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彼がみた始まりの一日

一週間たったので短編の方を消させていただきました。


また、すみませんが予定変更してヴェルーナの弟の前にちょっとした別視点の話を入れます。

しかしこうしてみると「エドワード最低な男だな・・・」と思ってしまいます(笑)

ということで、相変わらずエドワードが最低と思われる場面がありますが、それでもよければお進みください。

俺の名前はリーフェル。そんじょそこらにいるような普通の貴族だ。よろしくな!

さっそくだけど今日はな、俺の友人の話を聞いてほしい。

理由?うーん・・・。他にこれ話せるやつがいないからさ、正直聞いてくれるだけでいいんだ!




友人の名前はエドワード。惚れない女はいないってくらいにめちゃくちゃ整った顔をもち、モテモテなのにプライドが高くて誰にでも辛辣。笑顔のまま裏で人を見下すような男、それがエドワードだ。


あー・・・・・・うん。言いたいことは分かる。言葉だけ聞くと最低な人間だよな。でもまあ、それを知っているのは俺だけだし、一応少しの良心はもってるはず。そこまで非道なやつじゃないんぞ・・・・・・たぶんな。バカでどうしようもないとは思うが。

俺?俺は別に嫌ってなんかいないぞ。エドワードといると何かと面白いからな。



―――で、本題だ。どうやらそいつが本気の恋をしたらしいんだ。

本人の口から聞いたわけじゃないが、その相手は確実にアクリナだろうな。間違いない。

そう断言できるくらいにエドワードの行動はあからさまだった。


しきりにアクリナを睨む―――と見せかけてみつめてる。

アクリナの愚痴を俺にするがその内容は知られていない情報ばかり。

さらにはあいつが参加するパーティには必ずアクリナが出席してるのだ。


これに気づいているのは俺だけだろうな。

長年あいつとつるんでる俺からしたらあからさま過ぎるエドワードの様子にすぐ気付いた。



そう・・・・・・エドワードの恋は数か月前のあのパーティから始まったんだ。







* * * * * * * * *





「おい、リーフェル。あの女は一体誰だ?」



そう聞いてくるエドワードに俺は驚いた。こいつが自分から女に興味を持つなんて一切ないからだ。

エドワードが、女の情報を知りたがるなんて、一体どういうことなんだ。

さっきなんて表面上は可愛らしい少女と楽しそうに話してたのに、彼女が去った後、


『ようやくいったか。くそ、顔も匂いも気持ち悪い。前からお話ししたかったけど機会がなかったからだぁ?あえて距離とってんだから話しかけてくるなよ悪臭女』


とか小声で呟いていたあいつがだぞ!?

一体どんな女に興味を持ったのかと思ってこいつの視線の先をみてみれば優しい顔でほほ笑む一人の少女。


「あぁ、なんだアクリナか」

「知らないな」

「へえ、めずらしい。結構有名なのにな。俺はよく話すがかなりの天然でおっとりしたお嬢様だ」


アクリナは二人の友人と楽しそうに話していた。すると二組の老夫婦が彼女に話しかける。そんな彼女の背後にも男が会話が終わるのを待っているようだった。


「・・・・・・あいつの周りはいろんな人間が集まっているな」

「悪い娘じゃないってみんな知ってるんだろ。それに彼女と話してるとどこか癒される。アクリナもだれが相手でも本当に嬉しそうに会話してくれるからこっちまで嬉しくなっちまう」

「あくりな・・・・・・」


その時はわからなかったがたぶんこれがエドワードの一目惚れだったんだろう。

こいつは余程のことじゃない限り女には話しかけず、それどころか近づくことも嫌がる。アクリナのとこは後で俺一人で行くとしよう。

会話が終わった俺はとりあえず喉を潤そうと動いたが、エドワードの本日二度目となる衝撃発言に止まる。


「・・・・・・すまん、もう一回言ってくれないか」

「だから、なんであいつに挨拶に行かないのかと聞いたんだ」

「その後だ」


気のせいじゃなければこいつ『俺もついていく』と言わなかったか?


