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炎の背中で
竜が逝く直前、騎士に何を伝えたかの話。
私が竜騎士になって十二年目、相棒のカルドは空で墜ちた。
魔物の群れを蹴散らして帰投する途中、一本の毒矢がその翼の付け根を貫いた。
制御を失ったカルドは、誰もいない原野に降りるしかなかった。
着地したとき、カルドはもう身動きができなかった。
私は甲冑のまま地面に座り込み、その首に額を押し当てた。
カルドが低く鳴いた。
炎ではなく、温かい息だった。
私は十二年間、そのとき初めて泣いた。
騎士が竜の前で泣くなど、訓練所では誰も教えてくれなかった。
カルドの目が私をじっと見ていた。
大きく、静かな、揺れない目だった。
竜が言葉を持たないのは知っている。
それでも私には分かった。
「よかった」と言っていた。
お前が生きていてよかった、と。
私はその後、新しい竜に乗った。
うまく飛べる。
でも今でも飛び上がる瞬間、あの炎の背中の温もりを思い出す。
命を預け合う相手というのは、一生に一頭しかいない。
そう教えてくれたのが、カルドだった。




