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帰還

こんにちは。著者です。

今回で9話目となります。

「くぃぃぃ・・・。」



 しばらく座り込んでいると、シールの声が聞こえた。



「気が付いた?」



 ボクは立ち上がり、シールに近づき角に触れる。



(私が気を失っている間に、あの魔獣・・・ケイがやったのですか。)


「そうだよ。なんとか倒すことができたよ。」


(流石ケイですね。獣人の方は力強い方ばかりと聞きますが、ケイはその中でも特に強いほうなのでしょう。)


「そ、そんなことないと思うけどね・・・。」



 実際、ボクは他の獣人をしらないわけでして・・・。

 ともあれ、どうにか魔獣を倒すことができた。

 こうなったら早く村に帰って寝床に倒れこみたい。


 気が付けば、もう夕方になっていた。

 やけに長く感じた一日だ。



「シール、村に戻るにはどう行ったら良いのかな。ボクもうクタクタなんだけど・・・」


(では、私が村までの進路を指示しますね。)


「わかった。そういえば、この魔獣の死体ってこのままにしててもいいのかな。」


(本来なら、私の精霊の力で浄化をすれば問題無いのですが、今は力が使えません。ですので死体の処理は燃やすのが一番良いですね。死体を浄化せずに長時間放っておくと、魔獣の死体から魔蒸(まじょう)というのが出始めます。魔蒸は微量なら問題ありませんが、大量に散布されると辺りの自然を破壊していき、他の動物を魔獣に変えてしまいます。)


「そっか。じゃあ村までもって帰ったほうがいいね。」


(そうですね。ここでこれほどの大きさの魔獣を燃やすとなると、火事になりかねません。)



 シールとの会話で、魔獣を村まで持ち帰ることになった。

 魔獣の額に槍が刺さっているので、そのまま槍を取っ手代わりにし、肩に掲げる。



「もってみると、意外と軽いんだね。」



 ボクよりも一回り大きい魔獣だけど、意外と軽いことに驚く。

 そのまま、次はシールを脇に挟む形で掲げる。

 シールの角に触れれないため会話が出来ないが、シールの泣き声と顔の差す方に進むといった方針で、森を歩くことにした。



「それじゃ、案内よろしくね。」


「くぃぃ」



 短い返事は了解やOKのサインだ。


 これでやっと村に帰れる。

 追いかけ回されるのはもうこりごりだよ・・・。


 ボク、シール、動かなくなった魔獣・・・獣三匹が引っ付きながら移動することになった。


 歩いてる最中、地球にいた時にお団子の兄弟が歌ってた歌を思い出したのは内緒です。











 あれから2時間くらい歩いた。

 辺りはもう暗くなっている。

 ボク一人で歩いてると心細意けど、シールとの会話があるのであまり寂しくはなかった。

 会話といっても、ボクが質問してシールがイエスかノーで答えるといった簡単なものだけど。

 ボクからしたらこの異世界で知らないことのほうが多いので、どんな些細な質問にも答えてくれるのは助かる。

 シールの分かる範囲だけど、結構勉強になったと思う。



「あ、明かりが見えてきた!」


「くぃぃ」



 シールも明かりの方に向けて鳴いている。

 村の近くに着いたのだろう。

 ボクは小走りで、村の入り口まで近づいていった。



 村の入り口には村の住人達が数人集っていた。

 その中にルフトを見つけた。

 あちらもボクの方に気が付いたらしい。



「ケイ、今までどこにいってたんだ。」


「ごめんルフト。朝の狩りで迷惑かけちゃったことを謝ろうと思って小屋を出たんだけど、それから迷子になっちゃって・・・。」



 ルフトに今までのことを簡潔に話した。

 そして、脇に担いでいたシールを見せる。



「せ、精霊様?!」



 ルフトの声に、村人が騒ぎ出した。

 あれ、ボク何かまずいことしちゃったの?



