第四十六話 歓迎の夕食
夜になり、アルス殿下とエステル殿下の歓迎も兼ねた夕食が開かれる事になった。
リンさん達は、出張所に帰っています。
事件の対応で遅くなったバルガス様も、無事に合流しています。
「ごほん、それではアルス殿下とエステル殿下の歓迎を込めた夕食を開く。あの、アルス殿下、ビアンカ殿下、本当によろしいのですか?」
「何も問題ない。自業自得だ」
「どうせ料理が出されれば、臭いで起きるのじゃ」
「ほへー」
魂が口から抜けた様な表情をしているエステル殿下をバルガス様が気にしていたが、アルス殿下とビアンカ殿下は無視する様に言った。
エステル殿下は夕食を食べたい一心でレポートを書き上げた様だが、久々の頭脳労働が相当応えた様だ。
因みに、レポートは商業ギルド経由で郵送の手続きが取られている。
そして、ビアンカ殿下の予想はぴたりと的中する事に。
「お、食事がきた様だ」
「おお、良い匂いがする!」
「「うわ、びっくりした」」
バルガス様が食事が来たと言った途端、エステル殿下が生き返ったのだ。
突然の覚醒に、シロとミケもびっくりしている。
うん、エステル殿下は残念な王女様で間違いない様だ。
とりあえず、夕食にしよう。
「ごほん、それでは乾杯としよう。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
バルガス様も少し苦笑しながら乾杯の音頭をとった。
「うーん、美味しいね」
「お肉美味しいよ」
「そうね、焼き加減が絶品だね」
食いしん坊のシロとミケは、同じく食いしん坊のエステル殿下とあっという間に仲良くなっていた。
しかし、エステル殿下は良く食べるなあ。
ちゃっかりとステーキのお代わりをしているぞ。
ちょっと呆れながらエステル殿下を見ていたら、アルス殿下とビアンカ殿下から声がかかった。
「サトー、すまんが学園に編入したらエステルの面倒を見てくれ。見て分かるが、エステルは自由人だ」
「サトーは面倒見が良い。しかし、エステルお姉様が悪い事をしたら、遠慮なく叱ってやってくれ」
「ど、努力してみます」
アルス殿下とビアンカ殿下がダブルで溜息をついている辺り、エステル殿下は王族の中でもかなりの問題児なのだろう。
とは言え、俺だってどこまでできるか分からないぞ。
「お兄ちゃん、魔力食べていい?」
「ああ、良いぞ」
夕食を食べ終えた所で、果物をちょこっと食べていたリーフが俺の所にやってきた。
俺がリーフに許可を出すと、リーフは俺の肩に座って首筋を舐め始めた。
「ぺろぺろぺろぺろ」
うん、とてもくすぐったいけどここは我慢しよう。
すると、エステル殿下が俺の所にやってきた。
どうもリーフが俺の魔力を吸収している事に興味を持った様だ。
「サトー、その妖精ちゃんは何をしているの?」
「リーフの事か? 俺の魔力を吸収しているらしいよ」
「ふーん、そうなんだ」
そしてエステル殿下は、リーフに声をかけていた。
「ねえ、リーフちゃん。お姉ちゃんの魔力も食べてみる?」
「うーん、お姉ちゃんの魔力は何だか不味そうだからいいや」
「なっ!」
「ぶっ」
「ぺろぺろぺろぺろ」
リーフはエステル殿下の顔を見た後、衝撃の一言を放って俺の魔力を食べ始めた。
びっくりしているエステル殿下を見て、アルス殿下が思わず吹き出していた。
「くくく。エステル、真面目な人間じゃないとダメだという事だ」
「もう、お兄ちゃん酷い。どうして私が真面目じゃないの?」
「課題を忘れる人間は真面目じゃないぞ」
「ぐぅ」
アルス殿下に言い負かされて、エステル殿下はぐうの音も出ない。
そして、アルス殿下のターンは続く。
「そして、フローラお母様からエステル宛に伝言がきているぞ」
「お母さんからの伝言って。えっ、マジですか?」
「大マジだ」
アルス殿下は、タブレット端末の様な物をエステル殿下に見せた。
エステル殿下は、内容を確認した瞬間顔が真っ青になった。
そして、テーブルの上に崩れ落ちていった。
「アルス殿下、一体何が書いてあったんですか?」
「どうもレポートが出ていない件が、王城にも伝わったらしい。私がレポートは郵送したと伝えたが、王城に帰ったらエステルの母親が説教すると連絡してきたのだ」
「こればかりはしょうがないですね。コッテリと絞られた方が、今後の為ですね」
内容が内容なだけに、テーブルの上に崩れ落ちているエステル殿下に同情するものはいなかった。




