行き倒れ
神殿の内部から、水が湧き出している。水は扇状に流れ広がり、島の4分の1は水に浸かった。
「これから、どうしたらいいのかな」
|流れる水を見ながら、華が呟く。
「……そうだな。まずは、住める場所を確保すべきだ」
ジゼルが剣を抜いて、島に生えた細い木を斬った。それを何本も集めて、短剣で形を整える。横にした木と縦にした木を組み合わせて、植物のツルで縛る。華と蓮が見ている前で、ジゼルは手際良く、木製の家を建てた。木を組み合わせただけの家は、とても家と呼べるような見た目では無かったが、家に入っても隙間風を感じることはなかった。急造の建物のはずだが、強風が吹いても揺れもしない。これも、風魔法で行っていること、なのだろうか。蓮がジゼルにそう問いかけようとした時。どこかに行っていた橡蝠守が戻ってきた。
「アート? 何かあったの?」
ウィリに声をかけられた橡蝠守が、上空を旋回して、どこかを目指して飛んでいく。4人が追いかけると、橡蝠守は島と外の境にある光の壁の前で、低空飛行していた。橡蝠守の行動の理由は、すぐに分かった。光の壁の、すぐ近く。島の端の方に、人が倒れている。豪奢なドレスを着た、お姫様みたいな女の子。うつ伏せになったまま、動いていない。
「だ、大丈夫……?」
華が近づいて、声をかけた。少女は目を覚まさない。最悪の結末を想像して、姉妹の顔が青ざめる。ジゼルが華の横をすり抜けて、女の子の体に触れた。
「体が温かい。呼吸も正常だ。気絶しているだけだろう。……しかし、この服は……? 見たことのない意匠だ。異国から来た人間なのかもしれない」
「違う国の、お姫様……?」
「その可能性はある」
蓮と話しながら、ジゼルが女の子を抱き上げる。顔の化粧は水でほとんど流れていたが、それでも少女は美しかった。ウィリが訝しむような表情で言う。
「港があるし、交易もしてるんだから、服だけで判別がつくわけないでしょ。どうすんのよ、帝国から来てる子だったら」
「武器も鎧も持っていないことは確認済みだ。問題はない」
ジゼルの言葉を聞いたウィリは、不満そうな表情になって黙りこんだ。華が声をかける。
「心配してくれて、ありがとう。でも、倒れている人を放ってはおけないし……。助けたいの。ごめんね」
「……ま、そう言うわよね、カナは。レンさんも、そうなの?」
ウィリに質問された蓮が、頷くことで答えを返す。4人は見知らぬ少女を連れて、仮の宿に帰ることにしたのだった。




