第四十七話 怪盗タラちゃん参上
ぺろぺろぺろぺろ。
ぺろぺろぺろぺろ。
うん?
何だ何だ?
朝っぱらから、俺の顔を舐めている感触がある。
しかも複数箇所からだ。
流石に目を開けよう。
「ぺろぺろぺろぺろ」
「ぺろぺろぺろぺろ」
リーフは分かるのだが、タラちゃんやスライム達が俺の顔などを舐めていた。
リーフは分かるのだが、何故タラちゃんやスライム達も俺の顔を舐めているのだ?
「タラちゃん、一体をしているんだ?」
「リーフがサトーの魔力が美味しいと言っていたから、試してみたの。確かにとっても美味しいね」
俺は、カブトムシが集まる樹液か何かですか。
すると、タラちゃんがかなり怖い事を言い出した。
「サトーは魔力がとても多いから全く影響ないけど、普通の人だと魔力を吸い尽くされてミイラになるよ」
「おい、お前らはどれだけ魔力を吸収しているんだよ!」
タラちゃんや、朝から背筋がゾッとする話だぞ。
俺はリーフやタラちゃん達に、他の人の魔力を吸収するのは控えるのと、寝ている間に魔力を吸収するのは控えてと訴えたのだった。
今日は、タラちゃんとフランソワとホワイトが怪盗になって容疑者の部屋に侵入する。
正義の為なら、多少の悪も仕方ないという事なのか。
因みに、リンさん達は午後から屋敷に合流する事になっています。
「いやいや、我が屋敷で怪しい事をしているのだ。このくらいは全く問題ない」
おお、バルガス様もすっかりやる気になっている。
全く問題ないというお墨付きを貰ったので、早速実行しよう。
「じゃあ、行ってくるよ」
ターゲットが屋敷を出たのを確認したので、タラちゃんとフランソワとホワイトは屋根裏部屋からターゲットの部屋に侵入します。
ドアの下から紙が数枚出せるだけの隙間があるので、怪しい紙を見つけたらタラちゃん達にドア下から出してもらって、こちらの確認が終わったら元の位置に戻してもらう算段だ。
「流石に侵入してから書類を調べるのに、十分はかかりそうですよね」
「うむ、まともに仕事をする奴らなら、書類を探すのにその位はかかるじゃろう」
俺とビアンカ殿下は、そんな感じで書類が見つかる時間を予測していた。
しかし、そんな期待はあっさりと裏切られた。
すっ。
タラちゃん達がターゲットの部屋に侵入して、僅か三十秒でドアの下から書類が出てきたのだった。
すっ、すっ。
しかも一枚や二枚ではない。
何枚もの書類が出てきたのだ。
次から次へと出てくる書類に、一同唖然としていた。
「ある意味、重要書類の管理がなってませんね」
「うむ。事件が解決したら、改めて皆に周知するとしよう」
これには、バルガス様も苦笑するばかりだ。
是非とも、書類の扱いについて周知してもらおう。
そして、ドアの下から出てきた書類をアルス殿下とビアンカ殿下が例のタブレット端末みたいな魔導具で読み取っていく。
凄いな、あのタブレットみたいな魔導具には、スキャナーみたいな機能もあるのか。
読み取った書類は、すぐさまドア下の隙間から戻されていった。
「終わったよ!」
そして、僅か五分でタラちゃん達が俺達の元に戻ってきた。
あっという間の早業だな。
「無理矢理ドアを開けなくて良かったよ」
「変な魔導具がくっついていました」
「うむ、この作戦で正解だったか。フランソワ、ご苦労じゃった」
懸念していたドアに魔導具が付いているという予想は、現実だった。
慎重に対応して正解だったな。
「うーん、これは大事になるな」
「うむ、王都でも捜索が必要じゃな」
そして、アルス殿下とビアンカ殿下の表情が固い。
予想以上の大事件の予感がしてきた。
先ずは応接室に戻る事にした。
「「お帰り!」」
「「お帰りなさい」」
応接室には、スライム達とリーフと戯れているシロとミケにザシャとクレアの姿があった。
極力少人数で動く事にしたので、シロ達にはお留守番をしてもらった。
「やっぱり、お姉ちゃんの魔力は不味い」
「がーん」
そして、リーフからダメ出しされているエステル殿下も応接室にいてもらいました。
どちらかと言うと、戦力外って扱いになっています。
誰も文句は出ていません。
むしろ本人がスライム達と戯れたいと言い出したので、どうぞどうぞって感じだった。
「ちょっと情報を纏めるから、話はリン達がきてからだな」
「それまではスライムと戯れていて良いぞ」
「「「やったー!」」」
シロとミケに加えてエステル殿下も喜んでいるが、ここは気にしない事にしよう。
それよりも、大問題が起きているのだ。
「既に王城には連絡した。明日の朝、動きがあるそうだ」
「はあ、何とも言えないのじゃ」
「だが、これ以上被害を増やしてはならない」
「何とかしないといけませんね」
アルス殿下とビアンカ殿下に加えて、バルガス様もソファーにもたれて天を仰いでいた。
この事件のカラクリを知ってしまい、やるせない気持ちになったのだ。
しかし、俺達は動かないとならない。
「という事で、明日朝作戦を決行する」
「夕方には調査隊が到着する。調査隊は屋敷を捜索してもらう」
「騎士も動員をかける。奴らを逃さず捕縛するのだ」
リンさん達が来てから、作戦の話をした。
明日の早朝、例の宿に関係者が集まる事が判明した。
そこを奇襲して一網打尽にするのだ。
リンさん達にも協力してもらう事になった。
そして、ザシャとクレアも作戦に参加すると言ってきた。
「良いのか? 悲惨な場面に遭遇する可能性が高いぞ?」
「覚悟の上です」
「むしろ、私達が止めないといけません」
「そうか、なら妾からは何も言わん」
ザシャとクレアの決意は固かった。
自分達がバンを止めると思っているのだろう、膝の上で拳を握り締めていた。
ビアンカ殿下も、二人の決意を知って何も言わなかった。




