休日の誘い
今日は土曜日だったが、散歩以外では一歩も外に出なかった。陰キャってそういうもんだ。
アクティブな陰キャもいるとは思うが……でも数十分でも出ただけ十分だよね?
ネットサーフィンしたり、動画見たり、アニメ見たり、ゲームしたり……
パソコンさえあれば時間はいくらでもつぶせる。十分楽しいしね。
でも休日になにしてるかを聞かれてそう答えたらひかれるだろう。陰キャなんてそんなもんだ。
家の中でいつものリクと戯れていると携帯に通知が来た。見てみるとLIMEが来ているようだった。
『グループ招待するから入ってね!』
東城からいきなり強引なメッセージが届いたかと思うとすぐにグループ招待の通知がきた。
メンバーを確認するとすでに宇賀神と東城が入っていた。昨日の出来事があって気まずいのに……
繊細な俺にとってはやりづらいことこの上ない。
はぁ~。ため息をつきながらおとなしく参加ボタンを押した。
『やぁやぁ』
東城が軽く挨拶をする。
『で、なんかよう?』
何のためにメッセージを送ってきたのか。気まずいグループなんだ、早く要件を済ませたかった。
『用事がなくちゃ送っちゃダメなの!?初めての友達じゃない!』
ふざけてくる東城にピクピクした。続けて驚くべきメッセージが来た。
『昨日は楽しかった?』
東城がいきなり無神経に聞いた。
『結局直ぐ帰っちゃった』
『そっか。いかなくてよかったぁ』
なんなんだ、こいつは。俺たちをおちょくるためだけにグループを作ったのか?
『雨宮 昨日はごめんね……売り言葉に買い言葉ってか、つい言っちゃったってかんじ?本心じゃないんだよ。気分を悪くさせちゃってごめんなさい』
『別にいいよ。』
宇賀神にしろ、東城にしろ、素直にいい奴だと思うことはある。だが住む世界が違うと感じることもある。遊ばれてる可能性もあるわけだし、突き放したほうがいいんだろうか?
『明日暇?』
東城が聞いてきた。
『一応暇だけど』
基本的に年中暇だ。だから俺の場合は行きたいか、行きたくないかという問題なのだ。
だから暇かどうかじゃなく、先に要件を言って欲しかった。
『仲直りに遊びたいと思うんだけど……真琴は?』
『大丈夫……仲直りしよ?』
『じゃあ決まりね!』
遊びって……この2人がいたら俺だけ浮くじゃん……絶対いきたくねぇ……
『雨宮君 安心して!犬同伴だから!』
『まじか!絶対行く!』
犬という単語で180度意見が変わった。仕方ない。魅力が強すぎる。
『え!?犬同伴って私も……?』
『当たり前じゃん!二人の仲直りなんだから。犬同伴じゃないと雨宮君来てくれないよ!』
その通りだ。犬同伴じゃなければ俺は断っていたよ。少し間をおいて宇賀神が返してきた。
『わかった……』
『よし決まり!芝公園って知ってる?広いし地面に芝がひいてあるしちょうどいいと思うんだけど……』
『最高!』
『よかった!私と真琴は比較的近いから歩いて行けるけど、雨宮君は大丈夫?』
『大丈夫。犬のかごが乗せられる自転車あるから』
『さすがだね!じゃあ明日2時に公園にしたいんだけどいい?』
『わかった』
『大丈夫……』
『明日楽しみにしてるね!おやすみー』
こうしてメッセージのやり取りが終わったがその直後にひらめいた。ウカノカミさんを呼んだらいいんじゃないだろうか。ウカノカミさんもあまり犬を飼っている知り合いがいないみたいだったしな!犬たちに友達ができることはいいことなのだ。モモちゃんと出会ってほんとにそう思うようになった。
善は急げ。直ぐにお誘いのメールを送った。返信は即座に帰ったきたが、内容は用があっていけないとのことだった。残念だ……。リクはモモちゃんに会いたがっているだろうし、ウカノカミさんもかなりの犬好きだし、本当に残念だ。俺も彼女に会いたかったのに……。
明日は楽しみではあるが心配でもある。リクはあまり他の犬と仲良くなれないのだ。だから今までの他の犬と交流してこなかった。モモちゃんが特殊だった。
俺はリクに友達ができることを願いながら眠るのだった。