報告と吟味
「では、聖女エルネスタにおかしなところは見られなかったと?」
俺たちの報告を聞いたマリエルはしばらく口を閉ざしていたが、やがてそう言った。
「はい。幾度かの神託がありましたが、不穏な言葉は一度も出ておりませんでした。私たちを欺くため……と考えることも可能でしょうが」
少なくとも自分たちにはそう見えなかった、とセラフィーネは暗に言っている。
「イスタロテ達も姿を見せることはなく、勝てないと悟り諦めたのかと」
「バージルも大いに活躍したようだな」
「い、いえ……私はたまたま――」
俺の言葉をマリエルが片手をあげて遮る。
「過剰な謙遜は不敬だぞ、バージル。セラフィーネは、お前がいなければ聖女が拐われていたかもしれないと言っている。騎士団長の眼は節穴ではない」
マリエルは「よくやった」と付け加えると、セラフィーネがこちらを見て微笑んだ。
セラフィーネが俺を気にかけてくれているのは周知の事実だが、それにしてもマリエルはセラフィーネを評価している。
俺の想像の王様は、もっと独善的で臣下であっても信じようとしない冷酷な人物だった。
でも、セラフィーネとマリエルの間には、きっと俺も想像の付かないような強い絆があるのだ。
「これは……セラフィーネの提案も真面目に考えねばならんな」
女王は髪を耳にかけると、細い腕を組む。
それによって華奢さに不相応な胸が持ち上げられ、さらに存在感を増す。
視線が釘付けになってしまった。
気付いたら俺が目を逸らそうとすると、マリエルと目が合う。
彼女は意地悪そうに、しかし期待しているように目を細めた。
無意識のうちに、俺はこんな想像をしてしまった。
マリエルとエルネスタは共に暴力的な武器を有している。
サイズという面で言えばエルネスタが圧勝。
なんなら、この世でエルネスタ以上のモノを持つ人間がいるように思えない。
他方で、意外性という視点ではマリエルに軍配が上がるだろう。
エルネスタは全体的に肉付きが良く、胸が大きいのも自然ではある。聖女をやっているのは不自然だが。
対してマリエルは細い。少し力をこめるだけで折れてしまいそうな程だ。
そんな彼女が、どうしてここまで胸を栄養を貯めることができたのか検討もつかない。
そして、もし、彼女達に両側から挟まれれば。
男の理性など紙屑のように消し飛んでしまうことは想像に難くなかった。
起こりえない未来だと理解しているが妄想してしまった。
未だに神殿での影響が残っているのだろうか。
「まぁ、おいおいな。バージルはどうだ。気になったことはなかったか?」
「気になったこと、ですか……」
大まかなことはセラフィーネとリーネットが伝えてくれているし、俺の出る幕などないように思う。
だが、何というかもっと庶民的な視点が求められているのかも。
「ええと……空気というか、香を焚いているようだったんですが、それが妙な感覚を引き起こすくらいですね」
「妙な……ふむ、ひとまず全員、数日の休息を取るがいい。身体に異常がなければ、今回の任務は完了だ」
「はっ!」
セラフィーネが声を張る。
俺の報告は庶民的過ぎたようで少し恥ずかしく思ってしまう。
「よし、それではまた数日後に、な」
そう言ったマリエルの声には安心が多分に含まれているように感じた。
彼女自身も、きっと国を導いていけるか不安だったのだ。
自分では自信があっても、抜けなどない完璧な作戦を持っているとしても、誰かに「綻びがある」と言われれば迷いが生まれる。
その相手が神の声を聞けるのなら尚更だ。
もしかすると、俺たちは中々に良い仕事をしたのかもしれない。
リーネットも昇進してもらえたし、今後も友好的な関係を築くことができるかも。
俺たちはマリエルに挨拶を済ませると、城下にある自宅へと戻ることにした。
エルネスタがイスタロテに拐われたという報せが届いたのは、それから二日後のことだった。
みなさんはマリエル派ですか?エルネスタ派ですか?
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