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昼食

 昼休みになり、いつも通り一人でコンビニで買ったおにぎりでも食べようとしている時だった。


「それだけ?」


 突然後ろから宇賀神が話しかけてきた。今日は徹底的に話しかけられるようだった。


「そうだけどなに?」


 今までの人生、女の子と碌に会話したことなんてなかったため、ぶっきらぼうに返してしまった。

 陰キャって女の子に慣れてないから仕方ないね。ましてや相手は美少女なわけだし。


「私のお弁当わけてあげようか?」

 

 宇賀神が俺の前の席の椅子に座りながら話しかけてきた。


「え!?いやいや大丈夫大丈夫」


「おにぎり一個じゃ足りなくない?いいから食べなって。最近太ってきたから痩せなきゃだし……」


 その体形で太ってきた……?いや、でも女の子は常に痩せたがっているだとかできるだけ痩せることが

正義だとかどっかのまとめサイトに書いてあった気がしないでもない。


「はい。あーん」


 俺が断ったにも関わらず、宇賀神は箸で卵焼きをつまんで食べさせようとしてきた。


「ほんとに大丈夫だから!」


 そう返してもなお、左手で落ちてもいいように皿をつくり右手の箸でつまんだ卵焼きを俺の口元に差し出してきた。俺はこの恥ずかしい状況を早く脱したい。かといってあきらめてくれる様子もない彼女に根負けした。箸に口がつかないよう細心の注意を払いながら差し出された卵焼きを食べた。


「うまい」


 恥ずかしがりながら、素直に感想を述べると彼女は笑顔になった。


「よかった。これ私の手作りなの」


 どや顔をしながら弁当を見せてきた。


「これって……全部ってこと?」


「少しだけ冷凍食品だけどあとは全部手作りだよ。前の日の残り物もあるけどそれも私作ってるし」


 このルックスに女子力も高いってモテないわけがない。それに自分の弁当を男に食べさせる小悪魔的要素。このあざといともいわれかねない行動に何人の男が落とされてきたのだろう。陰キャだけでなく陽キャさえも騙されてしまうだろう。だがこう言ったこともまとめサイトには書いてあるのさ!事前の情報さえあれば、騙されることもない。情強万歳!ありがとうネットの民よ!


「ふーっ……セーフぅ……」


 息を切らしながらダッシュでこちらに来たかと思うと俺たちの目の前で止まり、膝に手をついて肩で息をつきながら東城が言った。


「で、買えたの?」


 宇賀神に右手でグーポーズを作りながら言った。


「あたぼうよ!」


 ふぅー、と息を整えながら近くにある適当な椅子を俺の机に東城の手が乗る位置に置いた。俺から見て右手に来るように陣取り、座りながらビニール袋からパンを取り出して俺たちに見せてきた。


「へぇー。それが購買で一番人気の焼きそばパンねぇ……」


 宇賀神が軽い感じで言うと食い気味に東城が熱を込めていった。


「これは授業のチャイムが鳴った瞬間に購買部にダッシュで行ってもなお、あまりの人の多さに買うことができるかわからない超レアパンなの!もっと興味もってよ!ほら!ねぇ!」


 東城は宇賀神のほっぺたにビニールを被ったパンを押し付けながら言った。


「そんな反応みせるなら一口も上げないから」


 遠い目をしながら無言の宇賀神にむっとしながら、パンのビニールを破りながら言った。左手でショートだが少し長いサイドの髪の毛を耳にかけながら、パンを口に運んで食べると驚きの表情を浮かべた。


「おいっしい!リアクションの悪い真琴にはあげないけど雨宮君食べてみなよ」


 そういいながら自分が食べたパンの断面を見せながら、口元に差し出してきた。

本気かと内心焦った直後、宇賀神が身を乗り出しながら横から大きい口でパンにかぶりついた。


「あっ」


「あー!!!!」


 俺は小さく、東城は大声で反応したがそれを尻目に宇賀神はむしゃむしゃ食べる。


「……確かにおいしい」


 宇賀神は淡々と言った。東城は半分以上食べられ、残り少ないパンを見ながらうな垂れた。


「ダイエットしてたんじゃなかったの……?」


 下を見てシクシクと泣きマネをする東城に悪いことをしてしまったと反省したのか宇賀神は言った。


「代わりに私の弁当あげるから許して~」


 その後小言をぶつぶつと続ける東城とそれを受け入れながら謝り続ける宇賀神をおにぎりを食べながら黙って見続けた。昼休みが終了する10分ほど前にはそのやり取りもいったん落ち着き、唐突に東城が言った。


「あっ!そうだそうだ。LIME交換しよー。真琴も知りたいよね?」


「はい」


 東城が言うやいなや、宇賀神はQRコードを見せてきた。続いてこれ私のだからよろしくと東城も見せてきた。しかし俺の反応は鈍かった。


「いやだった……?」

 

 宇賀神は俺の反応を見ていった。そうじゃないんです。


「いや……じゃなけど……やり方がわからないんです」


 二人は目を点にした。どういうことかと意味を図りかねていた。


「やったことないからわからない……」


「携帯貸してくれる?」


 東城に言われ携帯を渡す。しかしLIMEの画面を見た後固まり、その様子に宇賀神も画面を見て固まった。


「……これは……機種変するときミスっちゃったとかだよね。アハハ……」


「……」


「この1はどうやって交換したの……?」


「メールにURL載せて登録したよ」


「へっ……へー。そうやってもできるんだ~……」


 フォローするが時すでに遅し。


 LIMEの友達が1人。しかもその一人が父。実質友達0。そんな反応にもなるよね。陰キャここに極まれり。


「よろしくねー。」

 

 直前の会話はなかったかのように言ってきた。

 交換してもお互い使うことはないだろうと思ったが俺の携帯の友達欄に宇賀神真琴、東城歩という2つの名前が追加され友達は3になった。


 2人は陽キャらしくアイコンの画像は自分の画像だった。


 もちろん俺はリクの画像。


「ダックスかわいい~。これがうちの子だよ!」


 東城はLIMEを閉じいろいろな写真を見せてきた。コーギーだった。


「プリけつかわいすぎる!触りてぇ!」


 セクハラみたいなことを言ってしまっていたが東城は気にする様子もなく答えた。


「でしょっ!真琴も見せてあげなよ」


「え……どうしようかな……」


 宇賀神は犬のこととなるとやたらドギマギするというか消極的というか……

飼ってはいるものの実は嫌いとか?でも東城が犬好きだっていってたしなぁ……


 ちょうどそのタイミングで昼休みのチャイムが鳴った。


「もうこんな時間かぁー」


「また今度っ!」


 東城はゆっくり、宇賀神は足早に自分の席に戻っていった。

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