第十三話 襲撃事件の心当たり
ここで騎士がバルガス公爵様に話しかけてきた。
「お館様、出発の準備が整いました」
「うむ、直ぐに立とう」
「はっ」
ここにとどまれば、別の魔物に襲われる可能性がある。
バルガス公爵様の決断は早かった。
そして、バルガス公爵様とビアンカ王女殿下は俺の方を向いた。
「サトー殿、悪いが馬車に乗ってくれないか」
「ちと、話があるのでな」
恐らく、今回の襲撃の件について確認をしたいのだろう。
俺も話を聞きたいので、ちょうど良いタイミングだ。
「わーい、馬車だ!」
「凄い大きい!」
「あっ、こら!」
と、俺とバルガス公爵様とビアンカ王女殿下とで話をしている最中に、シロとミケがスライムを引き連れて馬車の中に入っていったぞ。
「申し訳ありません。馬車を見て二人ともはしゃいでいる様でして」
「いやいや、何も問題はないぞ。元気なお二人だ」
「うむ、兄は大変じゃのう」
「恐れ入ります」
うん、本当にバルガス公爵様とビアンカ王女殿下が良い人で助かった。
逆に俺の事を労って貰ったよ。
シロとミケには、後でキチンと言っておかないと。
「出発!」
全員の準備が整った所で、騎士様の合図で隊列は出発した。
夕方近いのもあってか、少し急いでいる様だった。
「サトー殿、無理を言って同乗してもらってすまないな。しかし、襲撃の事で確認しないとならないのだ」
「いえ、こういう事は早めに対応した方が良いです」
「うむ、サトーは話が早くて助かる」
馬車が進むと直ぐに、あまり大きくない声でバルガス公爵様とビアンカ王女殿下が俺に話しかけてきた。
周りに不審者がいるとは限らないし、俺も声は小さめで話そう。
「シロとミケも、小さな声で話そうな」
「「はーい」」
念の為にシロとミケにも小さい声でと話をしておいた。
シロとミケも小さな声で返事をして、スライム達も分かったと小さく跳ねていた。
「ほほ、微笑ましい光景ですな。では、まず簡単にサトー殿の事を教えてくれないか?」
「あ、はい。私は、田舎から冒険者を目指して街に出てきました。シロとミケも同様です。格闘術と魔法が使えます」
「うむ、この身分証は確かなものだ。サトーのいう事に間違いはないじゃろう」
アイテムボックスから俺の身分証を取り出して、バルガス公爵様とビアンカ王女殿下に渡した。
ビアンカ王女殿下が色々な角度から身分証を確認して、問題ないと返してくれた。
「そして、シロとミケは獣人の本能なのか危険を察知する事ができます。街道を歩いていたら、シロとミケが誰かが魔物に襲われていると走り出しました。後は、ご覧の通りになります」
「成程。では我々が助かったのは、シロとミケのお陰じゃな」
「「えへへ」」
シロとミケは、ビアンカ王女殿下に頭を撫でられてご満悦だ。
ビアンカ王女殿下も、笑顔でシロとミケの頭を撫でていた。
「それと、戦っている際に気になった事があります。ゴブリンを倒してオークが出現する迄に、何か魔力が動いた気配がありました」
「あ、それはシロも分かったよ」
「ミケも」
俺が戦いの最中に感じた違和感を伝えると、シロとミケも同意してきた。
やはり、あの違和感は間違いなかったんだ。
「うむ。その気配は妾も感じた。騎士隊長も感じていたから、間違いないだろう」
「複数人が魔力を感じたとなると、こちらの懸念も間違いないな」
ふと、ビアンカ王女殿下とバルガス公爵様が考え込んでしまった。
きっと、何か心当たりがあるのだろう。




