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盾の意味
私が騎士団に入って三十年が経つ。
引退の前夜、若い隊士から聞かれた。
「先輩はどうして一度も剣を抜かなかったのに、最強の騎士と呼ばれるんですか」
正直、困った質問だった。
私は生涯で三十回以上の戦場に立った。
だが剣を使ったのは、一度きりだ。
「騎士の仕事は何だと思う?」
私はそう返した。
「敵を倒すことです」
若い隊士はすぐにそう答えた。
私は首を横に振った。
「違う。守ることだ。守れれば、剣は要らない」
若者は黙った。
かつての私の師も同じことを言っていた。
当時の私には意味が分からなかった。
しかし、三十年で気づいた。
剣を抜く騎士は恐怖を与える。
盾を持つ騎士は信頼を与える。
どちらが長く民のそばにいられるかは、言うまでもない。
翌朝、私は団章の刻まれた盾を彼の手に渡した。
重さを感じたのか、若者の顔が少し変わった。
誇りとは、いくつの命を奪ったかではない。
いくつの命を守り続けたか、だ。




