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8,祭り

 竜は、どうしても皇帝のお役に立ちたくて、いろいろ考えました。


「お時間があるなら、今からあなたを背に乗せて、外の世界を見に行きましょうか。島の外にはいろいろなものがありますよ」



 しかし、 皇帝は太い黒い眉毛のはしをもちあげ、いつになくこわい声で言いました。

「ワシはなあ、若い頃に外の世界に出て、散々な目にあって、あげくにここに戻ってきたんじゃ。お前さんにはどう見えているかわからないが、島の外の世界がどんなものか、知っているつもりだ。もうあそこには戻りとうない」


 皇帝の黒曜石のような眼に、昔見たなにかが 、黒い気となって立ちのぼっています。

 それを見てしまっては、無理にとは言えません。竜は、細い硬いムチのようなヒゲをだらんとたらし、あごを地面につけてふさぎこみました。



 皇帝は、そんな竜に優しく言いました。

「無理に何かしようとせんでもええ。お前さんはここにいるだけでいいんじゃから」

「でもせっかくお世話になっているのだし。僕にできることがあるならしたいんです!!!」

竜の鼻の穴からはたくさんの空気が吹き出し、小さいつむじ風になりました。


 皇帝は困り切って、日焼けした腕を組み、片方の膝の上に片方の足のかかとを上げて考えました。

「おお、そうじゃ」

「もうすぐ夏祭りがある。その時に顔を出してくれんか。竜が来てくれたら、子供たちもさぞ喜ぶじゃろう」

 そんなことでいいなら、わけはありません。竜はさっそく承知しました。



☆★☆



 夏祭りの日、皇帝のあいさつが終わった頃を見はからって、竜は広場のうえに姿を現しました。それを見つけた子供達が喜んだの喜ばないのって。みんなで空を指さして、

「竜だ! 竜が来てる!!!」

と大はしゃぎしました。



 竜も根がお調子者ですから、空中でんぐり返しをしたり、ジグザグ飛行をしたり、” 真っ逆さまに地面に落ち”と見せかけて、急に上に上がってみたり。赤い気を吐きながら雲を縫って、大きいきんちゃく袋を作ったり。自分が知るありとあらゆる曲芸をやってのけました。


 子供も大人も、竜の動きを目で追って後ろにひっくり返るほど、わあきゃあ騒ぎました。おかげで、他の出し物は、持ち時間が少なくなってしまいました。


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