「俺だって好きで行くわけじゃない。ただ、顔も名前も知らないとなると今後のためにも知った方がいいと思っただけだ。・・・だから、今すぐにいけ!」



本当にそうなのだろうか。

こんなことは初めてだったのでエドワードが一体何を考えているのか、俺にはわからなかった。







外野がいるとエドワードがゆっくり話す機会などないのでアクリナが一人になるのを待つ。

すると彼女は涼もうとしたのか誰も連れずにバルコニーへ向かったのでチャンスだと思った。


「久しぶりだな、アクリナ」

「あら、リーフェル様。お久しぶりだわ。こんにちはね!」


たくさんの人間と会話してるだろうに、いやな顔一つせず幸せ顔で挨拶してくれるアクリナ。いや、アクリナにとって会話は楽しみの一つなんだな。いやなことなんて一つもないから笑顔なんだ。

そのままアクリナが俺の隣にいるエドワードに視線をむけた。エドワードは有名であり、アクリナは人徳がある。顔合わせは初めてでもアクリナはこいつが誰かは知ってるはず。


「エドワード様、ごきげんよう。お話しするのは初めてね」


ドレスをつまむと綺麗な動作で挨拶するアクリナ。


「アクリナです。わたし、ずっとエドワード様とお話したいと思っていたの。だから挨拶ができてすごく嬉しいわ!」



あ。これはまずい。


「・・・・・・」


エドワードの機嫌がすごく悪くなったことが俺にはわかった。

さっきの女の例があるように、こいつはストーカーのごとく付きまとわれた経験があるため極度の女嫌いだ。

アクリナは媚などないさらさらな本心から言ったのだろうが、今のエドワードに彼女の「お話ししたかった」発言は禁句に等しい。

こいつにとって「仲良くしましょう」は「あなたに付き纏いますよ」と宣言されたも同然なのだ。


「・・・・・・エドワードです」


いつものごとく笑顔の仮面をつけたまま、礼儀として名だけは名乗った。まぁ、余計なひと言も添えてだがな・・・。


「残念だけど俺は仲良くするつもりはないんだ。だからこれ以降は二度と話しかけないでくれるかな?」


普段のエドワードなら初対面の少女に対してこんなことは絶対に言わないのだから、そうとうご立腹だったのだろう

言ってしまった後にまずいと思ったのかエドワードは居心地悪そうな顔をした。対するアクリナもいきなりの拒絶に目を大きくしてエドワードをみている。

それでも泣くことはせずにちゃんと返せる彼女はすごいと思う。


「ひどいわ、エドワード様。それは、理由を聞いてもいいものかしら・・・?」


一度言ってしまったことはしかたがない。やつは正直に本心を口にする。


「俺は、君みたいに近づくやつが嫌いなんだよ。『話したい』『仲良くしたい』とみな同じことを言いながら次から次へとすり寄ってくる。中には話したことがあるやつもそんなことを言う。そんなのもううんざりなんだよ」


・・・・・・こいつ、内心アクリナがほかの女と同じだと思って落胆しているな。

だからやけになって訴える。

―――でも安心しろ。

他の少女だったなら泣きだすけど、アクリナは他の少女とは違うんだ。




「・・・・・・アクリナ、どうしてエドワードと話したいと思ったんだ?」


このままではアクリナの本心がエドワードに伝わらないので、しかたない。俺から聞き出すとしよう。


「だって、お話もせずに相手のことを知るなんてできないでしょう?わたし、エドワード様がどんな人なのか知らないから、知っておこうと思ってたの・・・」


アクリナの返答は予想外だったのだろう。想定していたのとは違う答えにエドワードは驚いたまま固まった。

・・・俺の予想通りとはいえ今日は貴重なシーンがたくさん起こるすごい日だな。

でもこいつの反応はしかたない。なんせ今までの少女だったら初対面なのに明らかに好意をもって近づいてたのばかりなのだから、アクリナの純粋な「知りたい」はおそらく初めてで戸惑っているのだろう。


「みんなエドワード様と話したことがあるのに私はないのよ。ひどいわ。なのに話題にはでるからずっとどんな人なのか気になっていたの。だから一回でもいいからお話ししたかったのだけれど・・・・・・」


初対面でいきなりの拒絶に悲しそうな顔のアクリナ。普通ならそう見えるだろうが、でもアクリナの場合は拒絶に悲しんでるんじゃない。何も知らずに話しかけてしまった自分を責めてるからつらい顔をするんだ。


