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土の声
転移してすぐ、私は畑の前で途方に暮れた。
ここは魔法で作物を育てる世界だった。
呪文一つで種を蒔き、術式一つで雨を降らす。
でも今年は魔力の泉が枯れ、村は飢えかけていた。
「この世界の魔法、全部使えないのか」
村長がため息をついた。
私は元の世界で、農業高校を出ていた。
大した知識ではないと思っていた。
「土を耕して、堆肥を作って、水を引いてみましょう」
村人たちは苦笑した。
「そんな原始的な方法で育つはずがない」
私は黙って作業を始めた。
毎朝、日が出る前に畑へ行った。
土の状態を見て、水の量を変えた。
一株ずつ手で草を抜いた。
三か月後、村の畑は緑に満ちていた。
村長は信じられないという顔をしていた。
「なぜ魔法なしで育ったんだ」
「土は嘘をつかないからです。手間をかけた分だけ、応えてくれる」
翌年は村人たちが自分で土を耕していた。
力がないときほど、基本に戻れ。
異世界で学んだのは、そんな当たり前のことだった。




