第六十四話 テントに侵入した残念なお姉様
ぺろぺろぺろ。
ちょんちょん。
うん?
なんだなんだ?
誰かが、俺の顔に何かをしているぞ。
えーっと、俺は確かマリリさんと監視を交代して、仮眠の為にテントに入っていたんだ。
ぺろぺろ、ぺろぺろ。
ちょんちょん、ちょんちょん。
うーん、眠いけど眠らせてくれなさそうなので、俺は思い切って起きる事に。
「「「「あ、起きた」」」」
目を開けると、リーフとシロとミケとタラちゃんのドアップが。
どうやら、俺の顔に色々していたのはこの四人だろう。
リーフは俺の魔力を吸っているのだろうが、他の三人はどうした?
いつも三人は遅くまで寝ているはずだ。
すると、三人はテントの隅を指差していた。
おや?
テントの隅で転がっているのは、もしかして?
「お兄ちゃん、あれ!」
「お姉ちゃんがいるの」
「蹴っ飛ばされたよ」
「ぐーぐー」
テントの隅で、ミノムシの様に毛布に包まっていたのはエステル殿下だった。
どうやらエステル殿下は、俺がテントに入った後に何かしらの理由で俺達のテントに入ってきたみたいだを
そして、エステル殿下は寝相の悪さを発揮して、シロとミケや従魔達が寝ているカゴを蹴っ飛ばした様だ。
よく見ると、エステル殿下の体の上でスライム達が跳ねて抗議していた。
エステル殿下は、スライム達の抗議など関係なく爆睡してる。
「はあ、仕方ない。エステル殿下は置いておいて、外に出るか」
「「「「はーい」」」」
俺達は、テントにエステル殿下を寝かせたままテントを出た。
「サトー、早いのう」
「テントの中に侵入者が現れまして」
「ははは、今日はサトーのテントに現れたか。エステルお姉様は、寝ぼけて別の部屋に行く事が良くある」
焚き火の近くにある横倒しにした木には、ビアンカ殿下が俺達の方を見ながら座っていた。
俺が理由を話すと、ビアンカ殿下は笑いながら俺達のテントを見ていた。
エステル殿下は、寝ぼけて他の人の部屋に入る事があるのか。
俺も部屋の施錠に十分注意しておこう。
朝食は、監視をしていたマリリさんが作ってくれた。
さすがメイドさん、とても美味しそうな料理を作っている。
俺にはとても無理な芸当だ。
他の人も、それぞれ準備をして焚き火の所に集まってきた。
そして、大トリが登場。
「うーん、良い匂いがするよ」
「「「あー、うん」」」
エステル殿下が、頭をぽりぽりとあくびをしながら俺のテントから出てきた。
エステル殿下の残念な姿を見て、全員がため息をついていた。
「おお、美味しそうなご飯だ。いただきます!」
そしてエステル殿下は、俺の横にどかりと座り込んでマリリさんから渡されたパンとスープを食べ始めた。
「いやあ、起きたらサトーのテントだったからびっくりしたよ。しかも誰もいなかったし」
「気持ち良さそうに寝ていたので、あえて起こさなかったんですよ」
「はは、ごめんごめん」
朝食をモリモリと食べながら、エステル殿下が謝ってきた。
まあ、シロとミケが蹴っ飛ばされて起こされた位で、他には被害がないのでよしとしておこう。
「とっても美味しいよ」
「ミケもお代わり」
シロとミケも、特に朝の事は気にせずにお代わりを貰っていた。
スライム達とタラちゃんも普通にご飯を食べていたし、特に気にしていなさそうだ。
じゅるじゅる、じゅるじゅる。
そしてリーフは、いつもの通りに俺の顔に張り付いて魔力を吸っていた。




