第六十二話 野営の準備
気絶した盗賊を入れておく檻が必要なので、いちごとチョコが協力して檻を作った。
先ずはチョコが土を固めた即席の檻を作り、更にいちごが火魔法で檻を構成している土を焼き入れしたのだ。
「おお、カチンコチンだ!」
「凄く硬いよ!」
檻はシロとミケが叩いてもびくともしない。
この檻の中に、パンツとシャツ姿にされた盗賊をポンポンと入れていった。
勿論、盗賊の身につけていた服以外の装備は没収です。
これで盗賊は逃げる事は出来ないでしょう。
さて、次は襲われた女性の対応です。
全員で、毛布を羽織っている女性の所に集まります。
「皆さん、本当にありがとうございます。襲われた時は、もうダメかと思いました」
「うんうん、大変な目に遭っちゃったね。もう大丈夫だよ」
流石に女性がホッとして泣き出したので、エステル殿下が女性の事を抱きしめていた。
ここは襲われた女性の対応は女性陣に任せて、俺はテントの設営と夕食の準備を行う事にした。
俺とシロとミケが寝るテントの他に、女性陣が泊まる為の大型テントも設置する。
馬の世話も行わないといけないので、蹄とかのチェックをして生活魔法をして馬体を綺麗にする。
飼葉と水も用意して、これで馬の食事は完了。
俺達の料理は、温かい野菜スープにパンを軽く焼いて肉も焼いておこう。
というか、何で俺一人で全員分の野営準備をしないといけないのか。
女性陣に加えて、従魔までもが襲われた女性の側に集まっていたのだ。
俺は、全員が集まっている場所に歩いて行った。
「皆さん、夕飯の準備ができましたよ」
「「「あっ」」」
女性陣は、皆で楽しくお喋りをしていた。
そして、全員が俺の顔を見てやばいって顔になっていた。
うん、誰か俺が一人でずっと準備をしていた事に気がついて欲しかったよ。
「色々有難うございます。私はエルシーで十三歳です」
「ご丁寧にありがとうございます。私はサトーと言います」
襲われていた女性はエルシーと言っていた。
襲われていた時に来ていた服は修復不可能な程にビリビリにされてしまったので、体格が近いリンさんの服を借りて着ていた。
因みに、エルシーは女性陣とお喋りしていた時にお互いの自己紹介を済ませていた。
念の為にと、エルシーには王族や貴族の娘である事は隠して話したそうだ。
早速なので皆で夕食にしようとした所、外野が騒ぎ出した。
「コラー! 俺らにも何か食わせろ!」
「お前達だけずるいぞ」
「そうだそうだ!」
檻に入れた盗賊が、飯を食わせろと騒ぎ出したのだ。
こいつらに飯を食べさせる義理はないけど、どうしようかなと思ったら直ぐに動いたものがいた。
ぴょんぴょんぴょん。
「何だ? この小さなスライムは」
盗賊の入った檻に近づいたのは、ラムネとプリンだった。
盗賊も、自分達の前に現れた小さなスライムを不思議に思っていた。
ばしゃーん。
「ぶっ、冷たい。何をする!」
まずラムネが、檻の中に水魔法で作った巨大な水玉をぶっかけた。
盗賊はびしょびしょに濡れてしまい、水をぶっかけたラムネに向かって抗議をしてきた。
バリバリバリ。
「「「ギャー!」」」
そして、プリンが檻に向けて雷撃を放った。
檻の中はよく濡れているので、檻に入っている盗賊全員が雷撃を受けて悲鳴を上げていた。
うん、これはだいぶダメージがあっただろう。
盗賊は、檻の中でピクピクとして動けなくなっていた。
盗賊の様子を見て、ラムネとプリンは満足して俺達の所に戻ってきた。
「わあ、凄く強いですね」
「スラちゃん達は、とっても強いんだよ」
「この前も、大活躍したんだよ」
食事をしながら、エルシーはシロとミケとスライム達の強さを褒めていた。
ラムネとプリンだけでなく、他のスライム達もエルシーに向かって触手を振ってアピールしていた。
色々とあったけど、とりあえずひと段落です。




