飛行機
溢れ零れる涙の雫を手で拭いながら宝石を追うため走った、きらきらと温かな光を出す宝石はまるで心配でもするかのようこちらをたまに振り向く、私が追いついて無ければ止まりついてきたらまた進む。
まるでルチルそのものであり、素っ気ない優しさがあまりにも似ていて涙はまた溢れかえる。
ゴッ!!
視界が不安定になったせいで少し出ていた岩に躓き転倒する。焦ったようにこちらに来る宝石が来たことでその岩の正体がわかった。
見たことも無い文字のような物が壁に掘られている、それを目で追えば三文字だけ見たことのある文字が見えた。それを指でなぞって言葉を溢す。
「a・u・r・a」
それは、よくルチルが使っていた文字だった。昔、それが気になって聞いたところ私の名前の文字を教えて貰った事があった、しかしこの壁に書かれている文字は決してルチルの物じゃ無かった、ルチルの場合もう少し角張ってる気がする。
すると急かすように宝石はチカチカと点滅する、そうだ思い出に浸っている場合じゃないことに今更気づき立ち上がり走る。
だけど少しだけあの文字が気になって後ろをちらりと盗み見る。
アレには何が書いてあったのだろうか…。
走り続けていると壁に開いた小さな穴に気付いた、そこから溢れる太陽の光に希望が差す。体制を低くしてその穴から体を上手く動かして外に出ればそこは島で一番上にある森林だった。
そこでやっとあの洞窟は昔ルチルの友人が言っていた少年兵達の秘密の抜け道だとわかった。
だが、ただでさえなぜ浮遊してられる宝石なのか謎なのにどうしてこの場所を知っているのか私は少し考え込む。
すると何か視界で動く物を感じ取った。
「何あれ」
本土と繋がる今日だけそこに存在する道には多くの人がこちらに向かうように歩いてきている、その手には多分弓や銃、剣などがあり私は息を飲み込んだ。
別にその人達が武器を持っているからではなくただその人達に見覚えがあったのだ。
「クリフィオ人っ…」
奴隷狩りにあい、もっともニア人と白人を恨んでいるクリフィオ人だ、その理由は正直こちらに非がある、しかしこの島に来ると言うことは旧少年兵の武器を取りに来たのだろうか。
すると突然、先頭にいたクリフィオ人が何か上を見て叫んでる、その瞬間。発砲、空気を裂くような音が聞こえた。
習うように上を見れば私は目が零れてしまうほど見開いた、羽のような機械を身につけシトリンが持っていたような黒塗りの銃を持つ遠くから見てもわかる黒…ルチルが空を舞いながら下に居るもの達に発砲している姿だ。
今、ルチルが背負っているあの機械は確か旧少年兵達が使っていた飛行用である筈だ、しかし結構前の代物だと言っていた事を思い出し嫌な予感がした。
バンっ!!
羽の右側から煙りがあがる、それは撃たれたからと言う訳ではなくただ単純に寿命が来ているのだ。
「ルチルッ!!!!」
あまりにも見ていられづ反射的に目を閉じる、しかし転落したような音は聞こえない。恐る恐る私は瞼をゆっくりと上げれば煙の上がるのを気にせずに空を飛ぶルチルがいた。
胸をなで下ろして安堵した瞬間、あり得ないほどの爆音が響いた、その発生源である下…クリフィオ人の集団を見てみれば2人の少年が銃をルチルに向けていた。
爆音を響かせ光る何かが二つルチルに向かう、一つを避けるが羽が言うことを聞かなくなったのだろうか動くが鈍くなる、そして無事だった左側にあたり黒い煙を上げながら墜落していく。
私は急いで落ちた場所へと走る、不幸中の幸いで近くに落ちたのでそれ程走ることは無くルチルの元につく、木の枝に引っかかったのか葉や枝が髪にからまり、服は薄汚くなっている。
「お願い、目を覚ましてルチル…」
その上半身を起こし膝に乗せる、いつもの綺麗な透き通るような白色の肌には黒色の灰のような物がつき、翡翠色の宝石を持つ瞳は固く閉ざされている。
「もう、やめて戦わなくって良いからお願い目を覚まして…」
涙の雫が頬を伝い、ルチルの額に落ちる。
「…っ……」
「!ルチル私よ、アウラよ!!」
翡翠色の瞳が私を映している、その瞬間辛そうに眉間に皺を寄せて無理矢理体を自身で起きさせた。
「…あぁ、だめだよまだ傷がッ」
「…っ」
「ねぇ、お願いもうやめて」
しかしルチルは私の願いとは反対に私を押し切り、使えなくなっているその羽の電源を入れる。黒色の煙りがまた上がりそのボロボロの体に鞭を打つように立ち上がる。
「離れろ」
そう言うとルチルはシトリン達のようなよくわからない力を使い空へ飛び立つ、私はそれを止められる事が出来ず行き場のない右腕が空気を掴むだけだった。
空へ飛ぶルチルを待っていたように集中砲火される、しかしルチルもなんとか魔法と言う能力で火力を上げた銃をうち空を舞う。機械が壊れているからこそなのか妙に低空飛行になっていくルチルはクリフィオ人には格好の的またも集中砲火され僅かなルチルの呻き声が聞こえた。
「うぐぁっ…」
そのまま重力に従って落下。
私は急いで落ちた場所へと向かうため急斜面を降りる、途中何回か枝に引っかかるが私は気にせずにルチルが落ちたであろう海岸付近に向かった。
地雷地区と呼ぶそこを途切れ途切れの記憶を頼りに進んでいく近道はこの危険な場所しかない、それにどうあがいてもここに来るしか無いのだ。
ドォォン!!
鼓膜を破るような爆発音に反射的にふりむく、そこには今にも爆風で崖から落ちそうなクリフィオ人の少年がいた。私はそのままその少年の所へ走り抜けギリギリの所でその子の手を掴み全身全霊の力で引き上げる。
「ど…どうして?」
「よ、良かっ…」
何か異物感が背中にあった、温かいような冷たいような感覚に恐る恐る振りかえれば弓を構えた大人のクリフィオ人がしてやったりと言うような表情を浮かべている。
体から力が抜け後ろへもっと言えば海に向かって倒れて行く、体が鉛のように重い口から温かい何かが唐突に溢れ出してきた。
「あ……れ……?」




