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解雇勇者の小さな英雄譚  作者: 月龜裕太
第一章 解雇勇者の旅のはじまり
3/3

03 マインと仲間たち 前編

長くなりそうなので前半と後半に分けます。

後編は一週間以内には投稿できそうです。

 朝、陽の光で起きると、僕は宿の床に倒れ込んでいた。

状態を起こすと酷い頭痛が頭を支配したが、それ以上に目の前の混沌に呆然とした。

 【魔法収納(アイテムボックス)】に入っていたであろう宝具や魔道具、

衣類や食料が四方八方に広がっており、簡素なテーブルと椅子の周りには

空の酒瓶が大量に転がっていた。

どうやって帰ってきたのかは覚えてないが、道中は散々だったことが窺える。


 僕はがんがんと鳴る頭を抑えながら片付けを始める。

魔法収納(アイテムボックス)】に魔道具などを戻して、酒瓶は共同のゴミ捨て場に纏めて置いた。



 全ての作業が終わり一息ついていると、懐に入れていた伝達の魔道具が光を放ちだした。

僕は魔道具の魔石部分に魔力を流し、仲間と連絡を繋げる。

どうやらパーティメンバー全員が王都に集まったらしい。

集合場所を指示されたのでそこに向かうために宿を引き払い、指示された場所である高級酒場に向かった。


目的地である酒場は上流階級や商人の取引の場としてよく使われており、完全個室で防音の魔道具も完備の、所謂密談に最適な場所で、マイン含む勇者パーティも時々使う酒場であった。


 宿から暫く歩き、王都の高級店が並ぶ商店街の入口の方にその店はある。

僕は王都の賑わう街をすり抜けるように移動し、あっという間に店にたどり着いた。


 僕は大木から切り取ったであろう重厚な一枚板の扉を引く。

見た目とは裏腹に滑らかに開いた扉をくぐると、あちこちに配置された魔道具の照明が目に映る。

魔石でできた照明は平民の給金一年分もする。それがこんなにたくさんあるのだ。

小市民である僕はこの景色を見るだけで飛び上がりそうになる。


(この光景はいつ見ても慣れないな。)


 そう思いながら受付の方へ向かうと、受付の壮年の男に案内されるのでそれに付き従って奥の個室に向かう。

個室と言っても完全に密室というわけでもなく、三方が壁に囲まれていて、廊下に面するほうは厚いカーテンで仕切られている、という構造であった。


 廊下を少し歩いたところにある部屋で受付の男が止まり、カーテンを開ける。

僕は彼に会釈をした後、部屋に一歩踏み出す。

一瞬、視界がぼやけ、防音の魔道具による抵抗を感じる。

瞬きをすると、目の前には椅子に座ったパーティメンバーたちが椅子を囲んでいた。


「久しぶりね!急に集まるって言われてびっくりしちゃったわ!」


開口一番に口を開いたのは、パーティの魔術師で怪我をした張本人でもある、魔術師のイーゼルだった。

彼女の揺れる金髪と輝く青い瞳が僕を写した。


「ごめんね、みんな。けど大事なことだから直接伝えなきゃって思ったんだ。」


僕の神妙な面持ちに仲間内の空気が締まった。


「まあ、取り敢えず座ろう。」

落ち着いた声でそう言うのはパーティの僧侶であるカミーユだった。

いつもは騒がしい彼も僕の雰囲気を察してか少しおとなしくなる。


「どうする、先に話すか?」

猫獣人で軽戦士のフィオナが僕に問う。


「いや、ちょうどお昼時だし食事でも摂りながら話すよ。」

きっと解雇されたことを先に話したら食事どころではなくなる。そうしたらこの店にも迷惑がかかる。

特に激情家のイーゼルは激昂して何をしでかすか分からない。が、腹を満たせば少しは大人しくなるだろう。

そう思って僕は答えた。


「分かったわ、私もうお腹ぺこぺこなの!」

僕が座るとイーゼルがメニュー表を手に取って渡してくれた。

僕たちは適当なものを見繕って魔法紙に記入する。すると、記入した文字が柔らかく光を放った。

厨房に対応する魔道具があり、それに書いた情報が伝わったのだ。


 注文し終えた僕らは、会わなかった期間の話をする。

主に話を回していたのはフィオナだった。

獣人特有の勘が特に強い彼女は、きっと僕にとって良くない報せがあったとわかっているようだった。


 少しすると部屋の中にあった鈴がチリンと鳴る。

食事が届いたらしい。

部屋の出入り口の前に行くと、食事と食器一式が載った小型のワゴンがウェイトレスによって運ばれてきた。

一通り配膳し終えるとウェイトレスが退出する。

僕らは居住まいを正して、食事に手をつけた。


 イーゼルを除いて、ぼくらは黙々と食事を進める。

イーゼルは魔王軍四天王の呪いを受けて専門の治癒師に治療してもらったばかりのはずだったが、

それが嘘だったかのように通常どおり、いや、いつもよりも元気に話していた。

彼女はひっきりなしにおしゃべりしながらもカトラリーを持つ手は止めず、

驚くほどのスピードで大量に注文した食事を片付けていく。


イーゼルがヴェルダンのステーキを食べ終えたタイミングで見計らったようにカミーユが僕に声をかけた。


「マイン、何があったか聞かせてくれないか?」


「そうだな。そろそろ話すべきだったよ。」

僕は白身魚の香草焼きを食べていた手を止め、皆の方を見る。


ひと呼吸おき、ゆっくりと言葉を紡ぐ。


「僕は勇者を解雇された。」



読んでくださりありがとうございました。

このお話は学校のつまらない授業のときに書いてるので更新頻度が遅くなりがちです。

あたたかく受け入れてくださると嬉しいです。

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