「精霊様。ケイの言うことに間違いは無いのでしょうか。」


「くぃ くいぃぃ くぃっ。」


「そうでしたか・・・。すまないケイ。お前の言うことはどうやら本当のことのようだな。」



 ボク、あまり信用されてなかったのかな・・・

 まぁいいけど。



「どうなってるのかいまいちわかってないけど、ボク、悪いことはしてないよね・・・。」


「あぁ。ケイは精霊様を救ってくれたんだ。ケイが居なくなった後、森が騒がしくなって・・・少し疑ってしまった。わるかったな。」



 どうやら、ボクが一人で勝手に出歩いたのが警戒させる原因だったようだ。

 疑いも晴れたことだし、ルフトに魔獣を燃やして浄化してもらえるか聞いてみる。



「この魔獣さ、村で燃やしてくれないかな。下手なところで火を起こすと火事になっちゃうし。」


「わかった。燃やす準備をしよう。 それとこの後、ケイは長老に会ってくれないか。」


「でもボク、村には入れないんだよね。」


「そうだな・・・ちょっと待ってろ。」



 そういってルフトが村の奥に入っていく。

 待っている間に、ボクは近くにいた村の若い人に魔獣の死骸を渡すことにした。

 村人が若い男の人を集め始めたので「思ったよりも軽いですよ」と言ったが、村人は少し苦笑いをしながら数名で魔獣をヨロヨロと運んでいった。

 それをみたら少し申し訳なく思った。


(今のボクの「軽い」はあてにならないんだった・・・。)


 そんな事をを考えてるうちにルフトが帰ってきた。



「長老からのお許しを得た。ケイを村に招くとのことだ。精霊様と一緒についてきてくれ。」



 そう短く言い、長老の家に向かい始める。

 ボクもシールを抱えてルフトの後に付いて行く。


 村の中はあまり明るいとは言えず、松明や光る小石のようなものがランプ代わりに使われている程度だった。

 出歩いてる村人もランタンを持ち歩いているので、真っ暗という程ではない。

 


「ここだ。 ・・・・長老、お連れしました。」



 ルフトが一つの家の前で立ち止まり、そう言った。

 その言葉のすぐ後に「入っておいで」と聞こえた。長老の声だ。




 長老の家に入り、辺りを見渡してみる。

 仕切りの無い広がった部屋が一室だけだった。

 中央には焚き火が起こしてあり、それを囲む様に数人の村人がいた。

 部屋の一番奥、ボクの正面に長老が座っている。



 ルフトが入り口の隅で座る。

 どうしたらいいのか迷っていると長老から声が掛かる。



「ケイ、精霊様とこちらへ来て座っておくれ。」



 そう言われたので、ルフトから離れて焚き火の近くに行く。

 失礼します。と短く言い、隣にシールを下ろしてボクも座ることに。



「わし等はこの村の代表、のようなものじゃ。ケイが居なくなって皆心配をしとったところじゃ。」



 長老の話によると、ボクが居なくなったことで、村が騒いでいたらしい。



「すいません。勝手な真似をしてしまって。」


「精霊様を助けてくれたのじゃ。礼を言うのはわし等の方じゃよ。ここ最近、この辺りで魔獣が活発に活動していてな。実はその魔獣に対しても手を焼いていたんじゃ。」



 よかった。ボクのとった行動は、取り返しの付かないことを仕出かしたという訳ではないらしい。

 村に帰ってきた時の村人の反応が少し心に残ってたので不安だったのだけど、安心した。


 長老の感謝の言葉に続いて、回りにいた村人の代表?の方たちからもお礼をいわれた。



「ケイよ。村の掟で出入りさせれないのは話したとは思うが、本来の掟とはこう言ったものなんじゃよ。」




 長老が唐突に掟について話だした。




 村の掟

・外部からの者を村に入れるべからず

・精霊様を敬い、称えるべし

・他種族との交流は最低限にすべし

・森の加護の下、日々感謝の気持ちを忘れるべからず




 大体はこんな感じだった。他にもいくつかあったが、重要なのはこの四つだと長老が言っていた。

 村に入っちゃってますし、他種族とめちゃくちゃ交流しちゃってますけどいいんでしょうか・・・

 長老が良いって言ったんだし、いいんだよね?



「といった様に、ワシ等はこの掟を護り、他種族から離別して100年以上過ごしてきた。」


「なるほど・・・。ボクがここに居たら、掟を破ったことになりませんかね?」


「そうじゃの。部外者じゃったら、今までの掟を破ることになるの。」



 ですよね。

 やはり、夜が明けたと同時に追い出されたりするんだろうか。まぁそれでも別に困らないけどさ。

 そんな事をぼんやり考えてると



「そこでケイには、ワシ等の村の一人となってもらおうと思っておる。」


「・・・・・・ふぇ?」



 いきなりの事に、間抜けな返事をし、取り乱すボク。

 そんなボクを置いて、話がすすむ。



「ケイは異世界から来たと言ったの。未だに信じがたい話じゃが。そこで、身元がないのならワシ等の村の一人と扱っても問題無いじゃろうと思ってな。このまま部外者だからと村から追い出しては村の恥となるし、このことはここに居る全員が了承済みだ。精霊様からも許しを得ておる。」


「い、いつの間にっ?!」


「くぃっ くいぃぃ」



 シールが頷いてるって事はホントなんだろう。周りの住人もうんうんと頷いている。

 正直、傷ついた体で放り出されるよりかは全然良いのだが、いくつか思うところがある。

 まずはボクの考えを言っておいたほうがいいだろう。



「申し出はありがたいのですが、ボクの考えてることを一度、ここで話しても良いでしょうか。」


「そうじゃの。聞こう。」


「ボクはこの世界に来る前ですが友達と一緒にいました。その友達も、どうやらこの世界に飛ばされているようなのです。居場所まではわからないですが、ゆっくりとでも探そうと思っていました。ですので、村の一員として扱っていただけるのは非常にありがたい話ですが・・・その・・・都合の良い事を言いますが、怪我の治療をしていただけたら旅にでても良いのでしょうか・・・。」



 ボクの言葉で、村人が困ったような顔をしながら少し考え込んでいる。

 やっぱり都合の良いことだったよね。

 言った後なのでどうにもならないが、少し後悔をした。

 そして沈黙を破ったのは長老だった。



「・・・・。 かまわぬよ。」


『長老?!』



 周りの村人が揃って驚きの声を上げた。

 ボクも驚いてる。

 自分で言っておいてだけど、こんな都合の良い話が通ると思っていなかった。

 ボクはてっきり、お断りされて、明日には出て行くものだと・・・。


 しかし長老は笑いながらこう言った



「村の掟は話したじゃろう。その中に、『村で生涯を終わらせよ』とは掟には無い。ここにおる者は少し頭が固いので、この村の一人になるなら旅にでてはならぬと考えた者もおるじゃろう。だが、過去に村から旅に出た者もおることだし問題なかろう。ワシの意見に異論があるならここで申せ。」



 村人がしばらく考え、そして結果が出たらしい。

 次々と賛成の意思が飛んでくる。

 反対する人は居ない。



「あの・・・ いいんでしょうか?ボクはかなり自分勝手な事を言った自覚はあるんですが。」


「いいんじゃよ。その代わりと言っては何じゃが、傷が癒えるまではこの村に居ておくれ。しっかりと礼をさせてもらってから旅に出てもらいたいのじゃ。他の村や街に出向いた時に、ここの精霊人は義理や礼儀がないと言い回られるのも困るでな。」


「そんなこといいませんよっ!」



 慌てて否定したが、長老は少しニコリと表情をつくり「わかっておるよ」と小さく笑っていた。

 それにつられて周りも穏やかな雰囲気になる。


 ボクは無事に、村の一員として認められた・・・。 のでしょうか?

ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

無事9話を投稿することができました。


つたない表現や文ではございますが、これからもどうかよろしくお願いします。

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