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神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第8章 殺人貴公子
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井上勇美の信条

 魔術的に要所とされる大学近くの公園広場。

 辺りはすでに暗く、人通りもない。

 そこに突然現れた自身の死を願う少女。

「へ? やだけど」

 勇美の間髪入れずの即答に、風雅は思わずずっこける。

「いや、あの」

「いやお嬢ちゃんそんな場合じゃないのよ。だってこの空の様子見てよ、本当に危険な状態なんだから。まあ私の身体能力がそのままなんだから、まだ猶予はあるんでしょうけど」

 亜美に対しまくし立てるように続ける勇美。

「……空が赤いのは、私のせいなんです」

 そう言い放ち、亜美はギュッと自分の胸の前で手を握る。

「私の中のガープの権能が、魔界を観測しているからだって、おじさんが言ってました。

 だから私が死ねば、元に戻ります」

「成程、いやです!」

 きっぱりはっきりと勇美は告げる。

 風雅はえーっという感じで勇美を見る。

「私一歳の子が死ななきゃならない世界ならいっそ滅んでしまった方がいいとおもってるの」

「風雅くん諦めなよ。イサミンはこういうタイプなんだよ」

 陽美香はどこか嬉しそうな顔で言う。

「しかし、ガープの力ねえ、どうするべきか」

 確かに凄まじい力を亜美から感じ、風雅は顎に手をやり考える。


「風雅どうにか方法ないの? あんたこう何か、凄いんでしょ」

 勇美は雑に風雅を頼った。

「うーん、つまり意図的に自分をコントロールできればいいんじゃないの? 俺は歌う時だけに限定することで自身の『人と神を繋ぐ力』を制限しているけど」

 風雅は何てことなしにとんでもないことを言うが、状況が切迫しているため、誰も言わなかった。

「君、確かアミーの力も持っているんだよね? アミーの力にリソースを使えば、ガープの権能も収まるんじゃないの?」

 風雅が言った解決策に、亜美は目を輝かせる。

「あたしの中の、二人の悪魔?」

「そうそう、俺も詳しくは知らないけど、君の中には二つの悪魔、ガープとアミーがいるんだろう。

 君は無理やりガープの瞬間移動に伴う世界感知の権能を引き出されているから、アミーの権能である火や宝を見つける権能に君の力の全てを注ぎ込めば、或いは」

 風雅はそう言って、亜美のお腹に手を当てる。

 瞳を閉じて、集中し、力を探る。

「……やっぱり、君の中には大きい力と小さい力がある。小さい力を大きくするんだ。そうすれば、大きい力は逆に小さくなる」

「うん、やってみる」

 風雅の頭の中で、冷たい世界を知り尽くす力と燃え盛る炎の力の二つがせめぎ合っている。

 すこしづつ、冷たい力が小さくなっていく。

「その調子、そのままそのまま」

 陰陽師の少年は、彼女には才能があると思った。

 自分の不確かなアドバイスに対し、迷わず実行する胆力。

 異能を持つものにとって重要な制御力、自制を彼女は持っている。

 これなら最悪の事態は回避できるかと思った時。

 風雅は横合いから衝撃を受けて失神した。


 突然倒れ伏した風雅に駆け寄る陽美香。

 勇美は下手人を見やり、睨みつける。

「何してんだ? 華崎兄妹(かざききょうだい)!」

「うちの子に何ペタペタ触ってんだてめえ!」

 勇美の怒りを、隆盛の激昂が遮る。

「お兄ちゃん落ち着いて、勇美ちゃんよ」

「あ? じゃあ味方か」

 銃を構えながら、隆盛はホッとしたように胸をなでおろす。

 陽美香に抱え起こされた風雅は呻き声を上げる。

「うう、教えてたのにこの仕打ち。あ、でも陽美香ちゃんと密着できて嬉しいかも」

「余裕そうだから自分で立て!」

 勇美は後ろに向かって怒鳴りながら、華崎兄妹、そして蓮野小太郎を油断なく見つめる。

「隆盛くん! この人は私を助けようとしてくれたの! あやまって!」

 亜美は怒って隆盛に叫ぶ。

「……すまん」

「いいってことよ」

 隆盛の謝罪に風雅は鷹揚に返す。

「で、亜美ちゃん。何とかなりそう?」

「ええ、これなら。へ?」

 瞬間、まるで火のついたランタンのように亜美の体が燃え上がり、天まで貫かんばかりに燃え上がる。

 凄まじい熱量に、一同は喉が焼けつくような感覚を覚える。


「おいどうした!」

「ええと、多分一時的にガープからアミーにリソースを切り替えた影響で、おそらくこのままだと福岡市が火の海になるんだけど、そこはええとあとはこの子を日本海にて休息冷却することで何とかなるといいなと思います」

