第八十六話 作戦開始
そして夜になり、俺達はオース商会の物陰からワース商会の動向を見守ります。
俺達と一緒についてきた馬も、ニュッと物陰からワース商会を見つめています。
空の荷馬車が四台もワース商会の前に用意されていて、明らかに普通じゃないのが分かります。
因みに今夜の作戦は、こんな感じです。
オース商会から荷馬車が出たら、俺達は荷馬車の後を付いて行きます。
そして、荷馬車が拠点に着いたら、拠点とワース商会に一気に捜索しに入ります。
ワース商会には、ラルフ様が率いる部隊と俺もやりたいと立候補した馬二頭が参加します。
毎朝の魔法訓練や本日の巡回での実績を見て、ラルフ様も馬の参加は問題ないと太鼓判を押していた。
馬も、キチンとラルフ様の指示を聞くから任せろと言っていたと、シロとミケが通訳していた。
念の為に、馬には誰かが乗れる様に鞍がついています。
そして本命の闇組織の拠点には、リンさんをリーダーとして俺達と守備兵も参加します。
拠点が分かり次第、従魔達には拠点に潜入してもらって、拠点の中を荒らすだけ荒らしてもらいます。
テリー様は街の巡回をメインに行い、万が一闇組織のメンバーが何かをしても直ぐに対処出来る様にします。
そして屋敷では、エーファ様とサーシャさんが俺達が救出した誘拐された子ども達を受け入れる為の準備を進めています。
勿論、妹が誘拐されているエルシーも、エーファ様とサーシャさんと共に待機しています。
「しかし、今日フランソワが見つけた書類によって、こうも全員の士気が上がるとはのう」
「仕方ないですよ。書類に書いてある内容が内容でしたから」
フランソワが見つけた書類には、誘拐した子ども達を違法奴隷にして取引先の貴族に売ると書いてあったのだ。
幼気な子どもがアホな貴族のオモチャにさせるという、最悪な事になってしまう。
この非道な事実にバスク子爵家は勿論の事だが、作戦に参加する騎士や守備兵もかなり憤慨していた。
この違法奴隷の情報をビアンカ殿下が父親である国王陛下に連絡すると、陛下よりも王妃様達が激怒し王妃様自ら捜索対象の貴族の屋敷に乗り込むと言っているらしい。
ビアンカ殿下とエステル殿下に聞いてみると、現在の陛下の妃は三人で全員がエステル殿下の母親である元近衛騎士と同等の力を持っているという。
なので、陛下が必死の思いで王妃様達を止めたらしい。
因みに、この国では犯罪奴隷と戦争奴隷は存在するが、違法奴隷を扱った場合は重罪として処罰されるという事です。
「お、お兄ちゃん、ワース商会から誰か出てきたよ」
「馬車に乗り込んでいるよ」
俺がビアンカ殿下と話をしていたら、夜目が効くシロとミケがヒソヒソと話しかけてきた。
確かに馬車に誰かが乗った事を、俺を含めた全員が確認した。
そして、ワース商会に止めてあった馬車四台は、静かに夜の街を進み始めた。
「ラルフ様、俺達は馬車の後を追います。後はよろしくお願いします」
「うむ、こちらは任せよ」
俺達も行動開始するので、俺はワース商会を担当するラルフ様に小声で話しかけた。
「お馬さんも頑張ってね」
「悪い人をやっつけてね」
「「ブフゥ」」
シロとミケがこの場に残る馬に小声で話しかけると、馬も鳴き声が響かない様に鼻息で答えていた。
やっぱり、この馬達はめちゃくちゃ賢いな。
何にせよ、いよいよ作戦開始です。




