幸せの形
蓮は階段を下りて、塔の外に出た。少し離れたところで、華とウィリが待っている。
「おかえり、お姉ちゃん」
「ただいま、華」
姉妹は手を繋いで、笑いあった。ウィリがジゼルと目を合わせて、同時に頷く。
「さあ、帰ろう。私たちの家に」
蓮が声をかけて、4人はゆっくりと歩きだした。
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帝国の崩壊の余波も、光の壁に阻まれて、島に届くことはない。4人はようやく、望み通りの穏やかな暮らしを送ることができた。大きな事件も起こらず、時は過ぎていく。蓮と華が大人になる頃、セルフォスからの通達が届いて、ジゼルの父は帰国した。
「メレディスさんが、王様になったんじゃないかしら」
蓮はそう語っていた。
「オルテンデがエピナル湖から手を引いたから、セルフォス側も湖に人を置き続けることができなくなったんだと思うわ」
その推測は、正しかったのだろう。その後、石の塔は利用されることもなく、朽ちていった。それ以降、湖に人が訪れることはなく、更に長い時が過ぎていった。
――――
年月は、誰にとっても平等に過ぎていく。オルテンデの王となったメレディスは、瞬く間に領土を広げていった。平和を尊ぶセルフォスは、オルテンデの動向に目を光らせていた。だが、メレディスに子が産まれてから、全ては変わっていった。王位を継いだ2代目は、領土を拡大することよりも国を栄えさせることに執心し、セルフォスの警戒も和らいだ。やがて、セルフォスの王が代替わりしたのをきっかけに、オルテンデの姫がセルフォスに嫁いだ。こうして両国の緊張は緩和され、大陸は大いに栄えた。
「これも全部、聖女様のおかげだよ。あの方は今も湖に住んでいて、私たちを見守っていてくださるのさ」
あの会談の日。湖を訪れていた、多くの人々。彼らは子孫に、聖女の話を語って聞かせた。やがてそれは伝説として、長く語り伝えられていくこととなる。千年の時が経ち、会談の日を覚えている人々が亡くなっても、伝説はいつまでも残り続けた。
「エピナル湖には、島がある。そこは、聖女様に認められた者にしかたどり着けない、天国のような場所だとさ」
言い伝えを信じて、エピナル湖には、多くの人が訪れた。けれど誰も見つけられない。湖の中心にあるはずの島は、時が止まったような状態で、いつまでもそこに在り続けた。
「オルテンデを立て直した王様が、聖女様をお呼びになったんだと。彼は再び世界が乱れた時のために、その方法を書に記して、世界の何処かに隠したという」
伝説は語り伝えられるうちに変わっていく。真実と作り話の境目が曖昧になって、やがてそれは新しいおとぎ話として、長く人々に語り継がれることとなった。
長く続けた連載ですが、今度こそ本当に終わります。
好きな展開を書くために書き始めた物語でしたが、皆様に楽しんで頂けたのであれば、それに勝る喜びはありません。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
また、明日の午後6時からは、新しいお話が始まります。
流行りの婚約破棄もの(姉妹が打ち合わせて根回しした上で婚約破棄してハッピーエンド)か、流行りの転生もの(デスゲーム世界のモブに転生した女子が度胸と勘だけで生き残りを目指すハッピーエンド)のどちらかを連載するつもりです。
今後も、自分が書きたいもので、皆様に喜んでいただけるようなものを書けるように精進するつもりです。
どうぞ宜しくお願い致します。




