第六十三話 静かな夜中の会話
食事と後片付けも終わったので後は寝るだけなのだが、ここで檻に入っている盗賊の対策を強化する事になった。
「ここから出せー!」
「出しやがれー!」
「うーん、奴らは本当にうるさいわね」
盗賊達はラムネとプリンのコンビ魔法で静かになったかと思ったけど、復活してまたもや騒いでいるのだ。
エステル殿下も呆れながら、檻に入って騒いでいる盗賊を見ていた。
そこで、活躍したのがチョコです。
ズドーン。
「おお、高い壁だね」
「だいぶ静かになったね」
盗賊達がうるさいので、檻の周りを土魔法で作った土壁で覆う事にしたのだ。
土壁も五メートルはあろうかという高さなので、万が一檻を壊しても盗賊は逃げる事はできない。
盗賊達が騒ぐ声もかなり小さくなったので、これで安眠できます。
「では、お先に監視に入ります」
まだ周囲に盗賊や魔物がいるかもしれないので、交代で監視に入ります。
スライム達が何かあったら直ぐに起こすとアピールしていたのだが、ここは念には念を入れる事にした。
御者をするオリガさんとマリリさんに疲れを残さない為に、オリガさんが一番最初に監視に入りマリリさんが一番最後に監視に入ります。
流石にエステル殿下とビアンカ殿下に監視をさせる訳にはいかないしエルシーにも監視を頼めないので、夜間帯は俺とリンさんが交代で対応します。
「お兄ちゃん、何時くらいに起きるの?」
「うーん、ちょうど真夜中に起きる予定だよ」
「そうなんだ」
俺はシロとミケと一緒のテントで寝るのだが、何故かシロとミケが俺の寝袋に入ってくる。
いつも寝る時は俺とシロとミケは一緒なので、仕方ないかなと諦める事にした。
そして、アイテムボックスの中には、何故か魔導具式の目覚まし時計があったのだ。
しかも、音声付きとバイブレーションを選択できる優れ物だ。
シロとミケを起こす訳には行かないので、俺は目覚まし時計をバイブレーションモードにセットした。
よし、これで大丈夫。
「「くー、くー」」
シロとミケはいつの間にか寝息を立てていたので、俺も寝る事にした。
うーん、一人で夕食や野営の準備をしたからか思ったよりも疲れていて、俺はあっという間に眠ってしまった。
ブーブーブー。
ブーブーブー。
うん?
目覚まし時計のバイブレーションがなっている。
直ぐに起きて、リンさんと監視を交換しないと。
俺は目覚まし時計を止めて、頬を叩いて目を覚ました。
「「くー、くー」」
幸いにして、シロとミケは目覚まし時計のバイブレーションでは起きなかった。
俺は、シロとミケの寝相を直してからテントを出た。
「リンさん、お疲れ様です。交代します」
「あ、サトーさん。もうそんな時間なんですね」
リンさんは、焚き火に木を足しているところだった。
パチパチと焚き火から音がする中、俺とリンさんは横倒しになっている木に座って話を始めた。
「サトーさんが付いてきてくれて、本当に助かりました。やはり女性だけの旅ですと、エルシーさんの様な事も起きるので」
リンさんのいう事もよく分かる。
女性だけの旅だったら、複数人数でも盗賊に襲われる危険もある。
たまたまうちの女性陣が物凄く強いだけであって、他の女性が必ずしも強いわけではない。
「正直なところ、エルシーさんがたすかったのもたまたまでしょう。それでもエルシーさんがバスク子爵領へ向かっていたのには、きっと何かあるのでしょう」
流石に襲われていたという事もあって、女性陣はサリーさんにあまり質問はしていなかった。
俺もこっそりとサリーさんを鑑定したけど、悪い人ではない事は分かった。
自分の事が話せる様になるまで、そっとしておいであげようという結論になっている。
因みに盗賊も鑑定したけど闇組織とは全く関係ない人物で、賞金もかけられていない小物だった。
「先ずは、全員が無事にバスク子爵領へ着く事を考えましょう。それから、色々と考えましょうね」
「そうですね。そうします」
パチパチと焚き火の明かりと中からの音が響く以外は、暗闇と静寂に包まれていた。
何だか静かな時間だな。
リンさんは焚き火を見て、何かを考えている様子だった。
リンさんはとても真剣な表情だったので、俺はあえて何も話しかけなかった。
パチン。
焚き火の中から少し大きめの音がしたタイミングで、リンさんは静かに立ち上がった。
「サトーさん、私はテントに戻ります。後はよろしくお願いします」
「ええ、ゆっくり休んで下さい」
リンさんは俺にニコリとして、そしてテントに向かっていった。
リンさんの考えはまとまったかな?
俺はリンさんがテントに入るのを見送ってから、焚き火に木をくべてたのだった。