「そんな理由があったなんて、わたしちっとも知らなくって。ごめんなさい・・・・・・」

「いや、俺たちの方こそ、ごめんな。図々しいかもしれないけど、できればこのことは秘密にしておいてほしいんだ。じゃないとエドワードもいろいろと困るからさ」

「もちろんよ!誰にだって知られたくないことはたくさんあるものね」


アクリナは口が堅い。本人の許可がなければ隠し事を話したりなんてしないから、エドワードの裏の顔は護られることだろう。


「それじゃあエドワード様、さようならね。すこしでもお話ができて私とても嬉しかったわ。ありがとうございますね!」





アクリナが立ち去って、ようやく落ち着いたらしいエドワードに俺は得意げに笑ってやった。


「悪い子じゃなかったろ?むしろ純粋すぎて不安なくらいなんだ」


彼女を嫌うやつもまあいるだろうが、たいていの人間は彼女を好むにきまってる。アクリナはそういう才能をもっているんだ。


「・・・・・・どうだか」




・・・・・・そう、あれ以来なんだ。あいつがしきりにアクリナを睨むようになったのは。

あれは睨みだ。あれをみつめているなんて断じて認めないぞ。

ん?どうして睨むのかって?

そんなのアクリナに恋をしたからに決まってるだろう。


あんなにも女性をバカにし、嫌悪していたエドワードが自分から、それもずっみるのだからこれは確実だ。長年エドワードと一緒にいる俺からしたら喜ばしいことだな!

だったら話しかければいいというのに、妙な意地がやつの邪魔をして視線を送ることしかできないのが現状。

自尊心の塊であるエドワードが「近づくな」と言ってしまったのに、アクリナに話しかけるのはプライドが許さないのだろう。「女なんて嫌いだ」発言もしちまったしな。

対するアクリナの方もエドワードに気を使っているのかパーティー中は一切近づくことをしない。


つまり二人の距離は物理的にも心理的にも一切縮まってはいないんだ。けれども遠ざかってもいない。まあ一進一退だな。

俺が見た姿をありのままに話すとだな・・・

まず、エドワードがさりげなく、ほんとうに自然な流れでアクリナの近くへ移動する。もちろん話しかけることはない。

次に少ししてやつが近くにいることに気付いたアクリナがやつとは反対の方へこれまたさりげなく移動する。

ずっとこれの繰り返し、たまにアクリナが移動できないときもあったがエドワードはそれ以上近づくこともなく一定の距離を保っている。

二人が何を思ってそう移動しているのはあの日、一緒にいた俺だけしか知らないので、周りのやつが気付くことは一切ない。


だからこそ思うのだ。・・・なんだこれ、どうしてこうなったと。


エドワードから話しかけることはなくアクリナから話しかけることもない。一定間隔で会場内を静かにぐるぐるぐるぐる移動する二人。

なんでこんな不毛で静かな鬼ごっこがひそかに行われているんだよ。

最初の方でも話したがエドワードが参加しているものには必ずアクリナがいる。

だがどちらからもアクションを起こさないから、パーティーのたびに必ずおこるこの行事を俺はいつも呆れながらみているんだ。


・・・それにしてもアクリナはよく気付くよな。彼女のおっとりした性格なら気付かないと思っていたのだが。

エドワードは裏の情報で参加者を知ることができているが、アクリナにはあいつがいるか事前に知ることはできない。当日に大勢の中一発で見つけるのだって難しいに決まっている。

加えて彼女は・・・・・・たしょう、その、頭が・・・・・・・・・・いや、はっきり言ってしまおう。彼女は少しおバカなんだ。嫌われている相手や悪口しか言わない相手だろうとお構いなしに笑顔で近づける強者だ。

だからああ言ったとはいえ多少なりともでもエドワードに笑顔で話しかけでも来そうなものなのだが。

だというのにエドワードが近づいて数分で気付くなんて、まるでエドワードを常に意識し、探しているかのような・・・・・・。

まさか、エドワードが好きだからやつの意思を尊重して離れている、もしくは嫌われたくないからあえて遠くから見守ることにしたなんてことは・・・・・・いや、それはないか。どこかの恋愛小説じゃあるまいし。



お、もうこんな時間か。俺の愚痴に付き合わせて悪かったよ。ありがとうな!

ん?あぁ、それから二人がどうなっているか知りたいよな。

エドワードとアクリナの様子をみて、あのままじゃいつまでたっても前に進めないし終わりにもできないと俺は思ったんだ。

あいつがようやく動き出したのは焦れた俺の「あー、アクリナに告白しようかなー」という棒読み発言を聞いてからだったよ。


エドワードのことをよく知る親友くん、リーフェルさんの登場。

顔がひろく友達が多いけど基本はどんなときも傍観者なのでいろんな人の関係性に気付きやすく、友達のいない親友エドワードのためにさりげないフォローをいれてあげる苦労人。


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