「テンパってる!」

 勇美の激昂にしどろもどろの返答をする風雅、陽美香が頭を抱えつつ、善後策を考える。


「とにかく、あの朱雀ちゃんでこの子を海に落っことしましょう! このままだとヒロシマナガサキフクシマフクオカだわ!」

「おい、溺れたらどうする!」

「でもこのままじゃ不味いでしょ!」

 陽美香と小太郎が言い合っていると、風雅が炎を纏った鳥の式神をくり出す。

「なるべく浅瀬に突っ込むしかない。玄武もいるし溺死はない。魔界が開くよりはマシだから、海しかないよ」

「マジで言ってんのか?」

 しかし、迷っている暇はなさそうだ。

 亜美からあふれ出す火はどんどん強くなり、このままでは公園どころか住宅街を焼き尽くしてしまうだろう。


 朱雀が口で亜美を掴もうとした。

 その時、勇美が叫ぶ。

「伏せろ!」

 瞬間、まるで矢の雨のようにたくさんの十字架の形をした光が勇美達を貫こうとする。

 勇美は紫炎で風雅を、華崎兄妹が翠炎で亜美を守る。

 陽美香と小太郎は呆然と五人を見つめた。

「何やってんだ」

「あ。れいのーりょくってヤツだ!」

 小太郎と陽美香は光の矢を見えてすらおらず、近づいてくる人影のみを注視する。

 百八十センチ程の上背に金髪碧眼、伝統的なカソックコートを着た二十代後半の青年。

 それは、教会で会ったサムエル・フォーレンであった。


「てめえ! 何しやがる!」

 小太郎はサムエルを睨む。

 サムエルは端正な顔を歪ませ、苛立たし気に言う。

「それはこちらの台詞です。あなた方はこの街を火の海にするつもりですか? 魔界に変えるつもりですか?」

 サムエルもまた怒っていた。十字架の形をした、真っ白な光の矢を右手に持ち構える。

 そして放たれた、小太郎や陽美香には見えない光の矢が、真っすぐに亜美を狙う。

 すかさず、翠の炎により弾き飛ばされる。


「ふむ、それでも守りますか。勝算はあるのですか?」

 その言葉に、全員が風雅を見やる。

「勝算はある! 薄いけど……。いや、マジで……。トラストミー!」

「そこは言い切ってよ風雅くん!」

 陽美香に怒られ、しどろもどろに反論する。

「だって亜美ちゃん次第だもん! いや、本当! 俺が福岡港に持ってくから! 人的被害はきっとない!」

 風雅は手を合わせ頼み込むが、サムエルの返答は、彼の周りに無数に展開された光の十字架であった。

「哀しいことですが、不確かな可能性に百万以上の人命を賭けるわけにはいきません。ここで彼女を殺します」

 きわめて冷血にサムエルは死刑宣告をする。


 そこで、小太郎が鎖鎌を振り回し前に出る。

「あんたは正しいよ、それは分かってる」

 小太郎は鎖鎌についた分銅を振り回しサムエルに話しかける。

「だが、俺はおにいちゃんだからな、どんな状況でも、俺だけは亜美の味方になるって決めている」

 そう言って、小太郎は鎖分銅を投げつける。

 だが、その動作を終える頃には、すでにサムエルは小太郎の腰を掴んでいた。

 そのまま倒され、股間を三度痛打される。

 悶絶する小太郎に、風雅は思い出したように叫ぶ。


「思い出した! サムエル・フィオーレ! 総合格闘のミドル級欧州チャンプだった神殺しだ!」

「先に言え!」

 風雅の台詞に勇美は叫ぶ。

 そのまま、小太郎の背中からサブマシンガンを引き抜き、つきつける。

「危ないオモチャですね。没収です」

「やっぱり話し合いで解決しません!?」

 風雅はホールドアップしながら悲鳴のような声を上げる。

「話は終わりです。そこの少女を差し出しなさい。せめて苦しめずに、終わらせます」

 サムエルは悲し気な顔で全員を見渡す。

 その時異変に気付く。

 一人いない。

 瞬間、彼の手からマシンガンがすり取られていた。


 ウェーブがかかった金髪を一つにまとめた少女、赤羽陽美香。

 彼女は少したどたどしい手つきながらも、銃の弾倉を外し、それぞれ遠くに投げ捨てる。

「こんな無粋なもの捨てて、ねえ」

 陽美香はロングスカートの両端をつまんでお辞儀する。


「私と踊ってくださらない? ジェントルマン」



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