Welcome to the world of games
「う〜んどのゲームやろうかなー」
小さな少年は、VRの世界で色々なゲームパッケージに囲まれながら悩んでいた。
1つは国民的RPGの最新作に、製作発表当時から話題に上がっていた大手会社のソフト。ジャンルとしてはライトでオーソドックスなファンタジーと言うところ。
もう一方は、後ろに大きな学園が描かれた恋愛冒険RPG。こちらも大手ゲーム会社が熱を掛けて作った世界初の青春ラブコメVRMMOだ。
さらに、どちらかと言えばマイナーな部類に入る会社が製作しVRMMOのソフトで、事前情報は碌に無い。公開されている情報をざっと見た限りで判断するなら、ジャンルはダークファンタジーに属するだろう。他にも女性のモザイクがかかった裸体のパッケージも宙に浮いている。
「んー……」
私はゲームが好きだ。より正確に言えば、人の感情が動くことが好きである。スポーツ、勉強 、アニメ、漫画、小説、
絵描き…。言わば人が作ったもの全般が好きなのだ。
「そうだなぁ……」
そんなわたしは今年から大学生になった。そして現在は六月で、リアル事情が一通り落ち着くと共に、夏休みに備えてリアルでもVRでも色々と動き始める時期である。現に先ほど挙げた三本のソフトにしても、明日の金曜日の正午からサービス開始が予定されている。
「ライトでオーソドックスなファンタジー自体は悪くない。悪くないけど、多少食傷気味ではあるんだよね」
俺は大手会社のソフトを見る。シリーズ作となると……ファンサービスと言う名の過去作との繋がりが事前知識として知っておけと実質的に強要されたりだとか、往年のファンと言う名の懐古厨がウザったいパターンがあったりとかが無いとは言えないんだよねぇ。
ついでに大手の作品になると、非効率な効率厨・些細な事で付きまとう粘着・頭がパーンな奴は必ずと言っていいほど沸くし、ギルドだのフレンドだのの人間関係のしがらみがリアル関係すら崩壊させる勢いで突っ込んで来るパターンもある。
そうでなくとも国民的RPGの最新作と言う時点で恐ろしい量の人間で溢れかえるに違いなく、そこにはMMO特有のリソースの奪い合いと言う名の苛烈な競争が発生する事は確実だ。 で、それらを乗り越えた先に見られるのが、ライトでオーソドックスな安心して見られる感動的なストーリー……って、これは別に悪い点じゃないか。私も別にライトでオーソドックスな物語は嫌いではない。ちょっと世の中に溢れかえり過ぎていて、食傷気味なだけで。
「無しかな」
とりあえず、大手特有の人の多さから生じる、関わり合いになりたくない方の数の増加を考えると、私には合わない可能性の方が高いかもしれない。
「恋愛系はもうナシだからダークファンタジーかぁ……」
私はどちらかと言えばマイナーな会社のソフトを見る。
同時に、この会社が据え置き機でゲームを出していた頃を思い出す。確か独特な世界観と高目な難易度で、人によって合う合わないがはっきり分かれるような作品を作っていた。
ほぼ間違いなく、このゲームもそうだろう。
「そこは魔法が存在する世界?普通なファンタジー系なのかな?」
最初の1文だけみるとそう勘違いしてしまうが最後までちゃんと読むと異常さが伺えた。
「この世界は魔が満ち1度滅んだ。聖なる力を持った聖女を中心に街を作り上げて…」
要約すると、どうやら人の力では魔には適合できず代償として体の一部が変形した。
「へぇ、プレイヤーも異形の姿になるんだ」
一般的なファンタジーによくあるようなエルフやドワーフそのものは居ない。しかし、ゲーム開始時にプレイヤーはその身代償を払う事で、人で力を手にする事が出来る。
「だが過ぎた代償は、いずれ魂を砂塵と化すか…」
「ん? 返金サービス?」
そして、運営も自分たちの尖り具合をよく分かっているらしい。初回プレイ開始からリアル時間で72時間以内であれば、ゲームデータの削除と引き換えに返金に応じる他、アバターについても自由に取り換える事が許されているとの事だった。
つまり、合わないなら、無理に留まる必要は無いと言う事だ。
「へー……面白い」
私は公式サイトを端から端まで念入りに読み込んでいく。
ああ、実に楽しそうだ。どんな感情が入り乱れているか楽しみで仕方がなかった。
「うん、決めた。私はこのゲームを始めよう」
ポスターに触れて入金。
マシンへソフトのダウンロードが始まる。
「明日が楽しみだ」
ゲームの名前は『Control Mana World』略称は『CMW』
和訳するならば『魔に支配された世界』




