前へ目次 次へ 8/17 名を呼ぶな 古い神殿の奥には、死者の真名を三度呼べば、その魂を現世に引き戻せる儀式が残されていた。 騎士のヴァインは戦場で逝った親友の名を、灯火の前で、二度呼んだ。 揺れる炎の中に、懐かしい顔が見えた気がした。 しかし三度目の言葉を口にしようとした瞬間、ヴァインは止まった。 「お前はもう、ここには戻りたくないだろう」 静寂だけが答えた。 ヴァインは儀式書を炎に投じ、深く頭を垂れた。 翌朝、神殿の外には柔らかな春の風が吹いていた。