翌日
「ねえ、お姉ちゃん」
敷布で体を包んで、向かい合う。お互いの顔を見ながら、2人寄り添って眠りにつく。その刹那。華が蓮に、問いかけた。
「ジゼルさんは、ステータスとかスキルのこと、知らないって言ったよね。でも、私たちより大人なのに。旅に、慣れているみたいなのに。どうして、知らないのかな」
「……どうしてだろうね。この世界のことを知らないのは、私も同じだけど……。でも、もしかしたら。ステータスもスキルも、普通は見えない物なのかもしれないね」
「そうなんだ。それが見えるから、特別だって言われたのかな」
「そうかも。……でもさ、もしも私たちが特別なんだとしても。ジゼルさんが居なかったら、きっと逃げきれなかったと思う」
蓮の言葉に、華が頷く。
「そうだね。私たちは本当に、幸運だったんだ」
手を繋いで、笑って、目を閉じる。白い部屋には窓がない。夜になっても暗くなることは無いけれど、朝日が差しこむこともない。だから次に目を開けた時、2人はどれだけ時間が経ったのか分からなかった。けれど、熟睡した時特有の、頭の中に靄がかかったような感覚があったから。詳細な時間は分からなくても、朝になったことだけは確かだろうと思って。子供たちは敷布から這い出して、起き上がった。
「おはよう、2人とも」
先に置きていたジゼルが、朝食の準備をしている。昨日食べた物と同じ物が並べられている机に、姉妹は未だに夢見心地のままで、歩いていった。
「盥は無いからな、この布を代わりに使うと良い」
お湯を染み込ませてから絞った布を、ジゼルから渡される。それはまるで、喫茶店で稀に出てくることがあるおしぼりのような物だったから。姉妹はすぐに、その用途を理解した。温かい布で、顔を拭う。その布は、現代日本にあるタオルほど柔らかくは無かったけれど、寝起きの頭が覚醒するには十分だった。使い終わった布を横に置いて、用意された料理を食べる。全員が食べ終わったのを見計らって、ジゼルが後始末をして立ち上がった。姉妹もそれに倣って、歩き出す。白い部屋の入口には、扉はない。けれどジゼルは迷わずに、壁に向かって歩を進める。2人の子供はその後を追って、壁を通り抜けた。広い草原を、白い日差しが照らしている。草の匂いが、風に乗って届いてきた。黒土の道の端を、3人はゆっくりと歩いていく。そうしてしばらく歩いた頃、先の方に見えていた大きな山が、近づいてきた。
「ビルン山が見えてきたな。……今更だが、山登りに自信はあるか?」
ジゼルの問いに、双子は顔を見合わせて、同時に首を振った。
「そうか。いや、心配せずとも、心得のない者に無理を強いるつもりはない。ビルン山の麓には、過去に坑道だった洞窟がある。今は整備されて、通り抜けられるようになっているから、その道を通ることにしよう。追っ手に見つかる危険性はあるが、背に腹は代えられないからな」
ジゼルの言葉に、蓮と華が同意する。3人は洞窟を目指して、歩き出した。




