追 章 2- 3/11 高校一年生・初夏
友延利沙には、過去にハッキングで補導されていた。
しかも、それが中学二年生の時で、一ヶ月後に家に帰る時には、保護観察という処分が下されていた。
中学生生活は、そこで一旦ストップしている。
なぜなら、他の生徒への影響を考慮、二年生の間は自宅謹慎。
三年生になっても、他の生徒との接触は一切許されなかった。
それというのも、その技術があまりにも優れていたため、
警察からも要注意人物としてマークされていたからだ。
そういう状態で、接触した他の生徒が影響を受けて、
ハッキングに手を出されては困ると考え、他の生徒と一定の距離を取るという選択を学校側は下した。
それを友延側も了承、その指示に従った。
高校側は、補導の過去を聞かされておらず、
その事実を聞かされた時には、正直信じたくはなかった。
しかし、その利沙に救われた事実もあり、中学時代の事件は、すでに反省もしていると判断。
処分は何も行われなかった。
ただ、その判断まで一週間を要していたため、その間の自宅謹慎は、後日取り消されていた。
理由としては、ニュース部事件で、最初に疑われたのは利沙自身だった。
その濡れ衣を晴らすためにひと肌脱いだ。
結果、逮捕という事態の回避につながったので、
一時検討された退学も、取り消しになったという事実も含まれている。
その後、利沙が自宅謹慎が開けて登校してきた後、
しばらくこの話題で学校中が、浮足立ってしまい、学校側がこの話題を禁止していた。
もちろん、面白がってハッキングするのを抑制するためでもあった。
そのために、公の場で、特に校内ではタブーとされていた。
だから、この三人は、一旦別々に学校から出て、公園で待ち合わせて、話し込んでいた。
公園にいた人が近づけない雰囲気だったのは、
ハッキングについて、これ以上にないくらい真剣に話し込んでいたからだった。
「友延がイヤだって言うのは、分からなくはないけど。
俺達も頼まれて来てるし、そこで、一つ提案がある。
先輩から言われたんだけど、パソコン二台あるし、
こっちの一台から、こっちの一台に、さっきのを使ってみたらって?
どう、これなら問題ないだろう?」
「三枝、お前それ聞いてたんだ。俺ちょっと遅れて行った時に話してたのってこれか」
「ああ、ちょうど井東が来た時にな」
「……呆れた。そんなこと考えてたなんて。でも、そういう問題じゃないと思うけど。
それなら、その先輩を連れて来なさい。
誰でもない、その人達が一番見たいんじゃないの?」
「……まあ、そうなんだけど」
「俺達もそう言ったんだけど……。でも、やっぱりだめだって言われて」
「三枝君も井東君も、科学部だよね? そこの先輩なの?」
「「…………」」
「二人とも、顔に出やすいタイプだね」
「……それで、してくれるよな?」
「……仕方ないなあ、でも、一回だけだよ」
「「よかったぁ。助かるよ」」
「まあいいや。とにかくさっさと済まそうか」
そう言うと、利沙が預かった二台にパソコンを準備した。
しばらく操作していた利沙の手が一度止まり、
「今日はこのままするけど、後で必ず伝えてほしいの。いい?」
「ああ、いいよ。なんだ?」
「このパソコンの持ち主に、今後一切ハッキングに関わらないって、約束させて。
そうじゃないと、ひどい目に合うよ。って。
いい、必ず!」
利沙のひどく陰険な言い方に、少し戸惑いながら了解するしかなかった。
それを聞いて、利沙は作業を続けた。
そんな時間は三枝と井東にはひどく長く感じられたが、黙ったまま、利沙の手元を見つめていた。
二人は、つい見入ってしまった。
その見事な手際に。
高校でコンピューターについて専門的にならっている自分達にさえ、知らない暗号が次々と入力されていく。 正直、こんなもの、高校にいる先生達でも、太刀打ちできないだろうと思ってしまう程だった。
「さあ、出来た。これから始めようか?」
「……ああ、頼む」
「なんか、気の抜けた感じね? どうしたの」
「いや、あまりにもすごかったから」
「ああ、なんか、世界が違う感じがした」
放心気味の二人に対して、利沙はあくまで冷静に、
「何言ってんの。早く済まそう、いい?」
「ああ、頼む」
そして、利沙は二つのパソコンを並べてベンチに置き、それを三人で覗き込む形になった。
「良く見てて、これから右から左へメールを送る」
そして、一連の作業をじっと見ていた。
「すっげぇ。なんだこれ?」
「これは、絶対だめだよ!」
などなど、見ている最中ずっと、雄叫びにも似た声を出していた。
「さあ、終わった。これで全部。どお? これでいい?」
「ああ、すげえな、友延って、なんか尊敬するよ」
「ありがとう。でも、これはここだけね。二度としちゃダメだよ。絶対! 先輩達にも必ず伝えてね」
「分かった。でも、本当にすごいよ。
別にハッキングじゃなくて、友延の技術っていうか、なんか、本当に!」
「そうそう、これだけ出来るんだったら、何も学校なんか来なくてもよさそうだけど、なんで?」
「学校って、それだけじゃないでしょ!」
笑顔でそれだけ言った。
その後は、後片付けを済まして、出口に向かっていた。
もう日も傾き、薄暗くなっている。




