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【第二話】私に妹はおりませんが。(3/3)

ナレーションざまぁの予定でしたが、回想によるダイジェストざまぁでお送りします。


 それから数ヶ月後。


 フリーデリケとイルゼは、再び例のガゼボで向かい合っていた。あの時とは違い、イルゼの顔には明るい笑顔が浮かんでいる。


「アイゼンハルト様、この度はありがとうございました」


 あの後、イルゼはリヒテンシュタイン家の茶会で、ラインフェルズ公爵夫人への売り込みを成功させた。


 不当に利益を着服していたことが露呈したバルクマン侯爵家お抱えの商会は、マイヤー領の果物を気に入っていた高位貴族の顰蹙を買い、店を畳むこととなった。

 信用を失ったバルクマン侯爵家は、取引先から次々と契約を切られた挙句、「商会が勝手にやったこと」と言い逃れをしようとしたため、「飼い犬の管理すら満足にできぬ家」とさらに遠巻きにされるようになった。


 バルクマン侯爵令息ディートリヒは、学園で元婚約者となったイルゼを見つけると、公衆の面前で怒鳴りつけるという暴挙に出た。


「婚約者を見捨てるとは薄情な女だ」

「今まで散々助けてやった恩を返せ」

「お前のような女に次の嫁ぎ先が見つかると思うか」

「誇り高き侯爵家出身である俺が、子爵家なんぞに婿入りして当主になってやろうと言っているのだ」


 この期に及んで謝罪すらなく高圧的な態度を取り続けるバルクマン侯爵令息に、「あなたと結婚するくらいなら修道院へ行きます!」と言い放つとともに、華麗な平手打ちをお見舞いしたイルゼの勇姿はフリーデリケの記憶に新しい。


 フリーデリケは向かいのイルゼに目を向けた。


「礼には及びません。隣領の騒動は我が家にとっても無視できない事柄ですので」

「ですが、マイヤー領とアイゼンハルト領の間には山──」


 イルゼは何かに気が付いたかのように目を見開くと、「ふふっ」と小さく笑い始めた。


「どうかされましたか」

「いえ! あの、ご迷惑でなければイルゼとお呼びください」

「わかりました、イルゼ様。(わたくし)のことはフリーデリケと」


 フリーデリケの視界に映ったのは、喜びを隠しきれないイルゼの輝いた瞳であった。


「はい! フリーデリケ様!」



「えっと、隣の領地が貧しくなると難民や悪い奴がアイゼンハルト領にまで流れ込んでくる、ってこと?」

「はい、そうです。カール様」


 この日、フリーデリケは己の婚約者であるカールに、事の顛末とアイゼンハルト近辺の地理について教えていた。


「あれ、輸送するのにアイゼンハルト領を通ってもらうのじゃダメだったのか?」

「良い気付きです。しかしながら、マイヤー領との領境には険しい山岳地帯が──」


 山岳地帯。そう、山岳地帯があるのだ。

 とても人の足で越えられるものではない。

 もちろん、難民や盗賊であっても。


「フリーデリケ?」

「失礼しました。山岳地帯があるためマイヤー領から直接我が領へ至ることはできません」


 またたく間に()()()()()()()フリーデリケは迷いなく続ける。


「難民や盗賊は直接我が領へ入り込めないとはいえ、別の領を経由して付近一帯の治安が不安定になる恐れがあります」

「そうなのかぁ」


 カールは神妙な面持ちで頷いているが、これまでの話をどこまで理解できているかには疑問が残る。

 集中の切れたカールが突然思い出したように声をあげた。


「あ、そういえば! フリーデリケに妹っていたか?」

「妹、ですか。おりません」

「だよなぁ」


 女性の親族は皆年上であるし、この学園に在籍している貴族令嬢で同名の者はいないとフリーデリケは記憶している。

 一体どこからの情報なのかという問いへの答えは、すぐにカールからもたらされた。


「この間『フリーデリケお姉様が』って話をしてる令嬢たちがいたんだ。てっきり僕が忘れてるのかなって」


 日頃からカールの疑問に淀みなく答えるフリーデリケであっても、この謎には答えを見つけられなかった。


「それは……不可解ですね」

「だろう?」



イルゼ:バチンッ!! あなたと結婚するくらいなら修道院へ行きます!!

フリーデリケ:(本人無自覚後方腕組み姉貴面)

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