カーストトップとカースト最下位
昨日は楽しかった。地味だけどかわいい女の子と接点を持てることはうれしいが、なにより犬好き同士話が盛り上がるし、一緒に散歩するのって楽しいなぁ。しみじみとそう思う。
やっぱ犬好きに悪い人はいないね!コミュ障だから今まで散歩してる時、同じように散歩してる人と会っても会釈するだけだった。でも話かけるのも有りだなと思った。そう思えるほどに犬好き同士、犬を飼っている者同士雑談するのは楽しかった。
モモちゃんの飼い主さんの名前はウカノカミさんというらしい。会ったときは恥ずかしくて聞けなかった。でもメールで感謝とまた散歩しましょうと誘うのと同時に聞いたら教えてくれた。気持ち悪がられたらどうしようと思ったけど勇気を出してよかったね。
学校が終わって帰ればリクといちゃつけるし、時間が合えばウカノカミさんとモモちゃんと散歩できるしうれしいなぁ~。クソみたいな学校が終われば天国が待ってるし、我慢我慢!
そう思いながら通学し、スマホを確認するとホームルーム10分前についてしまった。放課後に思いをはせてワクワクしてたせいか、はやくついてしまったよ。まぁ仕方ないか。そう思いながら教室に入ろうとした。
「雨宮っ!……その……おはよう……」
なぜか教室の入り口で待っていたかのような宇賀神がまたもや着崩した制服を調整しながら挨拶をしてきた。さすがに二日連続は慣れた。
「……おはよう……」
暗くそう返すと、宇賀神ははにかみながら笑った。
どういうつもりかわからなかったが、バカにされている感じはしなかった。
ただ、周りの視線が痛かった。カーストトップが最下位に話しかける。周りからそれを見たときにはバカにしている光景にみえるだろう。本人にその気がなくとも。そうすると不思議なことに他のカースト上位のやつらは集まってきて、下の方を馬鹿にし始めるのだ。
「なに真琴。こいつにかまってやってんの?陰キャ君が真琴に惚れちゃうよ?」
ウザがらみをしてきたDQNを強く止めようとはしない姿にやっぱな、そう思いながら無視して席に着こうとしようとしたとき、金髪ショートカットで宇賀神の親友の東城歩が止めに入った。宇賀神がいなければ圧倒的人気を誇っていただろうルックスの快活美少女である。
「かまってちゃんはそっち。真琴と雨宮君友達になったから挨拶しただけでしょ。ほら、散った散った」
東城のおかげでDQNどもは去っていった。
「真琴も悪気があったわけじゃないんだよ?強く止めるのが苦手なだけ。良くも悪くも空気読むからね」
東城がそう説明すると、宇賀神も悪そうに答えた。
「止めれなくてごめん……」
その様子に悪くは言えなかった。
「いや……大丈夫。」
「よしっ!じゃあ仲直り。これからはみんな友達ってことで!」
「はっ!?」
東城のムリヤリな提案に俺は狼狽した。
「友達に……なろ?」
宇賀神が袖を小さく掴みながら大きい瞳で俺を見つめる姿にノーと言えるはずはなかった。
カースト最下位の俺は、なぜかカーストトップとその親友と友達にならざるを得ない羽目になった。