表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神殺しは銃で死ぬ  作者: 尾根末彦
第2章 牛鬼
11/90

修練

 クッキーを食べながら、井上勇美と釧灘大和、井上雄大は話をはじめた。


「いきなりボウガンねえ」


 井上雄大(たかひろ)は大和の倍はある大きさの手でクッキーをつまむ。

 その仕草はどこか鮭を食らうヒグマを連想させる荒々しさだ。


「だが深追いしなくて正解だ。どうなるか分かったもんじゃない」

「狙われたのは勇美だけど」

「地の果てまで追って抉れそんなやつ」


 言ってることが先ほどと180度違う。


「ボウガンくらいキャッチしろキャッチ」

「無理ですよ。無茶苦茶速かったですもん」

「あれを素手でキャッチとか人間業じゃないよにいさん」


 勇美がクッキーを口に運びながら、声をかける。


「ああ、そりゃそうか、お前らまだ中学生だもんな」

「別に成人ならできるってものでは……」


 大和が言おうとした時、雄大は遮った。


「お前ら、危ないことしようとしてないか」


そう言われ、大和と勇美がピクリとする。


「やっぱな、わかんだよ。子どもの考えてることは」

「……アマテラスに言われたんだ」


 大和達は説明した。逃げることは止めて、自分達の力を日本政府に示すことを。

 そうして、ルシファー討伐のための下地を作る。

 そのために、牛鬼を狩る。


「牛鬼。日本最強の妖怪じゃねえか」

「どのみち、名古屋に来てるんなら俺達が相手をしなきゃならないだろ」

「まあ、悪魔フルフルを倒したお前達だ。化け物相手なら安心しているが。お決まりのように奴ら正面から相手しないだろ」


「……それは」

「ひとまず、ボウガン遣いの情報が出るまでは待て。空手に先手なしとは言うが、今この状況は既に後手だ」

「それはそうだ」


 そこで、大和は時計を見た。


「今日、道場には行けないんで電話してきます。適当に寛いでてください」

「何だみずくさい。車で来たんだ、警護がてら送っていくよ。ついでに水上さんに連絡するか」

「……何を?」

「たまには勇美に空手を教えてやるよ。場所だけかりよう」


 勇美の顔が、少し蒼くなった。



 道場で、50絡みの男が弓を取っていた。

 背は180センチ程、弓を引き絞るその姿は一切の淀みがない。

 優れた体幹と技術を持つと想像できる人物だ。

 相対するは、怜悧な美貌を持つ怜悧な美貌を持つ黒髪黒目の少年、釧灘大和だ。


 その後ろにはわらで出来た人形が立っている。

 男が放った矢を、少年は掴もうとする。

 勿論、矢には安全なよう矢先に布が覆われている。

 矢は、藁人形の腹を布ごと刺し貫いた。


「ほら掴め掴め」

「いや待ってください。この布全く意味ないですよね」

「キャッチすりゃいいんだ。それに安全の為の布だ」

「いやだからその布を思いっきり貫いてるんですって」


 そこで初老の男、この水地流道場の師範である水上龍誠はため息をつく。


「あのね、藁人形が君の愛しの勇美ちゃんだったら、今頃矢で貫かれてるわけだよ。

 重く捉えて欲しいね」


 その指摘に大和の言葉が詰まる。


「今後同じようなことがあった時、動けないんじゃいけないからな」

「そら、愛しの勇美ちゃん。とっとと突いてこい」


 170センチを超える長身である勇美は、その体を九の字にして蹲っている。

 それでも立ち上がり、突きをする。


「チェストォ!!」


 その手を、雄大は受けた、それだけで勇美の腕は内出血を起こし鋭い痛みが襲う。


「何度いったら分かる! 起こりを消せ! 俺に兆候を気取られてるから受けられるんだ!」

「押忍!」


 勇美が突く。


「押忍!」

「気合が足りん!」

「押忍!!」


 また腕が叩き落された。雄大の腕力はパンチを防御するだけで相手の突き腕を折ることが可能。

 まさしく達人と呼ぶに相応しい相手に、勇美は愚直に突きを繰り出す。

 


「お、ヒントを与えてくれてるぞ。もう一回」


 水上はまた矢を引き絞る。

 起こりを察する。

 矢の放つ瞬間の、一瞬の緊張を察する。

 集中する。


 指に、その指を動かす腕の筋肉に、

 察しる。

 そして、掴んだ。



 起こりを無くす。

 全身の一致。

 突きを撃つときには、すでに全身が無数の動きを一つにする。

 無数を一致させる。

 



「「やればできるじゃないの」」


 二人の師匠の声が、道場にこだました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