽しそうに二人に言う。

 大和は、無反応だった。ただ勇美の言葉を待っている。


「……なら、交渉は決裂だ。あんたらとは組めない」

 勇美の問いに残念そうに肩を竦める小太郎。

「そうか……。今後の参考に何でダメか聞いても?」

 小太郎の問いに、勇美は一瞬目を瞑り、確かな声でノーを繰り返す。

「あんたらが人を殺しても、怒りのままに正義を成しても、何にもならないんだ。

 人が死ぬってのは、それだけ悲しいことだから」

 勇美の口に、尊敬する人物の言葉が宿る。


「それに、あんたらはいい奴だ。できればこれ以上人を殺してほしくない」

 勇美の言葉に意外そうに目を丸くする小太郎。

「おいおい、そいつらはともかく俺は違うだろ。

 というか、華崎兄妹は人は殺してないよ」

「片棒担いだ時点で同罪だ。それはあんたらだって同じ理屈でこの人殺そうとしてるんだろう」

 勇美は決意を持って、紫炎をゆらりと上げる。

「あんたらがいいやつじゃなかったら、亜美ちゃんはあそこまで、この街のために戦おうとはしなかったはずだ。

 大事なのは、意志を継ぐことだ。あんたらの行動が亜美ちゃんの思惑に沿うとは思わないね」

 あの自分の死を願った女の子が、最後は魔界の向こう側に消えたあの子が、誰も彼も殺してしまえとは思うまい。

 そんなことは、小太郎達自身も分かっている。

「もし、そのリストに悪党どもが乗っているっていうなら、私の従兄に渡しなさい。そうすれば、全員捕らえてくれる。

 でも殺人はダメだ。それをやっても、殺して殺して殺して、アンタら止まんなくなるだけだ」

 相手に死を賜らない優しい力、神武不殺を持つ勇美は断固たる決意でもって、ノーと言う。


 小太郎は少し考え込む。

「釧灘大和。あんたはどう思う」

 大和は小太郎の問いかけの間も、油断なく警棒を構えていた。

「井上と違って、俺はお前達が殺しをしようが構わない。別にやるなら勝手にやれって思ってた」

 だが、と大和は怒気を込めて小太郎を睨む。

「井上は優しいから、お前達を止めた。

 その井上の優しさを踏みにじり殺人道に身を落とすというのなら、手荒になるが捕えなきゃいけなくなったな」

 そう言って、大和の目が細まる。


「そうか……。実は俺は、お前と遊んでみたかったんだよ。

 水地流の釧灘大和。

 ()()()()()()()()で剣道全中日本二位に輝いた逸材にして、人を四人斬殺しているラストサムライだろう?」

 その言葉に、勇美が瞳を険しくする。

 大和が警棒を利き手の右で構えながら、左手で指を折って数える。

「押し込み強盗の時が二人、井上を襲われた時が結局失血で二人。合わせて四人か、確かに」

「何だ、数えたことなかったのか?」


「だって()()()()()()()だろう? 俺が気にしてるのは、せいぜい()()()()()()くらいだ」

 その言葉に小太郎は呆気にとられ、クスクスと地獄の鬼みたいに笑う。

 勇美は大和の言葉に衝撃を受けつつ、二人を見つめる。

「やっぱお前面白いよ……。イカレてる」

 小太郎はとんとんと自分のこめかみあたりを指でつつく。

「じゃあまあ、死合うか」

 小太郎が鎖分銅を振り回し、大和は殺気を高め、睨みあった。

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