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百年の桜、等価の代償
百年の桜
死ねない体になった老騎士が、かつて守ろうとした村を百年後に訪れた。
知った顔は一つもない。
石畳も、酒場の看板も、子供たちの笑い声も、すべてが別の時代のものだった。
それでも、広場の隅に植えた桜だけは、幹を太くして立ち続けていた。
朽ちかけた指でそっと触れると、樹皮のざらつきが懐かしかった。
こんなにも長く、ここにいたのだと、彼は初めて自分の孤独の深さを知った。
腐りかけた瞳から、一粒だけ、涙が落ちた。
等価の代償
宮廷魔術師は、瀕死の王女を救うために禁術を使った。
一命と引き換えに、一命を繋ぐ。
それが等価だと、古い魔法書には書かれていた。
目を閉じ、最後の詠唱を終えた瞬間、彼の髪がひと夜で白く染まった。
王女は翌朝、静かに目を開けた。
「なぜそんな顔をしているの?」と彼女は尋ねた。
深い皺の刻まれた顔で、魔術師は穏やかに笑った。
「少し老けただけです」




