ウカノカミ
7時ごろ公園に着けるよう家をでる。
「リク、また外行こう。疲れてないか?」
そう聞いてみると、尻尾を全力で振りながらリードを引っ張ってきた。どうやら全然大丈夫そうだ。
トコトコと全く疲れている様子もなく歩きはじめたリクについていくようにして歩きはじめた。
「お前体力あるな~。その足の短さだと結構動いてると思うんだけど、さすがは狩猟犬ってとこだな」
そんなことを話し、方向を誘導するように歩いていくとやがて公園についた。
どうやらウカノカミさんとモモちゃんはすでについているようだった。
いつも待たしてしまっているようで申し訳ない。
今日もジャージにメガネ、髪を後ろで束ねた地味めの格好だった。
「毎度遅くなって申し訳ありません……」
「いえいえ。私もさっき着いたところですから」
優しく返してくれた。リクはモモちゃんに会うと「あれ?さっきぶりじゃん。まあいいや。遊ぼうや」という感じで軽く匂いを嗅ぐだけで、モナカちゃんとして会った時ほどの興奮ではなかった。モモちゃんもまた「奇遇だねぇ」という感じで尻尾の振り方もブンブンというほどではなく、フリフリという感じだった。
モナカちゃんはモモちゃんだとしてもなぜ嘘をついたのか、ウカノカミさんと宇賀神はどういう関係なのかという疑問に頭をひねり黙っているとウカノカミさんが話しかけてきた。
「どうしました?」
「いや……。なんでもありません。とりあえず散歩しましょう!リクもモモちゃんも散歩したがってますよ!」
「そうですね。いきましょうか」
2人で歩きはじめる。リクとモモちゃんは仲良さそうに並んでその短い足を動かしていた。
自然とウカノカミさんとの距離も近づき緊張する。地味だけど美人だから仕方がない。
そもそもぼっちの俺は女の子に免疫があるわけじゃないが……。たまたま最近話す機会があるだけだ。
前は犬の雑談など犬関係のことをしゃべっていたが、今日はお互いのことを話すことにした。
がっつきすぎると気持ちがられるし、犬を出しに使ったと思われたくないためあくまでも自然に聞いた。
「ウカノカミさんは休日になにをやっているんですか?」
「え?そうですね……。私は散歩とかモモと外に出る時以外はインドア派なので全然家を出ないですね。ネットサーフィンとかテレビを見たりとかですかね……。家でできることは好きです。雨宮さんは?」
「全く同じですよ!インドア派でリクと以外全く外にでませんね。家でパソコンとかスマホいじったり漫画読んだり映画見たり、全く苦じゃないですね。時間ならいくらでもつぶせますよ!」
「わかります!もっと外に出た方が良いっていう人もいますけど、周りに気を使っちゃって楽しめなかったりして……あーもうひとりの方が気楽だーって思っちゃいますね。モモとは気楽に一緒に遊べますし」
「めっちゃわかります!SNSとかキラキラしてるやつを見ると住む世界違うなーって思います。リクにちょっかいだすとリクが離れるくらいしつこく絡むんですけど、怒ったりはしないですからね。リクは最後まで付き合ってくれる気楽な友達ですね。」
「そうですよね!SNSって誰に見られているんだろうとか、怖くないんだろうかとか、誰に向かって発信しているんだろうとか色々考えちゃいますよね!モモはかわいいし最高です!妹でもあり親友でもあります!」
「誰かと一緒にいたくないわけじゃないんですけど無理するくらいならいらないやって思っちゃうんですよね。そのせいか学校ではガチぼっちですよ」
ウカノカミさんと話が合い、思った以上に盛り上がった。お互いテンションが上がりながら話した。
ウカノカミさんは俺と似ている感じだし陰キャなのか? でもウカノカミさんがもし――
そう考えているときトーンダウンした様子で返してきた。
「そうですよね……。無理して付き合うくらいなら、って思う気持ちもわかります。けど怖くないですか?ひとりになったらどうしようとか、周りからどう思われているんだろうとか……。私は周りの目が怖いです。それだったら無理してでも、自分を押し殺してでも合わせようって思っちゃいます……」
ウカノカミさんが暗く話す様子から、人間関係に悩んでいるのかと思った。
美人なウカノカミさんと俺じゃ違うしなぁ……。でも悩みなんて人それぞれだしなぁ……。
アドバイスなんてできるはずもなかったが、前置きをしてから思うことを話した。
「俺とウカノカミさんじゃ違うし、ずっとぼっちだった俺の言葉に説得力なんてないと思うけど……。
仮に無理したとしてもいつかはわかってくれる人があらわれると思います。無理して人付き合いをしてたとしても全員が全員がそうじゃないかもしれない。無駄じゃないかもしれない。それに自分が変わるかもしれないし相手が変わるかもしれない。ぼっちでも無理しててもいつかはどうにかなるんじゃないかな?
っていうか俺はそう信じたいです。
……なにいってるかわかんないけどそう思います。わかりにくくてすいません」
取り留めのない、思っていることを長く話しただけだった。自分がそう願っているだけの話だった。
「そう……ですね……。全員と無理していたかっていうと……そうでもないかもしれません。中には無理をしなくても仲良くできる人がいたかもしれません……。でもやっぱり怖いです。今更ホントは無理してたって言う勇気がありません……」
暗くなったしまったウカノカミさんにモモちゃんが心配そうにくんくんとさせた鼻でつついた。
彼女はしゃがんでモモちゃんを撫でた。
それ以上俺は何も言えなくなってしまった。無責任なことは言いたくなかった。
その後はしばらく無言で散歩をした。
散歩が終わり、解散の空気が流れた時意を決して話しかけた。
「大丈夫です!俺もリクも友達ですから!今日はありがとうございました!」
勢いよくそういうと少し笑顔になってくれた。
「こちらこそありがとうございました。……また一緒に散歩してくれますか?」
「喜んで」
ウカノカミさんの顔を見ながら言った。俺は役に立てたかわからなかったが和やかな空気が戻っていた。
このやり取りをした後ウカノカミさんとモモちゃんは帰っていった。
俺は家に帰る道すがら、近くでみるとウカノカミさんと宇賀神の顔はやはりよく似ていたなと思った。
そう思いながら携帯を確認するとメッセージが届いていた。
公園に来る前に東城にメッセージを送っておいた。その返信がいつのまにか届いていたようだ。
やり取りの中でいじられたりはしたがなんとか疑問の答えを東城から知ることができた。
『真琴は1人っ子だよ』
携帯を見るとそう表示されていた。
俺はリクと帰りながらウカノカミさんが宇賀神であることを確信したのだった。




