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エピローグ

「――じゃあ、結局王位はルクエールが継いだんだ」

「ああ」


 ルクエールの戴冠式を終えて数日後、事件後初めて魔界を訪れたマナとソウルは第一庭で顔を会わせ互いの近況報告に耳を傾けていた。


「残念。ちょっと見たかった」

「アホか人間が出席できる訳なかろう」

「そうだけどさ」

「……俺の、だったら呼んでやっても良かったがな」


 ぽつり、と小声で小さく呟いたのにきっちりマナの耳は拾ってしまって嬉しそうに笑われた。


「うん。ソウルのだったら潜り込んでたかも」

「止めんかッ!」

「……それじゃあさ、あの、アレはどうなったの?」

「アレ?」

「愛人にするってやつ」


 ルクエールの本気をマナは知っている。知っているから一時はそれでもいいんじゃないかと思ったが、今はもっと複雑で――正直に言ってしまうと、嫌だった。


「あぁ、もう言われてない」

「そうなの?」


 意外だったがほっとして、すぐにもう一つの可能性を思い付く。


「あの、じゃあ」


 もしや正式に――と思って言い辛そうに口を開いたマナにく、と楽しそうに笑って。


「ラーがな。俺を愛人にするなら自分を夫にしろってな」


 見物だった、とその時のルクエールの表情を思い出して笑いを噛み殺す。うっかりその話を聞いてしまった周りの重鎮がルクエールに是非にと勧めるのが、またおかしい。


「へえ。やっぱり仲良いんだね」

「悪くは無いと思うが」


 ルクエールの愛人も良いんじゃないのかと、始めラーは言っていたのだ。それが変わったのはやはりシュツィルオーレの事が大きかったのだろう。


「ルクエールのため、じゃないか? イヤでもそれだと別にラーに思い入れは……」

「ソウルのため、だと思うよ?」


 もし先々、ルクエールが夫を持てば確実にソウルは憎まれる。ルクエールも同様だろう。


(自分のお母さんの二の舞を見たくなかったのもそうだろうけど)


 ラーがソウルを愛している事を、マナは知っている。

だからきっとこれ以上、ソウルを憎ませるような火種を作りたくなくて。

そして万一ソウルがルクエールの愛人になったとしても、自分が正式にルクエールと夫婦になっておけばその風当たりが弱まるのも勿論、計算に入れてだろう。


「ソウル、ちょっと――って、お前ッ!」


 噂をすれば何とやら。姿を見せたルクエールは予想外のマナの姿を見てぎょっとした。


「あ、ルクエール。魔王就任おめでとう」

「え、ええ。ありが……ではなくて! 何でお前に親しげに呼ばれなくてはならないの!」


 うっかり応じかけてしまって、慌ててルクエールは眉を吊り上げマナを怒鳴りつける。


「ん? 宣戦布告?」

「なっ……」


 何に対しての、なんて。勿論判らない程鈍くない。判っていない鈍い本人は放っておいて。


「お互い障害アリで丁度いいんじゃない?」

「ふ……、ふふ……っ。勝負になると思ってるのかしら?」

「結構イーブンだと思うけど?」


 ふふふ、とお互い笑っていない笑いを応酬して握手を交わす。


「な、何なんだ」

「俺等なんぞより女はよっぽど化物だって事だ」

「ラー。お前、何でここに?」

「知らなかったか? 俺は結構この庭好きなんだ」

「知らなかったぞ!」


 一体何だというのか、この状況は。

ここは静かで、誰も来なくて、一人だけの場所で――


(それが何だこれは)


 騒がしくて堪らない。


(……だが)


 悪くは――ない。

ここまでお付き合いいただいた皆様、ありがとうございました!

最終的にバトルで締めがないのはやっぱりしまらないか、と思いつつ、まあこれはこれでありかとも思っておりますが、いかがでしたでしょうか。

読み終わった時にほっとして頂けていれば幸いです。


それではまた、ご縁がありましたら次のお話も宜しくお願いします。

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