第九十八話 王都そしてバスク子爵邸に到着
「「「「おー!」」」」
昼食後に街を出て数時間、俺達は夕方どころかお昼過ぎに王都に到着。
王都を囲む巨大な防壁を見て、シロとミケだけでなくフェアとレイアもかなりビックリしていた。
というか、俺もビックリしている。
バルガス公爵領の防壁もかなり大きかったけど、王都の防壁は明らかにサイズが違った。
「では、兵に到着を伝えてきます」
「うむ、よろしく頼む」
オリガさんが馬車から降りて、防壁の守備兵に話をしている。
すると、焦った様子の守備兵がこちらまで猛ダッシュでやってきた。
「え、エステル殿下、それにビアンカ殿下、お疲れ様でございます」
「うむ、よろしく頼む」
守備兵も、貴族が乗る様な豪華な馬車ではなくまさか幌馬車に王族が乗っているとは思わないよな。
馬車の中を見てエステル殿下とビアンカ殿下を確認したら、かなり驚いていた。
そして、俺達は多数の人が並ぶ門を避けて、豪華な馬車が並んでいる門も避けて、王族専用の門を通過する。
流石というか、貴族でさえ受ける簡易チェックすらなくノーパスで門を通過した。
流石はロイヤルクオリティだ。
「「「「おおー!」」」」
防壁を抜けると更にビックリ。
沢山の建物が立ち並び、多くの人が行き交っている。
そして、遠くには俺の想像よりも遥かに大きい城がドーンとそびえ立っていた。
シロとミケにフェアとレイアのテンションも、更に上がっていっている。
俺はというと、城の迫力に少し圧倒されていた。
そんな俺達の事も気にせずに、馬車は街を進んでいく。
やがて馬車は豪華な建物が立ち並んでいる高級住宅街エリアに入って行き、とある建物の敷地内に入っていった。
「ここがリンお姉ちゃんのお家なの?」
「そうよ、王都の屋敷よ。流石に領地の屋敷よりは小さいけどね」
「このお家も大きいよ!」
いやいやシロとミケの言う通り、この屋敷も十分豪邸ですよ。
流石は貴族の屋敷というだけあるな。
そして、馬車は玄関に到着。
俺は道中ずっと寝ていた従魔達を起こすけど、お昼寝タイムのコタローは起こすのは忍びないので抱っこ紐だ。
「エステル殿下とビアンカ殿下は、この後はどうするのですか?」
「後でこの屋敷に迎えがくるよ」
「恐らく夕方頃になるのじゃ」
ビアンカ殿下はともかくとして、エステル殿下もお姫様なんだよな。
王城から迎えが来るとか、やはり凄いな。
俺達は、侍従の案内で応接室に通された。
すると応接室の中では、二人の女性が楽しそうに紅茶を飲んでいた。
「あら、お帰りなさい」
「随分と到着が早かったわね」
髪色がとても似ている二人の女性を見て、特にエステル殿下がとんでもなく驚いた表情をしていた。
エステル殿下は、若干お姉さん的な女性をワナワナと指差していた。
「お、お、お母さん! 何でここに!」
え?
お母さん?
エステル殿下のお母さんという事は、国王陛下の妃でもあるフローラ様?
「エステル、私がここにいてはダメなのかな? 折角、エステルがお世話になった人にお礼を言おうとしたのにね」
おお、フローラ様は見た目はエステル殿下のお姉さんかと思ったけど、間違いなくエステル殿下の母親だ。
エステル殿下とは、迫力が余りにも違いすぎる。
立っていてはというので、俺達もソファーに座る事にした。
「サトーと申します。道中は皆様に大変お世話になりました。寝てしまっていますが、この子がコタローです」
「シロです」
「ミケです」
「ふ、フェア、です」
「レイア」
シロとミケはともかくとして、フェアとレイアはまだ少し人見知りをしているな。
俺の両側にくっつきながら、他の人に挨拶をしていた。
「話は聞いているかと思うけど、私がフローラよ。エステルとビアンカが、大変お世話になったわ」
フローラ様は綺麗な青色のセミロングヘアだけど、顔つきはエステル殿下にそっくりだ。
しかし、本当にフローラ様は若々しいな。
「そして、私はリリーナよ。ラルフ様の婚約者になるわ。そして、フローラ様とは親戚にあたるのよ」
「だからリリーナ様とフローラ様は、髪色と雰囲気が似ていたのですね」
「ええ、特徴的な髪色ですから。リンの事を、どうも有難うね」
リリーナ様は、たまたま実家に用事があって王都のバスク子爵家の屋敷に滞在していたという。
リリーナ様はリンさんの義姉になるのだが、昔からの知り合いなので本当の姉妹の様に仲が良いそうだ。




